世界規模の会計コンサルティング企業であるプライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers:PwC)が公開した世界の株式市場に上場された企業の中で時価総額上位100社を選んだリストである「2021年世界時価総額ランキングトップ100社」(2021年3月31日基準)によると、世界最大の時価総額企業はAppleで、その額は前年比84%増の2兆510億ドルとなっている。ちなみに同社は自社製品向けに特化したファブレスIC設計会社でもあり、実際の製造を担うTSMCにとっては最大顧客の1社となっている。

半導体専業企業のトップはTSMCで、その時価総額は同2.3倍の5340億ドルと驚異的な伸びを示し、ランキングの11位に入ってきた。同社は、製造受託専業であるため、半導体企業の売上高ランキングに掲載されないことも多いことから、時価総額がIntelの2倍以上にも達しているにも関わらずその企業価値を過小評価している向きがある。特にプロセスの微細化競争で競合するSamsung ElectronicsやIntelに差をつけて独り勝ち状態にあり、3次元実装にも注力している。米国政府の要請でアリゾナ州に半導体ファブの建設を始めており、EU政府や日本政府からも工場誘致を受けているが、十分な顧客がおらず、経済合理性がないため、今のところ、首を縦に振っていない。

TSMCに次いでSamsungが、時価総額4310億ドルの15位に入っている。韓国企業の中でランキングトップ100社に入っているのは同社のみだが、TSMCとの時価総額の差は2020年版よりも広がる結果となった(2020年の両社の時価総額の差は10億ドル程度であった。また、2019年版ではSamsungがTSMCを107億ドル以上リードしていた)。この時価総額の逆転劇はSamsung経営トップの収監が影響しているとの見方がある。

時価総額を1年で倍増させIntelを抜いたことで話題になったNVIDIAの順位は24位と、2020年版の41位から一気にジャンプアップしてきた。GPUに加えてCPUでもIntelの強力なライバルになろうとしており、Armをソフトバンクから買収する契約を済ませているが、買収の実施には米国政府が難色を示している。

最近業績がさえないIntelの順位は30位で、2020年版の22位から順位を落とした。過去一年間の時価総額増加率は13%ほどでトップ100企業の平均を大きく下回っている。新たなCEOを迎えて業績の立て直しが期待されているが、AMDやNVIDIAなど、ライバルの台頭で前途は多難である。

このほか、半導体装置業界からはASMLが時価総額をTSMC同様に前年比2.3倍と急成長させ、2020年版の71位から31位へと一気に駆け上がった。1台200億円近いEUV露光装置で世界市場を独占しており、かつ台湾・韓国の先進半導体メーカーが奪い合う状態となっていることに加え、Intelも今後、大量活用をもくろんでいることから、今後も売上高ならびに企業価値がさらに上昇することが期待されている。

日本最大の時価総額企業はトヨタ自動車で32位となっている。半導体在庫を極限まで減らすJust-in-Timeが災いして、同社のみならず世界の自動車業界全体が半導体不足のあおりを受けて工場の一時閉鎖に追い込まれている。トヨタは、上記で記したNVIDIAやASMLに抜かれる形で順位を昨年から3つ落としている。日本企業としてはトヨタのほか、ソフトバンクならびにソニーグループの2社がランキングトップ100入りを果たしている。

  • 世界企業時価総額ランキングトップ100

    2021年版の世界企業時価総額ランキングトップ100における半導体関連企業リスト(比較のため、日本から選ばれた3社も記載) (PricewaterhouseCoopersの発表データをもとに著者が作成、増減値は著者の計算によるもの)

なお2021年版のトップ100企業の時価総額を合算すると前年比48%増の31兆7400億ドルとなり、PwCでは、今回の発表に際し、「2021年版は新型コロナにともなう景気低迷から回復しただけでなく、歴史的な最高記録を更新した」ことを明らかにしている。