ソニーがAndroid OSを搭載するフラグシップスマホ「Xperia 1 IV(エクスペリア ワン マーク4)」を発表しました。6月上旬以降にNTTドコモ/au/ソフトバンクから発売されます。Xperia 1 IVの気になる「オーディオ・ビジュアル性能」を中心に、実機を試しながら詳細をチェックしてみたいと思います。
Xperia 1シリーズの資産を継承する最強のオーディオ・ビジュアルスマホ
新しいXperia 1 IVと前モデルXperia 1 IIIとの間で、大きく変わった箇所、ならびに主だった共通点について簡単に振り返ってみましょう。
どちらのスマホも同じ6.5インチの4K/HDR対応有機ELディスプレイを搭載しています。アスペクト比が21対9という、スリムなシネマワイドディスプレイを踏襲しました。背面カメラユニットのルックスも大きく変えなかったことから、全体の外観は新旧機種のあいだで大きな差がない印象を筆者は受けました。
Xperia 1 IVでは、プロセッサにクアルコムの最新プレミアムモバイルSoCである「Snapdragon 8 Gen 1」を搭載しています。プロセッサーの進化がカメラやオーディオビジュアル、ゲーミング体験の飛躍を引き出しますが、Bluetoothオーディオについてもいくつかのアップデートがあります。
ネットワークは5GでSub6とミリ波の両方をサポートしました。本体に内蔵するバッテリーの容量は4,500mAhから500mAh増えて、5,000mAhになっています。オーディオ・ビジュアルのコンテンツもより長い時間、バッテリー切れに不安を感じることなく楽しめそうです。
HDR映像が明るく、見やすくなった
Xperia最上位シリーズのディスプレイは、2021年モデルのXperia 1 IIIから4K/HDRの120Hz倍速表示に対応しました。今回のXperia 1 IVでは同じ4K/HDR+120Hzネイティブ対応のディスプレイとしながら、輝度を50%向上して「明るく」なりました。輝度を上げられた理由は「搭載する有機ELパネルは同じものでも、Xperia 1 IIIではパネルが持つ実力のすべてを引き出せていなかった。Xperia 1 IVの開発時にその特性を100%近くまで引き出すノウハウを得たから」なのだとソニーの担当者は話しています。
パネルが明るくなると消費する電力も上がりますが、そこは端末全体のエネルギーマネージメント効率を同時に高めることにより、使い勝手に影響が及ばないようにしているそうです。
端末の「画質設定」から「スタンダードモード」を選択。明るさレベルやホワイトバランス、ナイトライトなどユーザーの目を保護する機能の設定を揃えてから、画面の明るさを最大にして並べてみると、新しいXperia 1 IVの方がまぶしく感じられるほど画面が明るくなっています。
Xperia 1 IVのディスプレイには、スマホを使う環境に応じてHDRコンテンツを見やすく表示するための新機能「リアルタイムHDRドライブ」が搭載されています。HDR映像は1フレーム単位で画面の明るさのバランスを解析してトーンカーブを調整。見え方を改善します。
「画面設定」のメニューから「画質設定」に入ると、色域とコントラストの項目にはより色鮮やかな「スタンダードモード」と、映像クリエイターの意図を忠実に再現するために設けられた「クリエイターモード」が並んでいます。スタンダードモードの選択時には、リアルタイムHDRドライブもHDR映像コンテンツを再生した際に自動でオンになります。クリエイターモードを選んだ場合、「クリエイターの意図再現」にも関わるところなので、リアルタイムHDRドライブは任意で有効化できます。
機能の効果は、昼間の屋外など明るい場所でHDR動画を再生した時に発揮されます。映像の暗部が引き締まり、明るい箇所のピークが力強く描かれます。色合いのバランスを崩すことなく自然なまま、画面の明るさが最適化されるところに特徴があります。
