ASUSの「ASUS Vivobook 13 Slate OLED T3300」(以下、Vivobook T3300)は、13.3型ディスプレイを搭載した2-in-1 PCだ。製品名にもあるように有機ELを採用しており、鮮やかな色彩と高輝度高精細な画面表示をASUSでは訴求している。
デタッチャブルキーボードと自立用スタンドがそれぞれ付属
2-in-1 PCにもいろいろなスタイルの製品があるが、Vivobook T3300はスレートタイプの本体に着脱できる(デタッチャブル)キーボードと、本体自立用スタンドを備えた着脱できる“スタンドカバー”が標準で付属する製品だ。
利用形態としては、着脱式のキーボードカバーを用意したマイクロソフトのSurfaceシリーズやDynabookのdynabook Dシリーズ、HPのHP Elite x2シリーズに近い。Surfaceシリーズでは自立用スタンドが本体に内蔵されているが、Vivobook T3300では別ユニットとなっているのが大きな違いとなる。
本体のみのサイズは幅309.9mm×奥行き190mm×高さ8.25mm、重さが約785gで、13型ディスプレイを採用する着脱式キーボードタイプ2-in-1 PCの中では最軽量クラスだ。一方、本体にスタンドカバーを装着した状態では幅309.9mm×奥行き190mm×高さ12.05mmと厚みが増し、重さも約1,066gと1kgを超す。
さらにキーボードを装着すると、サイズは幅309.9mm×奥行き198mm×高さ17.55mmに、重さは約1,385gまで重くなり、同サイズのディスプレイを搭載するクラムシェルノートPCの中でもやや重い部類となる(それでもキーボード装着状態の13.3型ディスプレイ搭載Surfaceシリーズより軽量だ)。
ディスプレイはDisplayHDR 500 True Black準拠の鮮やかな有機EL
有機ELを採用したディスプレイの表示は、とても鮮やかで高精細だ。ASUSの説明では、有機ELパネルでは低輝度における色の再現性が液晶パネルと比べて圧倒的に優れているとのこと。本機の色域はDCI-P3 100%に対応し、最大輝度は550nitを実現。コントラスト比は1,000,000:1と極めて高く、DisplayHDR 500 True Blackの認証を受けている。
また、液晶パネルでは周囲が暗い場合は輝度を上げないと色の再現性が下がってくるが、有機ELではディスプレイ輝度が低くても色再現性を維持できる。つまり、暗い部屋で低輝度で使っていたとしても色再現性が確保されるというわけだ。
実際にVivobook T3300のディスプレイ表示を見てみると、色は鮮やかでフォントもはっきりと表示されていて見やすい。解像度は1,920×1,080ドットで、13.3型ディスプレイでは標準的。画面ズーム設定を推奨の150%にしておくとやや狭く感じる。125%でも問題なく視認できるが、有機ELパネルを使っているだけあって液晶ディスプレイでは見づらくなりがちな100%設定でも問題ない。また、ディスプレイはタッチ操作に対応し、筆圧を4,096階調で認識できるスタイラスをオプションで利用できる。
参考までに、WebブラウザのMicrosoft Edgeの標準設定でマイナビニュースに掲載されている記事本文のフォント1文字分のサイズを、ズーム設定で変えながら実測した値と、同じくメモ帳の標準設定で一度に表示できる行数の値は以下のようになる。
ズーム設定 | フォント表示サイズ | メモ帳表示行数 |
---|---|---|
150%(推奨) | 3.5mm | 40行 |
125% | 2.5mm | 48行 |
100% | 2.0mm | 62行 |
インカメラ、アウトカメラともに高画素。オーディオ機能も充実
本体にはインタフェースとして、USB 3.2 Type-C×2、ヘッドホン&マイク端子、micro SDスロットを備える。無線は、IEEE802.11axまでカバーするWi-Fi 6(2.4GHz対応)とBluetooth 5.1を利用できる。また、タブレット本体にはディスプレイ側に有効491万画素のインカメラと背面側に有効1,258万画素のアウトカメラを組み込んでいる。
インカメラ側にはクアッド構成のアレイマイクを内蔵し、アウトカメラはオートフォーカスに対応する。なお、背面側のカメラは背面にスタンドカバーを取り付けた状態でも利用可能だ。ビデオ会議に向けた機能として、AIを活用したノイズキャンセリングも搭載。Dolby ATMOSに対応したクアッドスピーカーを内蔵する。
キーボードはキーピッチを19.02mm、キーストロークを1.4mmをそれぞれ確保し、キートップには深さ0.2mmのくぼみも設けている。タイプの感触は軽すぎず、キーボード部分の厚さも実測で約5.5mmあるので、カバータイプのキーボードにありがちな「音楽の教科書の裏表紙に印刷された鍵盤を弾く」ような物足りなさでストレスを感じることもない。
価格を抑えた高コスパ構成
Vivobook T3300の価格は、システムメモリ容量4GB構成モデルでWeb直販94,800円と先ほど挙げたSurfaceシリーズやHP Elite x2シリーズ、dynabook Dシリーズと比べて低く設定されている。この価格帯を実現するために、Vivobook T3300ではCPUにJasper Lake世代の「Pentium Silver N6000」(4コア4スレッド、動作クロック1.1GHz/3.3GHz、L3キャッシュ容量4MB)を採用し、システムメモリがLPDDR4X-2933を4GB(上位構成モデルで8GB)、ストレージもeMMC 128GB(上位構成モデルではPCI Express x2接続のSSD 256GB)と価格を重視した構成となっている。
