ヤマハミュージックジャパンが開発中のフラグシップモデルヘッドホン「YH-5000SE」が、「秋のヘッドフォン祭2022」(9月18日開催)で参考出品されていた。ヤマハブースで実機を見てきたので、ファーストインプレッションをお届けする。

  • ヤマハが開発中のフラグシップヘッドホン「YH-5000SE」

  • 装着したところ

同ブースでは、現在開発中のフラグシップヘッドホン「YH-5000SE」の静態展示が行われ、さらに整理券方式での実機試聴体験も実施していた。ヤマハのオーディオ製品公式Twitterアカウント(@yamaha_audio_jp )によると、開場からわずか5分で整理券の配布が終了してしまったそうで、注目度の高さがうかがえる。

  • YH-5000SEの静態展示

  • YH-5000SEの諸元

ヤマハ初の平面磁界型ドライバーを採用したヘッドホン「HP-1」(1976年発売)の伝統を受け継ぎ、「ヤマハが現在実現し得る最高のサウンドクオリティを持ったヘッドホン」を目指して開発されているのが、YH-5000SE。ブースには、新しい最上位機開発の礎となったヘッドホンHP-1、YH-5Mの姿もあった。

  • ヤマハ初の平面磁界型ドライバーを採用したヘッドホン「HP-1」(1976年発売)

  • オルソダイナミック型技術を採用したヘッドホン「YH-5M」(1978年発売)の姿もあった

YH-5000SEでは、進化を遂げた平面磁界型「オルソダイナミックドライバー」(50mm径)を、開放型の高剛性な金属ハウジングに搭載。長年の開発・研究で培った技術や厳選した素材を惜しみなく投入し、トーナルバランス(音色の正確な再現)や、ダイナミクス(静と動の表現による躍動感)、サウンドイメージ(空間描写)をテーマに作り上げ、音と臨場感の本質に徹底してこだわっている。

  • 整理券方式の試聴ブースを設けていた

  • YH-5000SEが搭載している、50mm径の平面磁界型「オルソダイナミックドライバー」

ヤマハでは、YH-5000SEで「アーティストの意図したとおりに音を表現し、圧倒的な没入感を生み出す『TRUE SOUND』を体感できる」とアピール。再生周波数帯域は5Hz〜70kHzときわめて幅広く、インピーダンスは34Ω(@1kHz)となっている。

  • 新ドライバーを構成するパーツの展示もあった

マットなブラック仕上げを施した、ヘッドホン本体の質感の高さも注目ポイントだ。ヘッドバンドは頭部に負担がかからない作りになっており、試しに装着してみると、存在感のあるガッチリした見た目からは想像できないほど、軽くフワッとした着け心地で驚いた。

平面駆動型のヘッドホンはその構造上、重量が増えてしまいがちだが、YH-5000SEのケーブルを除いた重さは320gとのこと。同社が謳う“長時間の音楽試聴を可能とする装着感”の良さを実感できた。

  • 頭部に負担がかからない作りのヘッドバンド

実際に短時間ながら試聴もしてみた。今回は、ノートPCの音源をRMEのUSB DAC搭載ヘッドホンアンプ「ADI-2 DAC FS」を介してYH-5000SEで聞ける環境が用意されており、6.3mm標準ステレオアダプターを装着したケーブルで女性ボーカル曲を中心に聞いた。

YH-5000SEのハウジングは開放型なので、当然外の音も入ってくる。だが、音楽を再生すると、きわめて自然なバランスのサウンドが流れ出し、そちらに意識が吸い寄せられて外音が気にならなくなった。無骨なルックスに反して繊細かつキレのよい音が好印象。歌声には実在感があり、スッと目の前に音楽が浮かんでくるような感覚が味わえた。

  • ノートPC+RME製USB DAC搭載ヘッドホンアンプ「ADI-2 DAC FS」の組み合わせで、YH-5000SEのサウンドを体験

ヤマハでは開発機のサウンドについて、「高い応答性としなやかさの両立を再現し、微細音への高い追従、空気感のある低域表現、広い音場の中で1音1音が躍動する自然な没入感」を追求したと説明している。今回は開場までのごくわずかな時間での取材となったが、落ち着いた静かな空間でまたじっくり体験してみたい、と思わせる魅力がYH-5000SEにはあった。

  • ヘッドホン側に着脱可能な端子を備える。差し色的なイエローのパーツが目を惹き、カッコいい

  • ヘッドホン側は3.5mmモノラル端子

フラグシップ機というだけあって付属品も豊富で、6.3mm標準ステレオプラグアダプターを装着可能な3.5mmケーブル、4.4mmバランスプラグのケーブル、レザー+メッシュ地のスッキリしたイヤーパッドと、ベロア地で聞き疲れのしない“まろやかな音”が楽しめるというイヤーパッドに加えて、金属製の重量級ヘッドホンスタンドまで同梱している。

  • 3.5mmケーブルと6.3mm標準ステレオプラグアダプター、4.4mmバランスプラグのケーブルが付属

  • レザー+メッシュ地のスッキリしたイヤーパッド(左)と、ベロア地でまろやかな音が楽しめるというイヤーパッド(右)。スムーズな着脱ができる設計になっている

担当者によると、このヘッドホンスタンドは「モノを持つ喜びというか、使っていないときもここに佇む姿をみて、“自分はいいものを買った”という、満足度を上げるアイテムのひとつとして捉えてもらいたい」という思いで作り上げたとのこと。

「YH-5000SE」は開発機のため明らかになっていない部分もあるが、40〜50万円程度での製品化を目指しているそうだ。こういったハイエンド機にとどまらず、ヤマハの目指すサウンドを追求したオーディオ製品のラインナップを拡充させることも考えているようで、今後の展開にも期待が高まる。

  • 所有欲を高めてくれる同梱ヘッドホンスタンド

  • 別売オプションとして専用XLRケーブルも用意する模様だ

なお、同ブースではほかにも、同社の完全ワイヤレスイヤホンの最上位機種「TW-E7B」や、普段使いにもなじむという「TW-E5B」を用意。

  • ヤマハ完全ワイヤレスイヤホンの最上位機種「TW-E7B」

  • TW-E7Bのカラーバリエーションも

どちらもヤマハ独自の聴覚保護技術「リスニングケア」を導入して音量の上げ過ぎを防げるように設計しており、上位のE7Bではこれを進化させた「リスニングケア(アドバンスド)」を採用している。既に発売済みの製品なので、会場では整理券なしで試聴できるようになっていた。

  • 完全ワイヤレスイヤホン「TW-E5B」の姿もあった