炎天下の自動車内に置いたスマートフォン、わずか20~30分で60度近くの高温状態になり、劣化や発火の危険が高まる――。中古スマートフォンを手がける携帯市場と国立大学法人電気通信大学の共同調査で、このようなデータが明らかになった。スマートフォンがこれほどの高温状態になると、バッテリーや内部パーツなどの劣化が急速に進むだけでなく、熱によるバッテリーの膨張や発火の危険性も高まるため、これからのお盆休みシーズンは十分注意する必要がある。

  • この季節、クルマにスマートフォンを放置すると思わぬ高温になり、熱による膨張/発火の危険性が高まる

携帯市場と国立大学法人電気通信大学 i-パワードエネルギー・システム研究センター 横川研究室との産学連携で立ち上げた「スマートフォンバッテリー劣化研究プロジェクト」が、「スマートフォンの熱中症」に関する実験結果を公開した。

温度センサーを取り付けたスマートフォンを用意し、自動車内と屋外に放置した端末の温度がどうなるかを計測した。計測日は2021年7月17日、19日、24日の3日間。

エアコンをつけていても直射日光の当たる自動車内への放置は危険!

直射日光を浴びる自動車内にスマートフォンを放置した場合を想定した実験では、エアコンをオンにした場合でも実験開始直後からダッシュボード、スマートフォンホルダー(ダッシュボード上)、シートの3カ所で温度が上昇。30分程度でダッシュボード(温度センサーのみ設置)が60度に到達し、ダッシュボード上に置かれたスマートフォンの温度は50度を超えた。実験終了後の再測定では、スマートフォンホルダー上のスマートフォンは46.0度、シートに置かれたスマートフォンは48.1度、エアコン吹出口に設置したスマートフォンも43.5度になった。エンジンを切って車内に放置すると、40度を超える高温状態が続くことが分かった。

  • 実験の様子。さまざまな場所にスマートフォンを設置し、温度の変化を調べた

  • 温度の推移グラフ。たとえエアコンをオンにしていても、直射日光が当たる場所にスマホを放置するのは危険だといえる

  • 実験1: 直射日光を浴びる車内にスマートフォンを放置した場合を想定
  • 日時: 2021年7月17日13時~14時
  • 場所: 電気通信大学構内(東京都調布市)
  • 外気温: 32.2度(気象庁府中観測所データより)

直射日光の当たる屋外で充電しながら使うのは危険!

屋外で直射日光を浴びるスマートフォンを想定した実験では、充電器をつないだスマートフォンやスマートフォン単体をサーモカメラで20分間測定。測定終了時の温度は機種によって異なったが、52.7度~60度超という結果となった。「高温注意」の警告が出るモデルも確認できた。20分以内でスマートフォンが高温になったことから、炎天下で充電しながらの利用は避けるべきと結論づけている。

  • 屋外にスマートフォンを放置したところ、20分ほどで軒並み50~60度に上昇した

  • 実験2: 屋外で直射日光を浴びるスマートフォンを想定
  • 日時: 2021年7月19日14時~15時
  • 場所: 電気通信大学西3号館屋上(東京都調布市)
  • 外気温: 33.7度(気象庁府中観測所データより)

熱を帯びたスマートフォンを効率よく冷却するには?

屋外で直射日光を浴びたスマートフォンを冷却することを想定した実験も実施した。60度まで温度が上がったスマートフォンを用意し、いくつかの方法で10分間冷却したのち、裏面と表面の温度を測定した。

スマートフォン裏面の温度が一番下がったのは、電源を切ったうえで日陰で表面をモバイル扇風機で空冷した方法。20度の冷却効果が得られた。同様の方法でも、スマートフォンの電源をオンにしたままでは8度しか下がらなかった。モバイル扇風機を使わず、電源オフにしただけでも18度下がったのは注目できる。

  • 熱を帯びたスマートフォンを冷やすには、スマートフォンの電源をオフにするだけでもかなりの効果があることが実証された

スマートフォン表面の冷却効果は、日陰で電源を切り表面をモバイル扇風機で空冷した場合で14度、電源オンの状態だと6度。電源オフのみでも12度の冷却効果があった。

このことから、最も手軽なのは「日陰でスマートフォンの電源をオフにして放置する」ことで、少しでも早く冷やしたいならばモバイル扇風機などを用いた空冷を併用するのがよい。

  • 実験3: 屋外で直射日光を浴びたスマートフォンを利用後、冷却することを想定
  • 日時:2021年7月24日14時~15時
  • 場所:電気通信大学西3号館屋上(東京都調布市)
  • 外気温:32.9度(気象庁府中観測所データより)

電気通信大学の横川慎二教授は、ほとんどのスマートフォンで使われているリチウムイオン充電池は熱の影響を受けやすく、故障の原因になりやすいため、炎天下でのスマートフォン利用は危険としている。特に、熱による膨張/発火の可能性もあるので、より一層の注意が必要だと述べている。

横川研究室の浅野実氏は、自動車内にスマートフォンやモバイルバッテリーを放置しない、車内でスマートフォンを充電する際にはエアコンの吹出口に装着する、シート脇など直射日光の当たらない場所に置く、使う際も短時間にとどめる、などの対策を挙げている。