Samsung Electronicsから登場したAndroidスマートフォンのフラッグシップモデル「Galaxy Note20」シリーズ。日本では「Galaxy Note20 Ultra 5G」がKDDI(au)から発売となりました。

ここではGalaxy Note20 Ultra 5G(以下、Galaxy Note20)について、新しくなった「Sペン」のレビューをお届けします。なお、今回試用したのはグローバル版の端末です。SペンはBluetoothを内蔵しているため、技適の特例制度を用いています。

  • Sペンで快適な手書き入力が可能なGalaxy Note20 Ultra 5G

Galaxy Noteシリーズは、大画面にプラスして、付属ペンによる手書き機能を備えたスマートフォン。すでに10世代を数えて定番となっていますが、現在でもスマートフォンとしては数少ないペン対応デバイスです。

  • 大型のディスプレイを搭載し、大画面スマートフォンとしても快適に使えるハイエンドモデル

ワコムの技術を用いたSペンは、精度が高く上々の書き味。従来は電力を使わない仕様でしたが、最近はBluetooth LEに対応しており、単なるペン以上の機能を搭載しています。Sペンの充電は、Galaxy Note20に差し込むことで自動的に行われます。バッテリー切れが問題になることはまずないでしょう。

  • Sペンを使って手書きのテキスト入力が可能

  • Sペンの挿入位置は左下に変更されました(従来は右下)

Sペンのサイズや形状は、前モデルと特に変更はありません。本体カラーに合わせたカラーリングで一体感があります。長さはこれまで通りで、細身のSペンは、通常のボールペンなどと比べて決して書きやすいものではありませんが、慣れれば普通のペンと同じように書けます。

  • 前モデルと同様、細身のSペンは持ちやすいとはいえませんが、ある程度は普通のペンのように書けます

Galaxy Note20では、Sペンの収納位置が本体下部の右側から左側に移動しました。前モデルからボタン配置の変更、カメラの大型化などが影響したのでしょう。左手で持った場合に、手のひらがペン収納位置に近くなっています。

「左手でスマホを持って右手の親指でSペンを押して取り出す」という動作は、Sペンの収納場所が変わってもそれほど違和感はないのですが、使い終わったあとにSペンをしまうとき、左側だと少し苦しい印象があります。

これは筆者の事情なのですが、前モデルのGalaxy Note10は取材にもかなり活躍。「取材先で人の話を聞き、Sペンでメモを取り、ペンを収納して写真撮影。移動して次の人に話を聞いてメモを取る」といったように、頻繁にSペンの抜き差しが発生することがあります。ストラップで首にかけて使い(Sペンでメモを取り)、手を離すとスマホの底部が上を向いて首からぶら下がるので、Sペンをきちんと収納しなくても落下しないため、多少は雑でもすばやくSペンを出し入れできるのです。Galaxy Note20では、慣れないうちはSペンを取り落としてしまうような心配を感じました。

このようなシーンでなければ、lSペンの収納場所が変わったことに支障はなく、少し使っていれば慣れそうではあります。

Sペン自体の機能はそれほど変わっていません。以前との大きな違いは、遅延速度が9msにまで短縮されたことでしょう。120Hzのリフレッシュレートを持つGalaxy Note20のディスプレイと合わせ技で実現したようですが、実際に使ってみてそこまで大きな違いは感じられませんでした。

ただ、従来モデルと書き比べると、Galaxy Note20のほうが即座に文字が書ける印象です。単に文字を書くだけだと大きな違いはないかもしれませんが、精度向上は悪いことではありません。

【動画】Galaxy Note20と、Galaxy Note10での書き味の違い。気のせいかもしれませんが、Galaxy Note20のほうが遅延が短くなっているようにも感じます

Sペンを使った機能としては、従来と同じくSペンを抜くと同時にランチャーを表示するエアコマンドを搭載。Sペンを使うときに決まったアプリを使うなら、ランチャーにアプリを登録しておくと便利です。「キャプチャ手書き」「ライブメッセージ」「AR手書き」といった、手書きとコミュニケーションを組み合わせるようなツールは従来通り。Sペンの先にあるテキストを翻訳したり、拡大したり、アプリを最大化・最小化するといった機能も、これまで通りです。

  • Sペンを引き抜くと自動的に立ち上がるランチャー。これまではスマホ本体の右下からSを取り出すと、画面右下からランチャーが立ち上がる……というUIは自然だったのですが、Galaxy Note20では左下にSペンを収納するようになり、ちょっとちぐはぐな印象もあります

Sペンを活用するツールとしてはノートアプリ「Samsung Note」(日本ではGalaxy Note)がアップデートされています。新たに、ノートをPDFファイルとして作成したり、既存のPDFファイルの読み込みに対応しました。PDFに書き込みできるようになったのは便利な点です。PDFに注釈を入れたり、サインを手書きで書き込んだりと、気軽にできます。

  • Galaxy Noteで音声を録音しながらメモを取ると、あとから再生したときに、その場面のメモが濃い色に。メモを取っていたときの音声かすぐに分かります。任意のテキストをタッチすると、音声がその場所に頭出しされます。これは想像以上に便利。なお、前機種のGalaxy Note10でも、アプリのアップデートで同じ機能が使えます

新たに「エアアクション」機能が追加されました。従来、対応アプリでしか動作しなかったSペンのエアアクション機能ですが、他のアプリでもボタンを押しながらペンを振って操作できるようになりました。使えるのは、戻る、ホーム、履歴、スマート選択、キャプチャ手書きといった機能で、それぞれ自分でカスタマイズも可能です。

  • 設定にあるエアアクション。アプリを問わず空中でペンを振るだけで操作できます

【動画】エアアクションを操作。少し失敗もありますが、おおむね正確に動作。シーンによっては十分使いやすいでしょう

自由度はあまり高くはないのですが、離れたところからでもSペンだけでそれなりに操作できるというのは強みでしょう。従来通り、カメラを起動して遠隔からシャッターを切る……というのも便利です。

  • Sペンのボタン。相変わらず押しやすいとはいえませんが、消しゴム機能としても利用できます

Galaxy Note20のSペンは、全体的に完成度が高くなりました。AppleのiPadという強力なライバルがいるなかで、ペンとしての性能向上が追求されているのは歓迎すべき点です(Galaxy Note20と比べると、iPadは大画面のタブレットなので、ライバルとは呼べないかもしれませんが)。

  • Sペンの各種機能。「複数のSペンを許可」をオンにしておくと、別のSペンも利用できるようになります。一般的なペンサイズのSペンもあるので(オプション)、長文を書くときはそちらを使うと快適です

  • Sペンを長押ししてカメラ起動といった共通操作も用意。一部のアプリには特別な設定もあります。アプリの追加もできればなお良かったところです

Sペンは、Galaxy Noteシリーズの生命線でもあります。スマートフォンにペンは必須ではないかもしれませんが、やはりあると便利。今後も継続した強化を期待したい製品です。