2020年8月18日時点の半導体企業の時価総額だが、2020年7月にトップに立ったTSMCに次いで、2位にNVIDIAが浮上。これまで2位だったSamsung Electronicsは3位に順位を落としたと複数の韓国メディアが報じている。

微細化で独り勝ちのTSMC、AI分野で急成長するNVIDIA

同日時点の株価は、Samsungも年初比で6%増と上昇しているが、NVIDIAは同104%という急騰で一気に追い抜いたこととなる。TSMCは、7月にIntelが自社7nmプロセスの開発遅延が明らかになり、同社のBob Swan CEOが外部への製造委託の可能性を示唆した途端、Intelが一気に株価を落とした一方で、その受け皿との期待から株価を急騰させ、あっという間にIntelの約2倍に跳ね上がった。そこから約1か月で、今度はNVIDIAが躍進を果たし、Samsungを追い抜いたこととなる。ちなみにSamsungの2020年第1四半期の売上高はNVIDIAのそれと比べて15倍ほどである。

Samsungは2019年に2030年までに133兆ウォン(約12兆円)を投資して、半導体メモリに続く事業の柱として、ファウンドリを含むシステム半導体分野でも世界1位になるという目標を掲げた。韓国政府の脱メモリ・システムLSI強化戦略に沿った方針である。しかし、ファウンドリビジネスでは、事業規模、技術いずれもで先行するTSMCとの差を縮めることは容易でないことはもちろんのこと、ファブレス企業のNVIDIAにさえ時価総額を抜かれたことに韓国メディアが危惧を示す事態となっている。例えば朝鮮日報は「将来のシステムLSI市場を左右すると思われるクラウドサービスとIoT、自動運転などの新技術に注目が集まる中、Samsungはこれらの成長分野に対する十分なビジョンを見せることができていない」との分析を載せている。営業利益率の高いDRAM、NANDで世界トップシェアを有するSamsungが、メモリメーカーから脱却し、新分野に賭けることはそう簡単ではなさそうである。

TeslaもSamsungからTSMCに乗り換えの可能性

さらに自動走行分野でも注目を集めるTelsaがTSMCとの連携を強化することで、Samsungの立場が弱まっていく可能性もでてきた。Samsungは現在、Tesla Model3などで利用される統合CPUシステム「ハードウェア3.0」向けの主要半導体を受託生産しているが、Teslaは次世代バージョン「ハードウェア4.0」をTSMCと共同開発しており、今後、TeslaのSamsungへの注文数が減少していくことが考えられるためだ。

ファウンドリ業界で10nmプロセス以下の超微細化を実現できているのは現在、TSMCとSamsungの2社だけだが、Samsungは5nm EUVプロセスへの移行で製造歩留まり上にトラブルを抱えているため、Qualcommも先端プロセスを採用する製品の製造委託先をSamsungからTSMCに変更したと一部のメディアが伝えている。この件について米韓の当事者たちはコメントを出していないので真相は不明だが、事実だとすればTSMCの業界に占める存在感は今後、さらに増していくことになるだろう。