Dolby Atmos/DTS:X音声出力はディスクのみ対応。やってみると……
無事にPS5から4K HDR出力できるようになったところで、ようやくPS5のディスクプレーヤーを試してみた。
筆者は自宅のテレビに、パナソニックのサウンドバー「SC-HTB01」をつないで使っている。SC-HTB01は実売約35,400円(税込)と手ごろな価格帯ながら、さまざまなBDソフトやUHD BDソフトで採用されている立体音響「Dolby Atmos」、「DTS:X」に加えて、バーチャルサラウンドのDTS Virtual:Xにフル対応。4K/HDR映像のパススルーもできるので使い勝手が良く、気に入っている。
ちなみにDolby AtmosとDTS:Xは、どちらも音の横方向(前後左右)の広がりを再現するだけでなく、高さ方向の音もプラスすることで臨場感ある音場を作れるサラウンドフォーマットのこと。従来の5.1chなどチャンネルベースのサラウンドと異なり、再生環境に応じてリアルタイム演算で音場を作って出力する仕組みを採用しており、複数のスピーカー間(チャンネル間)の音のつながりが向上している。
SIEは、PS5発売を前に、「徹底解説! PlayStation 5」と題したQ&A形式の記事をPlayStation Blogで公開している。その中で対応するDolbyやDTSなどのオーディオフォーマットを列挙しているが、Dolby AtmosやDTS:Xについては触れられていなかった。SIEに問い合わせたところ、(Atmos/DTS:X音声の)BDソフトやUHD BDソフトは「機器側が対応していれば再生できる」という回答だった。
ただ、筆者の環境(PS5と55X920、SC-HTB01の組み合わせ)では、手持ちのAtmos/DTS:X音声のBDソフトやUHD BDソフトはいずれも下位互換のDolby TrueHDやDTS-HD Master Audioの音声としてデコードされた。プレーヤー画面にDolby TrueHDやDTS-HD Master Audioと表示され、Atmos/DTS:Xのマークは出ない。また、Netflixで配信されている『攻殻機動隊 SAC_2045』は対応機器であればAtmos音声を楽しめるのだが、PS5のNetflixアプリではAtmosではなく、5.1chサラウンド音声として再生された。
ということで筆者宅では残念ながら、少なくとも発売時点のPS5ではディスク・ストリーミングアプリともにAtmos/DTS:X音声を楽しめないことが分かった。ディスクについては対応機器なら再生できると明言されているので、自宅の機材をPS5も使えそうなAVアンプなどに入れ替えることを検討しようと思う。ストリーミングアプリについては今後の機能強化に期待しているが、筆者宅ではテレビとサウンドバーだけでもNetflixのAtmosコンテンツを楽しめるので、今のところはわざわざPS5から見なくても良さそうだ。
ちなみに、2020年3月にオンライン配信されたSIEのマーク・サーニー氏による講演「Road to PS5」では、将来的にテレビ内蔵スピーカーでバーチャルサラウンド再生を実現する計画があると説明されている。これについてSIEに現状をたずねたところ、「PS5の発売時は利用できないが、将来的な対応に向けて開発を進めている」とのことだった。こちらも引き続き続報を楽しみに待ちたい。
筆者の環境では、映像コンテンツをAtmos/DTS:Xによる理想的な立体音響で楽しめないことが判明してしまったが、一方でPS5の大きな特徴である、独自の「Tempest 3Dオーディオ」は素晴らしい。手持ちの有線ヘッドホン(フォステクス「T50RPmk3n」)をDualSense ワイヤレスコントローラーにつなぐだけで楽しめた。
PS5にプリインストールされているアクションゲーム『ASTRO's PLAYROOM』で試したところ、キャラクターをフィールド上で走らせると、周囲でわちゃわちゃ遊んでいる仲間(?)の声や空間ごとのざわめき、効果音や反響音が聞こえてくる“音の方向感”が目まぐるしく変化。動かしているキャラの斜め後ろの音なども、首筋の後ろのほうで本当にそこで鳴っているかのような体験ができた。(当然ながら)首を左右に振っても、音の出ている位置が頭の向きに応じて変化したり追従したりはせず、あくまでも目の前の画面に対しての位置に固定されている。だが、バーチャルだとは頭では分かっていても、実際に体験してみるとかなり新鮮だ。
ゲーム内のキャラクターの足元の感覚(サラサラした砂や滑りやすい氷、金属っぽい硬い場所)などを細かな振動でリアルに伝える、DualSense ワイヤレスコントローラーの振動効果と相まって「ゲーム内の世界にいるかのような感覚」が楽しめた。何よりも、『ASTRO's PLAYROOM』は歴代プレステファンにとってはニヤッとさせられる仕掛けやゲーム内特典が盛り沢山で、無料のプリインゲームながらあなどれない面白さがあると感じた。まだ他のPS5ゲームでTempest 3Dオーディオをじっくり試せたわけではないが、これからどんな体験ができるのかワクワクさせられる。
PS5もBluetoothオーディオ非対応。市販アダプターを試した
ところでTempest 3Dオーディオといえば、この音声のためにチューニングされた「PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット」がPS5用の周辺機器としてSIEから発売されており、DualSense ワイヤレスコントローラーにケーブルをつながなくてもゲームや映像コンテンツを楽しめる。ゲーム用ヘッドホンとしては比較的手ごろな価格(税別9,980円)で、おサイフにも優しい。
しかし筆者はすでにいくつかヘッドホンやイヤホンを持っており、新たにヘッドセットを増やすよりも、手持ちの製品を活かしたいと考えた。PS5はBluetooth機能を内蔵しているが、あくまでコントローラーやリモコンなどの入力機器用で、PS4と同様にBluetoothオーディオ機器は使えない。そこで試しに、クリエイティブメディア製のBluetoothアダプター「BT-W3」(直販価格:税別3,980円)をPS5につなぎ、ShureのBluetoothケーブル「RMCE-BT2」+「SE215 SPE」の組み合わせで“ワイヤレスゲーミング”を試してみた。
BT-W3はUSB-C直結タイプのBluetoothアダプターで、低遅延なaptX Low Latency(aptX LL)、高音質なaptX HDコーデックにも対応している。メーカーがPS5を対象機器として謳っているわけではないが、PS5前面のUSB-Cに直結してみると、特に設定することもなくあっさり使えた。短時間だがaptX LLコーデックで試してみた限りでは、音がズレることもなく快適だ。ゲーム中にケーブルがごちゃつくのはイヤだ、という人は試してみてほしい。