Xperia 1 IVの4K/HDR対応のディスプレイが備えている性能を100%引き出せる「モバイル対応のHDR映像コンテンツ」はまだ数少ないのが現状です。ソニーはモバイル向けの高画質動画配信サービス「BRAVIA CORE for Xperia」を独自に展開しています。2021年に発売した「Xperia PRO-I」に続き、Xperia 1 IVでもプリインストールされるBRAVIA CORE for Xperiaが利用できるようになりました。Xperia 1 IVのユーザーは新規にアカウントを作成すると5本の映画を12ヶ月間、繰り返し視聴できるチケットを入手できます。4K/HDR対応のモバイルコンテンツを探して、Xperia 1 IVの高画質ディスプレイの実力を確かめてみることをおすすめします。
ユニットを一新。パワーアップを図った内蔵スピーカー
Xperia 1シリーズは、Dolby Atmos音声を収録するコンテンツの迫力を内蔵スピーカーで引き出すことにもこだわり抜いてきました。音づくりにはソニーグループのクリエイティブ部門であるソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントのクリエイターも参加しています。
Xperia 1 IIIからフロント側の左右均等にステレオスピーカーを配置、さらに専用のスピーカーボックスを設けることで力強く立体的なサウンドが再現できるようになりました。
内蔵スピーカーには「フルステージ・ステレオスピーカー」というコンセプト名称が付けられています。Xperia 1 IVではスピーカーユニットを強化しました。ボイスコイルの周囲に配置するマグネットを増強。新旧機種の比較で約2倍以上の駆動力を持たせています。マグネットからボイスコイルに伝わる磁力を最大化しながら、音を生み出す振動板のピストンモーションを拡大したことにより、中低音域がいっそう肉厚になりました。全体の音のつながりがXperia 1 IIIよりもさらにスムーズになっています。
ソニーは「Xperia 1 IIIとの比較で、音圧レベルが向上した」として、新しいXperia 1 IVのスピーカーサウンドの底力が増したことをアピールしています。特に100~300Hz周辺の低音域成分の再現性が上がり、音圧も20~50%前後まで押し上げているそうです。
音楽配信サービスから購入した楽曲を「ミュージック」アプリに入れて、Xperia 1 IVのスピーカーサウンドを試聴しました。ロックのベースギターやバスドラムスなど楽器の低音は明らかに存在感が秀でています。大編成のオーケストラによる演奏を聴くと、ティンパニのリズムが弾力感に満ちていて、コントラバスの艶やかな低音も艶っぽさを増しています。従来スマホの内蔵スピーカーでは聴き取りづらかった低音域の旋律が鮮やかに浮かび上がりました。
低音の重心が下がって安定すると、ボーカルやメロディを演奏する楽器の定位、つまりは位置関係も明瞭になります。演奏空間が立体的に感じられ、特に奥行き方向の描き込みはXperia 1 IVにまた一歩踏み込んだ進化が感じられました。
Dolby Atmos音声を収録する映画を再生してみると、Xperia 1 IIIに比べて、Xperia 1 IVの方がさらに音の抜けが良く、高さ方向にも豊かな空間の広がりが感じられます。前後左右にもよりワイドに効果音が移動します。デスクトップでの映画鑑賞なのに、まるで映画館にいるような没入感が得られます。
ソニー独自の立体音楽体験「360 Reality Audio」に対応するコンテンツもまた、Xperia 1 IVは内蔵スピーカーにより360度周囲から音に包まれるような迫力を再現します。Xperia 1 IVの方がXperia 1 IIIよりも音のつながりが滑らかになり、低音域の効果音がタイトに引き締まりました。360度方向への音の広がりも一段と伸びやかです。
有線ヘッドホン・イヤホン再生も強化されている
Xperia 1 IVには有線のヘッドホン・イヤホンを接続できる3.5mmオーディオジャックがあります。有線接続の場合、ハイレゾ音源の再生が音質の劣化なしに楽しめます。ハイレゾ対応のヘッドホン・イヤホンの中には価格が5,000円を切る安価なものもあるので、Amazon Music UnlimitedやApple Musicのハイレゾ配信を手軽に楽しむ手段として要チェックです。
