シャープが9月26日に発表したスマートフォンのスタンダード機「AQUOS sense7」「AQUOS sense7 plus」。実機に触れる機会を得られたので、ファーストインプレッションをお届けします。
AQUOS R7のノウハウを投入したカメラ機能
AQUOS senseシリーズは、シャープの位置づけでは「スタンダード」ですが、ミドルからミドルハイといったクラスの製品です。世界的なインフレと円安影響で端末コストが上昇しており、ハイエンドモデルがさらなる高価格となっているため、ミドルからミドルハイモデルの注目度が増しています。
そうした中で登場したAQUOS sense7は、動画視聴機能を強化したAQUOS sense7 plusも投入して、より幅広いニーズに応えようとしています。
両モデルに共通する注目点はカメラ。メインカメラを横幅に対して中心に配置するデザインを採用。上位モデルである「AQUOS R7」と同じデザインなので、ハイエンドモデルと同じ感覚で使えます。
従来より大型化した1/1.55型で50.3MPの高画素センサーを搭載。ピクセルビニングによって4つの画素を1つの画素として扱うことで、ピクセルピッチの大型化による低ノイズ、広ダイナミックレンジが期待できます。
実際、暗めのシーンを再現したデモでは、前モデルのAQUOS sense6がノイズリダクションによって解像感が失われているのに対して、解像感を残しつつ低ノイズで、ダイナミックレンジの広さも伺えました。
AF性能も向上。全画素の位相差AFによってセンサー全面での位相差AFが可能で、高速/高精度なAFが可能だとしています。実際、AQUOS sense6よりも高速なAFとなっていて、暗所でのAF精度も向上しているようです。
ただし、AQUOS sense7/sense7 plusが採用しているのは4画素を1画素として扱う方式で、AQUOS R7に搭載された4画素の8つの素子を使うOcta PDに比べると速度や精度はやや劣るようです。
AQUOS R7では1型センサー、7枚構成のレンズ、ライカカメラの監修といった高画質化に注力していましたが、そうしたノウハウを踏襲。ライカの監修自体はありませんが、得られたノウハウは反映していて、基本的な絵作りの方向性は一貫しているとのことです。
機能面では、画質エンジンとして「ProPix4」を搭載し、JPEG圧縮する前のRAWの時点で合成することでノイズ削減、ダイナミックレンジ拡大を可能とするナイトモードや、人物の顔の領域を細かく分解して最適化するセマンティックセグメンテーション技術も導入しています。
ただし、AQUOS R7がハイエンドのSnapdragon 8 Gen 1を搭載するのに対して、AQUOS sense7ではミドルレンジのSnapdragon 695 5Gとなっているため、ナイトモードの合成枚数を少なくしたり、セマンティックセグメンテーションでは分析する項目を減らして速度低下を抑えているそうです。例えば男女で髪の毛の処理を変えているところを省いているといった点が違うとのこと。
画質面でいえば、センサーサイズに加えてレンズが6枚構成になっているため、全く同画質とはなっていないようです。実際、背景ボケがいわゆる玉ねぎボケになっている点や周辺解像度の面では上位モデルには及ばない印象でした。
搭載しているカメラはメインカメラと超広角カメラのデュアル構成で、望遠カメラは搭載していません。センサーサイズがさらに小さな望遠カメラよりも、大型センサーのメインカメラでデジタルズームをした方が高画質という判断をしたそうです。
現実問題として実際に高画質なのは2倍デジタルズーム程度まででしょう。逆に言えば、2倍程度なら、確かに無理に望遠カメラを搭載するよりはコストを抑えた形でカバーできるかもしれません。
細かい点ですが、シャッター音とカメラのUIはAQUOS R7と同じものを採用して統一感を高めています。シャッター音はAQUOS sense7のスピーカーに最適化した調整をしているそうで、わずかに異なって聞こえますが、原音は同じシャッター音だそうです。
とはいえ、AQUOS R7のノウハウを盛り込んでバランスよく仕上げたカメラ機能という印象を受けました。
音と映像が進化したAQUOS sense7 plus
動画視聴の面では、AQUOS sense7 plusに機能が追加されています。Snapdragon 695を搭載するため、どちらもHDRコンテンツの再生には対応していないのですが、AQUOS sense7 plusにはSDRコンテンツをHDR相当にアップコンバートする「バーチャルHDR」機能を搭載。
専用のプロセッサを搭載することで、動画再生時に120fpsにフレーム補間する機能を実現しました。映像を予測して補間するため、動きのあるシーンでの映像の滑らかさを向上。24fpsの映像であれば最大5倍という120fpsの映像を実現します。
自分で撮影した動画だけでなく、YouTube/Netflixなど、著作権保護技術が適用された動画でも動作し、映像を解析して補間が効果的なシーンで動作するなど、インテリジェントな動作をするとのこと。専用プロセッサを使うため、SoC単独で同様のことをするよりもバッテリー消費も削減できるとしています。
AQUOS sense7 plusは大口径のスピーカーユニットを採用。低音域の音圧を約2倍に、帯域幅を約1.4倍にしたそうで、実際に音を聞いてみると、低音の音圧が増したことで音の厚みが出ているようでした。
AQUOS sense7とAQUOS sense7 plusはサイズこそ異なりますが、どちらもディスプレイはIGZO OLEDで、シーンに応じて画面書き換え頻度を制御して省電力化。さらにAQUOS sense7 plusでは、120Hzのリフレッシュレートに加えて、最大240Hzのリフレッシュレートに対応しています。
AQUOS sense7の方は、NTTドコモ/KDDIの両社から発売され、ハードウェアは基本的に共通なため、両キャリアをカバーした幅広い対応周波数という点はメリット。逆にAQUOS sense7 plusはソフトバンクのみなので、ソフトバンクネットワークに最適化。具体的には、例えば5Gのn79に非対応となっています。
販売チャネルやスペックの違いはありますが、コストを抑えつつニーズに応えるようにカメラ機能などを強化したことで、両機ともにミドルレンジでもコストパフォーマンスに優れたモデルになりそうです。