米Epic Gamesと米Googleは11月4日(米国時間)、Androidにおけるアプリ配信・決済を巡る反トラスト訴訟で、和解案に合意したと公表した。両社はすでにサンフランシスコ連邦地裁のジェームズ・ドナート判事に共同の和解案を提出しており、承認されれば正式に和解が成立する。和解案には、サードパーティのアプリストアの取り扱い改善やGoogle Playのサービス手数料の見直しが盛り込まれており、実現すればAndroidアプリ市場の競争環境が大きく変化する可能性が高い。
泥沼の法廷闘争から和解へ
Epic Gamesは2020年、GoogleがAndroid上のアプリ配信とアプリ内決済を事実上独占し、不当に高い手数料を強いているとして提訴した。2023年12月には陪審がEpicの主張を支持する評決を下し、Epicが勝訴した。これを受け、ドナート判事はGoogleに対し、競合アプリストアや代替決済手段の提供を妨げる行為を禁じる是正命令を出した。
Googleはこの命令を不服として控訴したものの、2025年7月の控訴審でも不利な判断が下され、同年10月には米連邦最高裁がGoogleの差止め停止要請を退けたことで、是正内容の実施が迫られる状況となっていた。
今回の和解案は法的効力の及ぶ範囲が米国に限定される一方で、「持続的な解決」を図る内容になっており、一部の措置はGoogleが自主的に世界へ展開する可能性が示されている。Epicのティム・スウィーニーCEOは、「Androidを“オープンなプラットフォーム”とする原点に立ち返る包括的かつ抜本的な解決策」と評価している。
地裁に提出された共同提案の主な内容は次のとおりである。
競争を阻害する行為の禁止(発効から3年間)
- アプリストア運営者、デバイスメーカー、通信キャリアに対し、不当な独占的・排他的条件を課す行為を禁止する。
決済と手数料に関する変更(2032年6月30日まで)
- 代替決済の並列表記の導入 (2025年12月3日以降)。Google Play Billingと第三者決済を同等に表示できるようにする。
- サービス手数料の上限 (2026年3月31日までに開始)
- 外部決済リンクの解禁:外部Webでの購入への誘導を認め、案内や価格提示への妨害を禁じる(2032年6月30日まで)。
Android OSの変更(2032年6月30日まで)
- サードパーティストアの運営継続:Android上でのサードパーティのアプリストアの運営と、Webからの直接ダウンロードを引き続き許可する。
- Registered App Store(登録アプリストア)制度: 次期Androidのメジャーバージョンから、認定された「登録アプリストア」を、中立的表示による簡素な手続きでインストール可能にする。
提案された新たなサービス手数料は以下の通り。
- ゲームの進行に影響する購入やランダム要素を含む課金(ガチャなど): 最大20%
- その他のゲーム内購入、サブスクリプション、非ゲームアプリ: 最大9%
- 買い切り型アプリ: 最大9%
これらの変更により、開発者は価格設定や決済経路の柔軟性を確保し、手数料負担軽減による価格引き下げや、Play外(Web)での割引提供など、多様な販売戦略が取りやすくなる。OSレベルの改善により、ユーザーは公式サイト経由で競合ストアを簡便に導入できるようになり、アプリ入手経路の多様化が現実味を帯びる。