Xperia 1 IVは内部オーディオ基板のレイアウトを変えて、アンプからオーディオジャックまでの信号経路を大幅に見直しています。これにより有線ヘッドホン・イヤホンによる再生時に音場の透明感が向上しています。低音のインパクトも力強くなりました。Xperia 1 IIIと比べながら聴くと、ボーカルの声の繊細なニュアンスもまた丁寧に描かれます。大編成のジャズバンド、クラシックのオーケストラの楽曲を聴くと、音色がより鮮やかに感じられると思います。
Xperia 1 IVの「オーディオ設定」に並ぶ機能についても説明を補足します。「360 Upmix」は元がステレオ音源として制作されている音源に演算処理を加えて、ソニーの360 Reality Audioの立体サウンドに近づけて再生する機能です。特にヘッドホンで聴くと、スピーカー再生で音楽を聴いているような空間の広がりがわかりやすく伝わると思います。
「DSEE Ultimate」は通常音質の音楽配信や、MP3形式などでスマホに保存している圧縮音源を、演算処理によりハイレゾに近い音質までアップスケーリングする機能です。再生時にはAIによる機械学習処理をかけて、ボーカルや種類の異なる楽器単位で最適な補完をかけます。機能のオン・オフを切り換えながら試聴すると、特に高音域に自然な広がりが生まれ、抜けが良くなる感じがあると思います。YouTubeなど動画再生時の音声にも効果があります。端末の消費電力にはほぼ影響がない機能なので、「常時オン」で使うことをおすすめします。
ハイレゾワイヤレス再生に全方位対応のBluetoothオーディオ
Xperia 1 IVのBluetoothオーディオは、ソニー独自のLDACと、クアルコムのaptX Adaptiveというふたつの音質にもこだわるコーデック(圧縮伝送技術)をサポートしています。
LDACとaptX Adaptiveはそれぞれのコーデックに対応するワイヤレスイヤホン・ヘッドホンを組み合わせることによって実力を発揮します。Xperia 1 IVでは特に、クアルコムの「Snapdragon Sound」に対応する機器どうしであれば、最大96kHz/24bitの高音質なハイレゾワイヤレス再生と無線伝送の低遅延性能/安定接続が確保されることに要注目です(従来aptX Adaptiveに対応する機器どうしによるリスニングは最大48kHz/24bitが限界でした)。
Xperia 1 IVは発売後のソフトウェアアップデートによりSnapdragon Soundへの対応を予定しています。同じSnapdragon Soundに対応するBluetoothワイヤレスイヤホンは今年の夏から秋にかけて一斉に数が増えることが見込まれます。今回はいち早くSnapdragon Soundに対応したNoble Audioの「Falcon ANC」を組み合わせて96kHz/24bitのハイレゾワイヤレス再生を試聴しました。
Xperia 1 IVにFalcon ANCを接続すると、通知リストに「ワイヤレス再生品質」のメニューが表示されます。ここで「96kHzサンプルレートを再生」を選ぶと高音質モードに切り替わります。48kHzの低い方のサンプルレートに切り換えながら聴き比べると、96kHzの方がボーカルやピアノの高音域がクリアになり、豊かな広がりの差が感じられます。低音もよりタイトに引き締まり、音に密度の濃さを感じます。
きめ細かく滑らかなLDACによるハイレゾワイヤレス再生の特徴に対して、aptX Adaptiveはよりシャープで切れ味が鋭い印象です。どちらのコーデックによる音楽再生も、対応するオーディオ機器を組み合わせればフルスペックで楽しめるところにXperia 1 IVの醍醐味があります。
