米国で自動車を販売するメーカーの9割以上が参加する「米国自動車イノベーション協会(AAI:Alliance for Automotive Innovation)」は4月6日(米国時間)、供給不足に陥っている車載半導体の安定供給に向け、米国政府の支援が必要だとする意見書を米商務省に提出したことを明らかにし、その内容を公開した。

意見書ではまず、車載半導体不足の経過と現状を以下のように分析している。

「自動車産業が直面している半導体不足は、前例がない大変な状況にある。新型コロナウイルス感染症の発生初期に北米のすべての製造工場での8週間のシャットダウン、さらには世界中で同様のシャットダウンが起こっている間に、半導体ファウンドリは、その生産能力を車載向けからコンシューマ向け再割り当てをしてしまった。その後、自動車の生産は再開されたが、車載半導体へのファウンドリの生産能力の再割り当ては遅々として進まず、車載半導体の供給不足が続いている。

テキサス州で起こった寒波に起因する停電による車載半導体工場の操業停止、日本など海外で起こった半導体工場の火災、米国西海岸の港湾で起きている貨物の積み下ろしの遅滞、そして座礁事故によるスエズ運河の一時閉鎖による世界貿易への影響などのトラブルも相まって、車載半導体の調達が、これまで以上に困難になっており、その結果、多くの自動車メーカーで生産を停止することを余儀なくされている。

調査の結果、2021年の予測される自動車減産は127万台にもなる可能性があることが明らかになった。これは、2020年の米国での自動車生産の15%に相当する数である。

車載半導体がどのくらいの期間不足するか、会員企業の間でのコンセンサスはないが、複数社が6か月にわたって不足が続くとみている」

こうした現状を踏まえ、AAIでは現状の半導体サプライチェーンでは、生産能力の限界も併せ、今回のような事態を回避することが難しいとし、以下のように供給リスクを抑えるために、米国政府の支援が必要であると訴えている。

「増大する車載半導体需要に対応するために、米国内における半導体生産能力を拡大する必要がある。連邦議会で成立したCHIPS for America Act(米国半導体製造を強化する法案)の適用は、車載半導体供給の回復力を高めるために有効である。同法の資金の少なくとも一部を車載半導体を製造する新しい半導体工場建設に使い、強固なサプライチェーンの構築に充てることを要請する」

なお、AAIにはゼネラル・モーターズ(GM)やトヨタ自動車、フォルクスワーゲン(VW)など世界の主要自動車メーカーが加盟しているほか、デンソーやボッシュ、パナソニック、Intelなどといった電装メーカーや半導体メーカーなども加盟している。