FMVシリーズを展開する富士通クライアントコンピューティング(FCCL)100%子会社であり、FMV PCの製造を担う島根富士通のPC累計生産台数が5,000万台を達成(2025年1月20日付)した。
同社では2月13日に記念式典が開催され、これに合わせ島根富士通におけるPC組み立てラインの見学が実施された。その模様と、同社代表取締役社長の神門明氏へ聞いた今後の展望を紹介する。
デスクトップPCも島根富士通。富士通PCの生産を集約
島根富士通では現在、FMVブランドのPC製造・修理を一手に引き受けているほか、キッティングや製造受託、IT機器の運用・管理代行サービス、製造ソリューションサービスなどを展開している。年間製造能力は約300万台、製造ラインは25。プリント基板実装ラインも10本備えており、FMVモデルの多くはプリント基板実装から同工場で行われている。
デスクトップPC製造ライン、ノートPC製造ラインは棟別に分かれており、1つのライン上でモデルやパーツ構成が細かく異なる“変種変量”生産に対応した製造ライン作りが行われている。部品供給・デジタルピッキング、組み立て、動作試験・外観確認、梱包といった全工程を1ラインで完結しており、デスクトップPCとノートPCでの製造工程は基本的に共通(キーボード打鍵試験など一部試験内容は異なる)。基板の生産は従来ノートPCのみだったが、現在は法人向けデスクトップPC(ESPRIMO)基板の生産も開始している。
-
Intel Core Ultra 7 258V(開発コード名:Lunar Lake)を搭載し、約848gと軽量な14型Copilot+ PC「FMV Note U」。Note Uの基板やバッテリーはC面(キーボード面)裏に取り付けられている
1990年10月に操業を開始(設立は1989年12月)した島根富士通(SFJ)が目指す“Next30”におけるキーワードが、逆境を乗り越える「逆境力」と環境の変化に対応する「変動力」の2つだ。2030年までに製造コストを半減・物流リードタイムを6分の1にすることを目標に、自動化とデジタル化を加速する方針。生産効率や人手不足の解消も踏まえ、組み立て工程や物流でさらに自動化を進めるほか、SMT(表面実装技術)工程については100%の自動化を目標に掲げる。
これらを実現するため現場のさらなる改善(カイゼン)にも取り組む。同社ではすでに細かいカイゼンは社員が自由に行ってよい仕組みにしており、年間5,000~6,000件のカイゼン案が上がってくるとした。
一気通貫のPC国内生産が“高品質”の強み
島根富士通の神門明代表取締役社長によると、2018年5月にFCCLがレノボ傘下となってから「JV(ジョイントベンチャー)化は大きく影響していない」という。ただしレノボとの連携で部品の調達力が強化されたことは恩恵を受けており、部品が安定して調達されることで同社の生産性も保たれ、今後もFCCLと一体となって国内生産を続けていくとのこと。「開発と製造が同じ言語と文化のもとで密接に連携できる点」が高品質を実現できる国内生産の強みであり、国内の方が顧客のニーズにも迅速に対応できるとする。
神門社長は、PC累計生産台数5,000万台の達成は、神奈川県・川崎にあるFCCLの研究開発部門と密接に連携できたことが大きな要因とした。2019年5月に達成した4,000万台から、今回の5,000万台達成(2024年1月20日付)までは約5年8カ月かかっているが、次の6,000万台は約300万台/年という生産能力をフル活用し「なるべく早く、3年ほどで達成したい」という。
今後は新棟の建設や2交代制の拡大なども未定ながら視野に入れつつ、またレノボグループとの連携で受注台数を増やすなどして、2050年に1億台を達成したいと意気込んだ。