aptX Adaptiveは無線通信環境に応じて、データ転送のビットレートを自動的に可変しながら音切れやノイズの発生を抑えることを優先するコーデックです。無線電波が混み合っている場所や、イヤホンを身に着けた状態で端末から遠く離れたときは、最大96kHz/24bitのハイレゾリスニングができないこともあるので注意が必要です。
Xperiaの内蔵マイクでプロ並みの録音が楽しめる「Music Pro」
Xperia 1 IVの本体内蔵マイクを使って良質な音楽録音が楽しめるアプリ「Music Pro」も新規に搭載されました。本体のボトムマイクを使って最大48kHz/32bitのWAV形式による録音ができます。
Music Proは「ボーカルとギター」による小編成の演奏を録ることを想定して開発されました。端末上で最大10トラックの演奏を束ねて、簡易な編集も楽しめます。トラック追加時には録音対象として「ボーカル」「ギター」「ボーカル&ギター」を選択します。他の機材で録音した「ファイル読み込み」をトラックに加えることもできます。
Music Proが搭載する「Studio Tuning」の機能を使うと、Xperia 1 IVで録音したボーカルのサウンドを高音質化できます。本機能ではファイルをクラウドに送り、クラウド上でスタジオクオリティの音質にアップコンバートします。アップコンバート処理には不要なノイズ・残響の除去、プロスタジオの音場とソニーの真空管コンデンサーマイク「C-800G/9X」のプロファイルを追加するエミュレーションが含まれます。
Studio Tuningはトライアルとして100MBのファイルまで無料で試せますが、基本は月額580円のサブスクリプションサービスです。有料プランに申し込むと、毎月1,000MBまで録音ファイルのアップコンバートが利用できます。
Studio Tuningが対応するのは「ボーカル」の高音質化ですが、弾き語りスタイルで演奏した「ボーカル&ギター」の音源から、ソニー独自のAI音源分離の技術を使って「ボーカルの声だけを抜き出し」て高音質化することも可能です。
現在、AI音源分離ができるのはギターやエレキギターと一緒に演奏したボーカルのみですが、今後はピアノによる弾き語りへの対応拡大や、ボーカル以外の音源を高音質化する機能も開発を進めたいとソニーの担当者は話していました。
Music Proの機能は音楽録音に特化しています。将来はXperia 1 IVにプリインストールされている動画撮影アプリの「Video Pro」「Cinema Pro」で動画を撮る時にも、音声をよりクリアに録るための補助的な技術として発展すれば、動画クリエイターからも歓迎されそうです。
Xperiaは高品位な4K/HDR映像が単体で「撮って・見られる」
最後にXperia 1 IVの高機能カメラをオーディオ・ビジュアル的に活用する方法についても触れてみたいと思います。
Xperia 1 IVは「Video Pro」と「Cinema Pro」のアプリにより、高品位な4K/HDR動画が撮影できます。本体には4K/HDR対応のディスプレイがあるので、高画質な映像を「撮って・見る」ところまで1台で完結するスマホとして他にない魅力を持っています。
Xperia I IVでは新たにCinema Proアプリによる最大4K/120fpsのスローモーション撮影を、メインカメラの3つのレンズで撮れるようになりました。アーティスティックなビデオをXperiaで撮って、SNSに公開してみたくなります。フロントカメラのイメージセンサーは、Xperia 1 IIIの8MPからXperia 1 IVでは12MPに解像度が向上。センサーのサイズも大型化したことで明るいセルフィ撮影が楽しめます。
Xperia 1 IVは高品位なオーディオ・ビジュアルを再生して楽しむだけでなく、ユーザーが自らのクリエイティビティを活かして作ることもできる数少ないスマホです。「最強のオーディオ・ビジュアルスマホ」であるXperia 1シリーズの各機能とクオリティは、昨年のモデルから大きな飛躍を遂げていました。今年、スマホの買い換えを検討している方は「最高の買い時」を迎えたXperia 1 IVをぜひ候補に入れるべきだと思います。