「秋のヘッドフォン祭2022」が東京・中野サンプラザで9月18日に開催されました。
「春のヘッドフォン祭 2022 mini」に続き、今回も事前登録制ということで1日のみ、参加人数1,500人に限定しての開催となりましたが、春よりもフロアや入場者数を増やし、トークやミニライブなどのイベントが実施されたこともあって、かつての姿を取り戻しつつあるように感じられました。
今回興味深かったのは、ハイエンドヘッドホンの新作が多数出展されていたこと。なかでも、ヤマハが開発中の最上位ヘッドホン「YH-5000SE」は特に大きな注目を集めており、参考展示を行うと事前予告されていたこともあってか、試聴希望者のための整理券配布は開場からわずか5分で終了してしまったそうです。
“有線を超えるサウンド”(!?)を追求したという、finalの完全ワイヤレスイヤホン最上位機「ZE8000」も人気でした。イヤホン本体のサウンドやスペックもさることながら、専用カスタムイヤーピースのオーダーを始めるというのも気になる情報です。今回は外観展示のみとなりましたが、10月末に正式発表を予定しているそうなので、続報を待ちたいところ。
ヘッドフォン祭の中で実施された、FitEar(須山歯研)の新しいカスタムイヤーモニター「FitEar H1」製品発表会の会場には、多くの人が詰めかけていました。オンキヨー製のマグネシウム振動板バランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーを採用しているということで、オンキヨーの“中の人”が登壇してBAドライバーの特徴などを解説。また、須山歯研の開発体制が若手スタッフを中心としたものに移行しつつあるというのも興味深い情報でした。
本邦初公開となる新製品がズラリと並んだFiiOブースで異彩を放っていたのが、新機軸のオーディオ製品「R」シリーズ第1弾として登場した、据え置き型の「R7」でした。強⼒なDAC部を備えたデジタルオーディオプレーヤーと据え置き⽤のアンプを搭載させ、電源も強化。デスクトップに置いてネットワークオーディオプレーヤーとして使えるように仕上げています。パッと見は、近頃一部のJR駅構内で見かける全面ディスプレイの自販機っぽく、見た目の面白さもありますが、実際の使い勝手も気になるところです。
会場ではほかにも、新作を含む多数のポータブルオーディオ製品が出展されていました。今回はその中から、筆者が注目した製品をフォトレポート形式で紹介していきます。
FOCAL最上位ヘッドホン「UTOPIA SG」
ラックスマンのブースでは、FOCALの最上位ヘッドホン「UTOPIA SG」が登場。初代UTOPIA(2016年発売)に最新のテクノロジーとノウハウを注ぎ込み、ピュアベリリウム素材の“M”字型ドーム・ドライブユニットを刷新して搭載した第2世代モデルです。整理券を入手できた来場者が試聴に訪れ、実機のサウンドにじっくり耳を傾けていました。9月末発売予定で、価格は66万円。
AUDEZE新ヘッドホン「MM-500」
秋のヘッドフォン祭2022のメインビジュアルには、今秋日本市場に投入される2つの新型ハイクラスヘッドホンの画像が使われていました。そのひとつが、平面振動板タイプの高級ヘッドホンの老舗である米AUDEZEの最新型Mシリーズヘッドホン「MM-500」。
レコーディングスタジオ以外の環境下でも、スタジオでの作業と同様のクオリティを発揮する“スタジオモニターヘッドホン”として開発されたそうです。完実電気のブースで出展されており、国内では30万円ほどで販売予定とのこと。
Dan Clark Audio第1弾ヘッドホン「STEALTH」
秋のヘッドフォン祭2022のメインビジュアルに使われていた、もうひとつのヘッドホンがDan Clark Audio(ダンクラークオーディオ)の新製品「STEALTH」(ステルス)。
これまでMr.Speakers(ミスタースピーカーズ)として国内でも流通していたメーカーが、創業者の名前を取った新しいブランドネームに変更して再出発し、同社ならではの平面振動板を採用したSTEALTHで日本市場に再参入したかたちです。こちらも完実電気のブースで試聴可能になっていました。ヘッドフォン祭を主催するフジヤエービックが国内独占販売を始めており、価格は63万8,000円です。
ゼンハイザー「MOMENTUM 4 Wireless」
ゼンハイザーのブースで目立っていたのは、8月に発売したワイヤレスヘッドホン最上位機「MOMENTUM 4 Wireless」(実売約54,890円)。ホワイトとブラックの2色を用意し、試聴可能な状態で用意していました。
ピエール中野監修のAVIOT初ヘッドホン、首都圏初上陸
AVIOTブースでは、ブランド初のヘッドホン「WA-Z1PNK」(直販88,000円)の実機が試聴可能な状態で展示されていました。ピエール中野氏が監修し、声優・ 緒方恵美氏の録り下ろしボイスガイダンスを搭載しているのも大きな特徴。大阪や仙台のポータブルオーディオ製品展示会で既に披露され、8月には先行予約販売も実施されていた製品ですが、意外にも首都圏でのイベント展示は初めてとのこと。
耳穴に入れない、NTTソノリティの“パーソナルイヤースピーカー”
NTTソノリティのブースでは、「耳をふさがないのに音漏れしにくく、人と話しやすい」という“パーソナルイヤースピーカー”「MWE001」を中心としたデモ展示を行っていました。耳掛け式の有線タイプで、耳穴に干渉しない軽い着け心地なのが好印象です。
「耳元だけに音を閉じ込める」というNTT独自のPSZ(パーソナライズド・サウンド・ゾーン)技術を活用した製品。PSZは、ドライバー(音の出口)から一定距離のところで、ある音波(正相)に対し、逆相の音波を当てて音波同士を打ち消し合い、周囲への音漏れを防ぐというもの。ノイズキャンセリング機能と同様の原理を応用しており、耳をふさがないのに音漏れが本当に少ないので、リモートワークやオンライン会議で活用できそうです。
MWE001は現在、GREEN FUNDINGでクラウドファンディングを実施中。予想を超える支援を集めたことで製品の増産が決定しており、10月24日まで期間を延長しています。執筆時点では25%オフの6,188円で購入できるプランなどが用意されていました。
SP3000+Odysseyだけじゃない、アユートブースの新製品
Astell&Kernやqdcなどのブランドを展開するアユートブースの目玉は、新しいフラッグシップハイレゾプレーヤー「A&ultima SP3000」と、米国のカスタムイヤホンメーカー・Empire Earsとの初コラボレーション高級イヤホン「Odyssey」。それ以外にも参考展示の新製品の姿がありました。
qdcからは、7月の「ポタ研」でも参考出展していたフラッグシップ級ユニバーサルイヤホン「Tiger」のほか、ダイナミックドライバー1基搭載の「Dmagic Solo」(想定売価:3万円前後)や、有線イヤホンを完全ワイヤレスイヤホンのようにするaptX対応Bluetoothレシーバー「qdc TWX」(想定売価:2万円前後)が参考出展されていました。
AZLAからは、東京ゲームショウ2022で披露された有線イヤホン「ASE-500」を参考展示。「AZLA史上最高の寝ホン」を謳い、ドライバーとケーブルを除くすべてにシリコンを使ったデザインが特徴です。