限られたシステムリソース、特にシステムメモリ容量でも実用的な処理速度を発揮できるように、初期状態でOSはWindows 11 Home Sを導入している。軽いOSではあるが、導入できるアプリケーションに制約もある。このSモードは無料でWindows 11 Homeにアップグレードすることで解除できるが、その場合はシステム構成に見合った処理速度になるデメリットもある。
ASUS Vivobook 13 Slate OLED T3300(試用機)の主な仕様
- OS:Windows 11 Home S 64bit
- CPU:Pentium Silver N6000(4コア4スレッド、動作クロック1.1GHz/3.3GHz、L3キャッシュ容量4MB)
- メモリ:4GB(LPDDR4X-2933)
- ストレージ:128GB eMMC
- グラフィックス:Intel HD Graphics(CPU内蔵)
- 光学ドライブ:なし
- ディスプレイ:13.3型有機EL(1920×1080ドット、光沢)
- 通信:Wi-Fi 6(IEEE802.11a / b / g / n / ac / ax)準拠の無線LAN、Bluetooth 5.1
- 生体認証:なし
- インタフェース:USB 3.2 Type-C×2、ヘッドホン/マイクジャック×1、microSDスロット
- サイズ(タブレット本体のみ):W309.9×D190×H8.25mm
- 重さ(タブレット本体のみ):約785g
WindowsのSモードを解除した状態で処理能力を検証するため、ベンチマークテストとしてPCMark 10、3DMark Night Raid、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark 7.0.0 x64、そしてファイナルファンタジー XIV:漆黒のヴィランズを実施した。なお、比較対象としてCPUに Celeron N5100(4コア4スレッド、動作クロック1.1GHz/2.8GHz、L3キャッシュ容量4MB、統合グラフィックスコア Intel UHD Graphics)を搭載し、システムメモリが4GB、ストレージがeMMC 128GBのノートPCで測定したスコアを併記する。
ベンチマークテスト | T3300 | 比較対象ノートPC |
---|---|---|
PCMark 10 | 2344 | 2239 |
PCMark 10 Essential | 4947 | 5227 |
PCMark 10 Productivity | 3136 | 3329 |
PCMark 10 Digital Content Creation | 2254 | 1753 |
CINEBENCH R23 CPU | 1869 | 1320 |
CINEBENCH R23 CPU(single) | 688 | 563 |
CrystalDiskMark 7.0.0 x64 Seq1M Q8T1 Read | 319.91 | 297.78 |
CrystalDiskMark 7.0.0 x64 Seq1M Q8T1 Write | 163.40 | 133.77 |
3DMark Night Raid | 4071 | 2675 |
3DMark Night Raid Graphics Score | 532 | 3375 |
3DMark Night Raid CPU Score | 1746 | 1230 |
比較対象がCeleron搭載ノートPCということもあり、Pentiumを載せたVivobook T3300のスコアは総じて比較対象を上回る結果となっている。特に顕著だったのがグラフィックス系ベンチマークテストの結果で、ここでは大きな差となった。その一方で、PCMark 10のEssentialとProductivityでは比較対象を下回っている(一方で3DMark Night RaidのCPU Scoreは比較対象を上回っている)。
なお、ASUSの公式データにおいて、Vivobook T3300のバッテリー駆動時間のデータは示されていない(一応、製品訴求ポイントとして「ロングライフバッテリー」を訴求するカットが掲載されているが)。内蔵するバッテリーの容量は、PCMark 10のSystem informationで検出した値で49,852mAhだった。
バッテリー駆動時間を評価するPCMark 10 Battery Life benchmarkで測定(ディスプレイ輝度は10段階の下から6レベル、電源プランはパフォーマンス寄りのバランスにそれぞれ設定)したところ、Modern Officeのスコアは8時間36分(Performance 3340)となった。
加えて、タブレット状態で本体を持ったときの発熱を評価するため、電源プランをパフォーマンス優先に設定して、ベンチマーク「3DMark NightRaid」を実行し、CPU TESTの1分経過時における背面の表面温度を非接触タイプの温度計で測定したところ、最も高いところでも35.5度と体温を下回る程度に収まっていた。なお、T3300はファンレス構造なので、クーラーファンなどの騒音を発するパーツを組み込んでいない。表面温度測定と並行して騒音計も本体に向けていたが、周囲の環境音圧以上の値を測定することはなかった。
有機EL採用でなんでも楽しめる2-in-1 PC
有機ELパネルを採用したことで、Vivobook T3300は映像にしろ文字情報にしろメディアプレイヤーとして非常に使いやすい。ただし、13.3型ディスプレイ搭載機としてはやや重く、タブレットとして使い続けるのは“筋力”的に少し厳しい。少なくともスタンドカバーと組み合わせて使うようになるだろうし、キーボードもタイピングしやすいのでクラムシェルノートPCとしても使いたい。ただその場合、Pentium Silver N6000と4GBのシステムメモリ、eMMCのストレージによる処理能力が前提となることを承知しておく必要がありそうだ。