物言う株主として知られる米ヘッジファンドThird PointがIntelに、製造と設計を両方手掛けるIDMモデルが本当に適切か否か、事業を抜本的に見直し、速やかに行動に移すように求めたと、ロイターやWall Street Journalなど複数の米国メディアが2020年末に相次いで報じた。
IntelのBob Swan CEOは、2021年1月にCPUの外部製造委託の可否の最終判断を下すとすでに発表しているが、Third Pointの改革要求で大規模な事業再編が促進する可能性が出てきたと見る向きが多い。なお、Third Pointは、今回の懸念についてIntelが早急な対応を渋る場合、次回のIntelの株主総会で独自の取締役候補を立てるとして圧力をかけている。
半導体業界で存在感を失いつつあるIntel
これらの報道によれば、Third PointのDaniel Loeb CEOはIntelのOmar Ishrak会長に宛てて、Intelにとっての喫緊の課題が「Intelトップの現状維持方針で士気を失った多くの有能な半導体設計技術者が離職していることに歯止めをかけること」であるとしたうえで、「微細化の優位性をTSMCに奪われてしまったほか、主力のパソコンやデータセンター向けCPUでAMDにシェアを奪われており、かつAI分野ではNVIDIAが支配的な地位を確保しつつあり、Intelの存在感はほとんどない」とつづった書簡を送ったと伝えられている。
Loeb氏はIntelに対し、IDMモデルを維持すべきかやめるべきか検討することや、過去の買収で失敗したとみられる案件についての売却の可能性を検討するよう求めており、設計部門と製造部門の切り離しについては、製造部門の他社との合弁会社設立も含まれるという。
AppleやMicrosoft、AmazonといったIntelの大口顧客がもはやIntelに頼らずに、半導体を自社で開発し、TSMCなどのファウンドリに製造委託していることにも言及しており、このままではIntel離れが進んでしまうので、これに歯止めをかけるように新たな改善策を早急の立てて実行に移す必要があるとしている。
IDMからの脱却か? 岐路に立つIntel
実のところ、Intelの歩留まり低迷は10nmプロセスでも長年の問題として存在しており、新製品の出荷計画がこの数年遅れがちとなっていた。その間、競合のAMDは、製造委託先を先端プロセスで先頭を走っていたTSMCに切り替えることで、高いパフォーマンスを発揮できるCPUの開発に成功。Intelのシェアを奪う体制を整えてきた。またNVIDIAもArmを買収し、CPUへの進出も狙っており、こちらもTSMCを活用する形でIntelを超える性能の製品を出してくる可能性がある。
Intelは、CPUのプロセス開発そのものはオレゴン州の開発試作工場で継続するものの量産はTSMCに製造委託するとの判断を1月下旬の2020年第4四半期業績発表の場で明らかにすると米国の半導体業界関係者は見ているが、その決断は同社が1980年代にDRAMビジネスからの撤退を決断して以来の同社の歴史を大きく塗り替えるかもしれない歴史的なものとなる可能性がある。