TSMCが、台湾南部の高雄市に新たに半導体工場を2棟建設する方向で検討していると複数の台湾メディアが報じている。

それらによると、高雄市楠梓区にある台湾中油(=台湾最大手の石油元売り業者)の高雄製油所跡地の一部(26.74ha)を2022年2月に取得し、まず第一期工事として7nm(およびその改良版である6nm)プロセスに対応する300mm工場(月産4万枚)を2024年に竣工し、2025年から量産を開始する計画だという。その後、第2期工事も進め、22/28nmプロセスを用いた月産2万枚(300mm)の工場を2025年に完成させるともしている。

TSMCの製造拠点は、本社のある北部の新竹(シンチュウ)、中部の台中、南部の台南に設置されているが、台南市に隣接する高雄市に建設されれば、台湾内で4拠点目となる。

なお、業界関係者によると、高雄市がTSMCに誘致を働き掛けた結果によるもので、すでに両者は半導体工場建設に関して基本的な合意に達しているとされているが、TSMCは、いつも通り「いかなる可能性も排除せず検討しているが、いまのところ発表する事実はない」とコメントするにとどめているという。業界関係者は、次回のTSMCの取締役会(理事会)で高雄進出が議論され承認される見込みだとしている。

台湾中油の高雄製油所は2015年末に閉鎖され、遊休状態になっていた。跡地の総面積は約238haで、うち汚染がある工場エリアは161.63haだが段階的に浄化作業を行い、TSMCの工場候補地とされる第3工場地区の26.74haは、2022年2月に整備が完了する見通しだというが、整備が遅れる可能性もあるという。

なお、TSMCは2021年9月時点で、米国アリゾナ州に5nmプロセスを用いた半導体工場を建設中で2024年に稼働させる予定のほか、日本およびドイツにも工場の建設を検討するための事前調査(Due Diligence)を実施していると7月末の株主総会で明らかにしている。今回の高雄市での工場建設については、水面下で同市内で数か所の候補地を物色してきたと言われているが、この動きが日本やドイツでの工場建設の検討とどう絡むのかは今のところ見えていない。