2025年6月3日から5日にかけて米フロリダ州オーランドで開催された、Epic Games主催の開発者向けイベント「Unreal Fest 2025」。このイベントに合わせ、Epic Games創業者でCEOのティム・スウィーニー氏と、『Fortnite』エコシステムを統括するEVP(Executive Vice President)のサックス・ペルソン氏へのインタビューの場が日本メディア向けに設けられました。筆者もインタビューに参加し、Epic Games Storeと『Fortnite』エコシステムについて、これまでの実績と今後の展開を聞いてきました。
Apple/Googleとの軋轢の影響もあり、モバイル版Epic Games Storeのスタートは予想を下回る
まず、Epic Games Storeについてです。EUでは、デジタル市場法(DMA)によりApple Store以外のストアアプリの提供を許可することが義務付けられたことで、iOS向けのEpic Games Storeを展開できるようになりました。これによりEUでは、2020年にアプリストアから『Fortnite』が削除されて以来約4年ぶりにiPhoneおよびiPad上で『Fortnite』がプレイできるようになりました(ただしその後、2025年5月にEU内のiOS向けEpic Games Storeでの『Fortnite』配信は再度停止されています)。
北米では、App StoreでのiOS向け『Fortnite』配信が2025年5月に復活しています。2025年12月には日本でもiOS向け『Fortnite』配信が再開される予定です。
――EU圏でのiOS解禁による反応はいかがでしょうか。
ティム・スウィーニーCEO:PC版のEpic Games Storeは2018年に展開し、現在では月間ユーザー数が7,000万人になっています。モバイル版のEpic Games Storeは、昨年EUでiOS向けに解禁されてから大変好調です。モバイル版はトータルで4,000万人超えでPC版には及びませんが、リリースしたばかりなので堅調に伸びていると言えます。
――この結果をどう評価していますか。当初予想していた数値よりも大きいものでしたか、それとも小さいものでしたか。
スウィーニー:正直に言えば、予想を下回る結果でした。これはApple/Googleとの軋轢によるものだと考えています。
AndroidやEUのiOSにおいて、Epic Games Storeがサードパーティのアプリストアとして展開できるようになってはいますが、アプリをダウンロードし、インストールするまでのインターフェースが大変悪い。インストールが完了するまでの手順が多く、途中に何度も警告が発せられ、手慣れている人でも途中で諦めてしまうほどです。AppleとGoogleがEpic Games Storeをダウンロードすることを阻害していると言え、これは違法なやり方だと認識しています。
肌感覚だと、Epic Games Storeからのアプリのインストールを試みているユーザーの半分は、ダウンロード/インストールに失敗していますね。現在は規制当局の方でもAppleとGoogleに対して動きをみせてくれていますが、まだ解消はされていません。
――サードパーティのアプリストアだけでなく、Apple StoreやGoogle Playなどの公式ストアからのダウンロードができるようになれば、それらは解消されていくでしょうか。
スウィーニー:そうですね。実は米国の裁判所では、Google Playの中でもサードパーティ製ストアアプリをダウンロードすることを認めなければならないという判決はでているんですよね。ただ、この判決にGoogleが控訴しており、開放がストップしている状態です。
我々としては、ストア同士がストア内で他のストアをホストすることは問題ないと考えています。それどころか、お互いに助け合うべきだと思っており、Epic Games Store内でも他のストアをホストしています。
――2023年12月に開催したニューヨークの『Fortnite』エコシステムの発表の際にネイト・ネイザー氏が話していたように、PCのようなゲームプラットフォームを目指すということなのだと思いますが、それでもモバイルは現状でAppleとGoogleが強すぎると言うことでしょうか。
スウィーニー:そうですね、PCのプラットフォームではOSに対してストアがオープンとなっているのに対し、(編集部注:モバイルプラットフォームを提供する)AppleとGoogleは法律に準拠していないと言えます。今後はAppleとGoogleは法に準拠していけばよいのだと考えています。先だって実施された、EUのデジタル市場法によるiOSでのApple Storeアプリ以外のストアアプリの設置の義務づけを皮切りに、様々な国の規制当局が対応してくれています。
サックス・ペルソンEVP:日本市場では2025年末に、iOSでEpic Games Storeが解禁されます。日本は『Fortnite』のユーザー数が多い国で、現在はその多くがNintendo Switchでプレイしています。iOS版がリリースされれば、かなりのユーザーがそれをプレイしてくれると期待しています。
さらに、日本で『Fortnite』のモバイル版に対してできることはたくさんあると考えています。日本はクリエイターの市場も大きく成長しており、Unreal Editor for Fortnite(UEFN)のモバイルでの展開が成長の鍵になるとみています。また、モバイルで『Fortnite』をより快適にプレイするために、ダウンロードのデータサイズやロード時間の短縮が課題になりますね。
――『Fortnite』エコシステムの現在をどう評価していますでしょうか。
ペルソン:導入から1年半が経過し、プレイするゲームジャンルにも変化が見られています。かつては『バトルロイヤル』が主流でしたが、現在は3分の1のプレイヤーがバラエティゲームをプレイしています。
日本市場は北米に続きメジャーな市場です。それだけの影響力がありますが、北米と日本ではそれぞれプレイされるタイトルのトップ10が違います。『Fortnite』エコシステム導入前は北米と日本で差がなかったので、これは大きな変化と言えます。この変化の理由のひとつには、日本向けのタイトルがなかったことが挙げられます。現在は、日本のクリエイターによる日本のプレイヤー向けのタイトルが増えてきたので、今後はまた結果が変わってくると思います。
『Fortnite バトルロイヤル』でいちど離れてしまったユーザーも取り戻す
――『Fortnite』エコシステムとして、ゲーム内通貨のV-Bucksが共有できたり、何かのタイトルで購入したアウトフィットやエモートが違うタイトルでも利用できたりするなど、革新的なことが行われました。また、それ以前から同タイトルであれば、PCやコンソール、モバイルなどプレイするハードに依存せず、共有できていました。アウトフィットを横断的に利用できることで、他のタイトルをプレイすることの促進、一度辞めていたプレイヤーの復帰など、ゲームを辞める理由を打ち消すことも考えられますが、実際にはどうだったのでしょうか。
ペルソン:『Fortnite』エコシステムは多くのプレイヤーに好意的に受け入れられています。誰しも、同じアウトフィットやエモートを2度、3度と購入したくないと考えています。『バトルロイヤル』でアウトフィットを買うと、『LEGO Fortnite』でも使える。そこは大きなプラスになりました。
『Fortnite』エコシステムと同時に『LEGO Fortnite』『Fortnite フェスティバル』『ロケットレーシング』の3タイトルがリリースされましたが、それらをプレイした人たちの中には『バトルロイヤル』をしばらくプレイしていなかった人たちもいました。そういった人たちの一部は、新たな3タイトルをプレイしたのち、『バトルロイヤル』に戻ってくれています。
また、ゲームからの離脱に関しても、予想以上の人たちがそのまま残ってくれています。これは『Fortnite』エコシステムのアウトフィットの共有が一翼を担ったと言えるでしょう。今後もいろいろなオプションを用意し、『バトルロイヤル』から離れてしまった人たちが戻ってこられるようにしていきたいと思っています。