パナソニックとパナソニック システムソリューションズ ジャパンは6月25日、佐江戸事業場(横浜市都筑区)に、Sub6帯域(4.6 GHz~4.9 GHz)を活用したローカル5G SA(スタンドアローン)システムやマルチアクセス制御の実証や検証を行えるラボ「Network Connect Lab」を開設し、報道関係者に公開した。

  • 「Network Connect Lab」入口

  • 「Network Connect Lab」検証スペース

「Network Connect Lab」は、実験試験局免許を取得したローカル5Gの通信エリアであり、測定器などの設備も活用し、ソリューションや製品のシステム評価が可能な環境を提供する。5GやLTEを活用した検証や、高速・大容量の機能を検証するスループット測定など、顧客やパートナー企業が持ち込んだ機器やアプリケーションの動作検証を行うスペースも提供する。同ラボで検証できる無線ネットワークは、ローカル5G、2種類のプライベートLTE(自営等BWAとsXGP)、Wi-Fiなど(2021年6月時点)。

  • 「Network Connect Lab」の実証環境

「Network Connect Labを通じて、ネットワークがボトルネックになってデジタルトランスフォーメーション(DX)が進まない日本のあらゆる現場に、無線ネットワークを提供していきたい」と、パナソニックシステムソリューションズ ジャパン取締役専務執行役員CTOの高嶋靖彦は語った。

  • パナソニックシステムソリューションズ ジャパン取締役専務執行役員CTOの高嶋靖彦

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具体的には、ローカル5Gによるロボットアームの遠隔操作や、変動の激しい無線環境下での映像伝送ソリューションといったデモ環境に加えて、複数の基地局、移動局の通信状態をモデル化し、システム全体の機能や性能の可視化を可能にする無線システムシミュレータが活用できる。

ロボットアームの遠隔操作では、管理棟と工場間をローカル5Gで接続し、リアルタイムで映像を確認しながら遠隔操作できることを確認できる。このロボットアームは、物体をつかむ感触を再現することが可能で、遠隔からでも材質を確認することが可能だ。

  • ローカル5Gによるロボットアームの遠隔操作(工場側)

  • ローカル5Gによるロボットアームの遠隔操作(制御を行う管理棟側)

変動の激しい無線環境として、スタジアムにおける映像制作業務が挙げられる。現状のスタジアムでは、スタジアム内の各システム(撮影、制作、配信)を専用ケーブルで1:1接続している場合が多い。これにより、映像配信先の増加に伴い配線も増加することや(一般的には600本~1000本のケーブル)、設置場所の制限、省人化・分散運用に対応できないといったことが課題となっている。

  • スタジアムにおける映像制作業務の現状

同ラボでは、このような環境のスタジアムを想定して、ローカル5Gで無線化するデモを公開している。スタジアム内に5Gコアネットワークを構築し、各機器との接続を無線化する。これにより、自由な機器設定や、ロケーションフリーな分散オペレーションが可能になる。スタジアム内にあったスタジオが、リモートスタジオに対応できるようになり、映像配信業界の働き方改革にもつながる。

  • ローカル5Gによりスタジアム内を無線化。スタジオもリモート対応可能に

  • 「Network Connect Lab」内の検証スペース

また、同ラボで利用できる無線システムシミュレータは、パナソニック独自開発のシステムレベルでのシミュレータ。電波伝搬解析に加えて、スループット解析など無線システム評価シミュレーションが行える。

また、スーパーコンピュータによる高速演算処理により大規模解析にも対応しており、アンテナなど企業の設置環境に合わせた条件下でシミュレーションが可能。具体的には、エリア半径や不感地帯、インフラコスト、最適な通信方式などの見極めが行えるとしている。

  • システムレベルのシミュレーション

パナソニックは2021年2月17日、新たな事業「現場マルチネットワークサービス」を開始している。

同事業では、ネットワーク、ソフトウェア、エッジデバイスなどのソリューション群を課題に合わせて提案し、導入支援・構築・運用サポートまでを一体的に提供するサービスを展開する。2022年4月よりローカル5G、プライベートLTE、Wi-Fi6など複数の無線ネットワークを1つの5Gコアで制御し、統合的に提供するビジネスモデルを掲げており、その技術開発も進めていく方針だ。

また同事業においては、ネットワークシステムのみでなく、5G含む各種無線ネットワークを受信できるエッジデバイスや、それらを制御する業界別アプリケーションも併せて提供している。

  • 5G対応のレッツノート(CF-FV1)

パナソニックは、新たな共創の場「Network Connect Lab」を通じて、現場のプロセスのイノベーションを加速させていくとともに、同ラボを展開させていくために、年内に10社とのパートナー契約を目指す。