米Googleは6月10日(現地時間)、「Android 16」の正式版リリースを発表した。まず対応するPixelデバイス向けにアップデート提供が開始され、他のスマートフォンメーカーの対応機種にも順次展開される予定である。Android 16はAndroidの開発サイクルの変更により、前バージョンからわずか8カ月という短い間隔でのリリースとなった。今回のアップデートは、生産性、セキュリティ、アクセシビリティの向上に重点が置かれている。

Android 16は、新しいデザイン言語「Material 3 Expressive」を基盤としている。 これは、従来の「Material You」をさらに進化させたもので、パーソナライゼーションを核に、ユーザー一人ひとりに合わせたユニークなデバイス体験を提供することを目指している。

Material Youは、Googleが2021年に発表したデザイン言語で、現実世界の物理法則(光や影、奥行きなど)をUIに取り入れ、直感的で分かりやすい操作性や、表現力豊かなデザインを実現した。

Material 3 Expressiveでは、より流動的で、バネのような弾力性のあるアニメーションが導入されるなど、日常の操作に楽しさをもたらす工夫が凝らされている。また、ユーザーの壁紙に合わせてUIの色が自動で変わるダイナミックカラーテーマが更新され、タイポグラフィも強調されるなど、より自分好みのスタイルにカスタマイズできるようになった。

Android 16では、ユーザーが日常的に最も多く触れる通知機能が強化された。新機能「Live Updates」では、フードデリバリーや配車サービスなどの状況を、アプリを都度開くことなくリアルタイムで追跡できる。 また、通知が自動的にグループ化される。一つのアプリから大量の通知が届いても、通知欄が整理されてより見やすくなる。

補聴器ユーザー向けの通話体験も改善された。これまでLEオーディオ対応の補聴器では対面相手の声を拾う前向きマイクを使う仕様であり、騒がしい場所で通話すると自分の声が相手に届きにくいという課題があった。今回、新たにスマートフォン本体のマイクに切り替えるオプションが追加された。これにより、騒がしい環境下でも自身の声をよりクリアに相手に届けられる。

セキュリティ面では、高度な保護機能「Advanced Protection」が導入された。オンライン攻撃、有害なアプリ、危険なウェブサイト、詐欺電話など、複雑化・高度化する脅威からデバイスを保護する。ジャーナリストや公人など、特に高リスクの個人を想定した機能ではあるが、一般ユーザーも利用可能である。

タブレットやフォルダブルなどの大画面デバイス向けに、生産性を向上させる新機能「Desktop windowing」が導入される。これは、Samsungが提供してきた「DeX」のコンセプトをOSレベルで取り入れた機能で、PCのデスクトップのように、複数のアプリをウィンドウとして開き、サイズの変更や移動が可能になる。これにより、マルチタスクにおいて、アプリ間の行き来や同時作業が容易になる。

Desktop windowingは、年内に対応デバイスで利用可能になる予定である。将来的には、タブレットやスマートフォンを外部ディスプレイに接続し、さらに拡張されたデスクトップ体験を実現するアップデートも計画されている。