既報の通りNTT(日本電信電話)、NTTドコモは29日、NTTによるドコモ完全子会社化について、共同記者会見を実施しました。本稿では質疑応答のやりとりを中心に、会見の内容をおさらいしていきます。

  • オンライン会見にのぞむ、NTT代表取締役社長の澤田純氏(左)とNTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏(右)

    オンライン会見にのぞむ、NTT代表取締役社長の澤田純氏(左)とNTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏(右)

吉澤社長「ドコモが自ら変革するとき」

会見に登壇したNTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏は、現在の状況を次のように説明しました。

「通信事業では(楽天モバイルの)新規参入、(ワイモバイルやUQ mobileなど)サブブランドの攻勢により競争が厳しさを増し、非通信事業では異業種プレイヤーとの競争が加速しています。新型コロナウイルスの感染拡大により、世の中が急速にリモートにシフトし、DX(デジタル・トランスフォーメーション)も加速している状況。お客様のニーズは多様化、高度化、複雑化しています」。

そして来たるべき5G時代においても、さらにニーズが多様化し、モバイルが支える領域が拡大していくと分析します。

そのうえで「いまだからこそドコモが自ら変革し、さらなる成長を実現していく。すべてのお客様のフロントとして、ニーズにトータルで応える存在となり、使いやすいサービスの創出、社会課題の解決、ICT産業全体の発展、国際競争力の向上への貢献を目指していきます」と抱負を語りました。

  • 今回の完全子会社化により、ドコモはNTTグループの中核を担い、すべての顧客のフロントとしてトータルサービスを提供していく考え

NTTの澤田社長は「NTTグループの中核として、各社、例えばコミュニケーションズ、コムウェアが持つアセット、リソースを活用してドコモの持つ事業基盤を強化します。そのための最短、かつ確実な方法が完全子会社化であると判断しました」と、完全子会社化の理由を語りました。

  • NTTの中期的な成長・発展に向けた施策

  • NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアをNTTドコモに移管して、グループ会社と連携強化する施策も視野に入れている。ちなみにNTTデータを完全子会社する考えはない、と明言

会見では、記者らの質問に澤田社長、吉澤社長が回答していきました。主な内容をまとめて紹介します。

[質疑1]通信料値下げ要請との関連は?

菅総理大臣の掲げる携帯電話の通信料金の値下げ施策と、今回の完全子会社化に関連はあるのか、という質問に、澤田社長は次のように答えました。

「政府に言われたからということではなくて、お客様に良いサービスを出す、ということはこれまでも積極的に取り組んできました。今回の取り組みは、値下げ議論とはまったく独立したもの。4月から検討に入っており、直接的なリンクはありません。ただし、これをやることでドコモは強くなる。その結果として、値下げの余力は当然出てくると思います。なおドコモは昨年(2019年)6月に、ボリュームゾーンで4割の値下げを実施しました。その影響は今年度で2,500億円におよびます。お客様の要望のひとつとしても、値下げを検討していくということです」。

吉澤社長は「本件と、値下げ議論は結びついていません。サービスの創出力を強化する、ネットワークの競争力を強化する。その結果としてニーズにあったコミュニケーションサービスを出したい、そして低廉なサービスを実現したい、という思いがあります。これまでやってきた施策も継続して、しっかりとお客様に還元しつつ、企業価値も継続的に向上していくという考え方です」。

[質疑2]完全子会社化の話はいつから?

今回の完全子会社化の話はいつから始まったのか、という質問に澤田社長は「ドコモはシェアは大きいが、収入利益はもう3番手に落ちた。ドコモを強化するため、完全子会社化するのはどうだろうと、そんな話を始めたのは4月の後半です」と回答しました。

どのように話を受け止めたのか、との質問に、吉澤社長は次のように回答しました。

「5Gがスタートし、通信事業者以外のプラットフォーマーが競争の真っ只中にある。ドコモは5Gというモバイルの視点を強く持っていますが、もっと視点を広げていかないと競争に勝てない状況になったと判断しました。そうした中、完全子会社化の話が春に出た。こちらには、6月に正式に申し入れがありました」。