Appleは近年、毎年9月中旬に年に1度の新型iPhoneを発売するスケジュールを維持しています。2024年は9月20日にiPhone 16シリーズを発売しました。Appleに限らず、米国企業は、消費が最も動く11月下旬からクリスマスにかけての「ホリデーシーズン」に合わせて商品ラインアップを整えます。
2024年のAppleはここまでのところ、5月にiPad Pro/iPad Air、10月にiPad mini、そして10月末にMacのラインアップを一新。9月のiPhoneと同時に、AirPodsとApple Watchも新モデルを登場させました。今年のホリデーシーズン、ほとんどすべてのカテゴリーに「新商品」を取り揃えて、売上の拡大を狙っています。
そうしたなか、やはりAppleの中核商品はiPhone。iPhoneは、Appleの売上高の実に半分を占めています。2024年モデルのiPhone 16シリーズは、消費者にどのように受け止められているのでしょうか?
インフルエンサーが考える“最高のiPhone”を調査
そこで今回、43万人ものインフルエンサーとのビジネス共創を実現するプラットフォーム「INFRECT」とともに、1万人を対象にしたインフルエンサーへの調査を実施できるサービス「KIZUKEY」を用いて、10月中旬の2週間実施したiPhone 16に関する調査結果についてご紹介したいと思います。
インフルエンサーは、マーケティングの世界では「イノベーター」や「アーリーアダプター」と言われる、自分で価値判断をして新しい商品を取り入れることができる層とされています。そんなインフルエンサーを調査することで、マーケットの動きや視点をつかむデータを得よう、というのが今回の趣旨です。
iPhone率88.6%! インフルエンサーが注目する今年のiPhone
今回調査したインフルエンサーは、1万人以上のフォロワーを擁して、趣味として、またはお仕事として、SNSで情報発信の活動を行っている人たちです。
彼らの中でiPhone所有率はきわめて高く、実に88.6%に上っていました。iPhoneを選んでいる理由として挙げているのは、カメラ性能、デザイン、そして性能を重視していました。
そんなインフルエンサーが注目した2024年モデルのiPhoneは、やはりカメラが3つ搭載されている「iPhone 16 Pro」でした。重視していたのはカメラ性能とバッテリー持続時間で、超広角カメラの強化や、A18 Proチップによる処理性能とバッテリーの両立は、インフルエンサーにとって重要な位置づけとなっているようです。
Proモデルのカメラ機能の注目ポイントとして、56%の人が「オートフォーカス対応の超広角カメラ」と回答。インフルエンサーのカメラの使い方として、小物や食べ物の接写やダイナミックな風景がキレイに撮影できる点に魅力を感じているようです。
その一方で、日本ではすぐには導入されないApple Intelligenceについても、期待を寄せていると回答した人は35%もいました。
デザイン重視ならiPhone 16
意外な結果となったのが、1位のiPhone 16 Proに続く注目度第2位はiPhone 16(6.1インチモデル)だったこと。大画面モデルのiPhone 16 Pro Maxを押さえて2位となった背景はどこにあったのでしょうか? これには本体カラーの違いがありそうです。
「iPhone 16のカラーバリエーション」についての質問で一番人気を集めていたのは、ピンクでした。次いでホワイト、ブラック、ティールと、iPhone 16に設定されているカラーが上位を占めています。
つまり、こだわりの持ち物として選ぶなら、iPhone 16の華やかなカラーが、iPhone 16 Proのチタニウム系よりも魅力的に感じている、というのがインフルエンサーの意見でした。確かに「ピンクのProモデル」「ティールのPro Max」が登場したら、それを選ぶ人はインフルエンサーでなくても増えるかもしれません。
ただし、チタンとピンクが成立するか?という問題はあります。ユーザーがもっとカラフルなProモデルを要望するなら、チタンではなくアルミに素材を切り替えたProモデルも検討されるのではないかと思います。
インフルエンサーが求める「スマホ」とは
さて、インフルエンサーは、どんなスマートフォンを求めているのでしょうか? 「スマートフォンを購入する際に重視するポイント」について聞いてみると、AppleのiPhoneの進化の方向性が正しいことを裏付けていました。
インフルエンサーがスマートフォンに求める最も重要な機能は、19.6%の人が「カメラ性能」と答えていました。インフルエンサーは、スマートフォンによる情報発信を主体とすることから、スマートフォン自体のカメラ性能を重視するのは当然の結果といえます。
また、次いでストレージ容量とバッテリー持続時間が13%台に並んでいました。カメラ性能と総合すると、良い画質で撮影できるカメラで、よりたくさんの写真やビデオを保存でき、より長く撮影が続けられるスマートフォン、というのがニーズとなっていました。
この結果と、近年のAppleのiPhoneの進化の方向性を見ると、一致していると感じます。iPhoneはAppleシリコンの進化によって、処理性能はもちろんですが、省電力性を高めています。また、データの書き出しが早いイメージセンサーからAppleシリコンにデータを受け渡すことによって、写真やビデオの高画質化を実現してきました。
その点から考えると、Appleが推し進めた独自設計チップの進化は、カメラとバッテリーというインフルエンサーのニーズをダイレクトにとらえる施策であった、と位置づけられます。
AppleのiPhone進化の方針は正しい
テクノロジーが好きな人間としては、どうしても最新技術や、新しいギミックに興味が湧きます。例えば、折りたたみだとか、最新AIであるとか、プロセッサそのものの進化など、着実にテクノロジーが前進していることを見ると楽しい気分になります。
その一方で、特にAppleは、そうしたテックオタクである「イノベーター」ではなく、価値評価を自ら下して取り入れる「アーリーアダプター」を惹きつけ、その評価をより多くの人々である「マジョリティ」に訴求する、というマーケティングを展開してきました。 その点で、今回のインフルエンサー調査は、まさにアーリーアダプターがiPhoneをいかに価値づけているのかをうかがい知ることができる資料となったといえます。
そこで出てきたのが、カメラとバッテリー。Appleの例年のプレゼンテーションを見ると、やはりカメラとチップの話を中心にしながら、チップの進化は結果としてバッテリー持続時間向上の根拠としていました。こうしたマーケティング戦略を加味した製品作りと訴求が、現在のAppleのコンシューマーエレクトロニクス企業としてのブランドと強さを作り出しているのではないか、と改めて思いました。