フルサイズミラーレスブームのなか、APS-Cミラーレスと中判ミラーレスの2本柱で固定ファンを獲得している富士フイルムのX/GFXシリーズ。現在の売れ筋は、一眼レフスタイルのボディを採用する主力モデル「X-T4」です。X-Tシリーズ初のボディ内手ブレ補正機構やバリアングル液晶の搭載など、ファン待望の改良を施したのが特徴ですが、Xシリーズをプライベートでも仕事でも愛用し続けてきた大浦カメラマンにとっては残念に感じる部分が少なからずあったようです。

  • ちょっとグラマラスになった「X-T4」。キーデバイスは先代X-T3と同じですが、センサーシフト方式の手ブレ補正機構が新たに備わりました。実売価格は、ボディ単体モデルが税込み22万円前後、標準ズームレンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」が付属するレンズキットが税込み29万円前後

バリアングル液晶への改良に納得できない写真ファンもいる

富士フイルムのXシステムは、APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載するミラーレスと、APS-Cセンサー搭載のコンパクトカメラで構成されています。いずれのカメラも、フィルムライクで高描写な絵づくりに加え、アナログ感覚の操作を多用しているのが特徴です。なかでも、“X-Tヒトケタ機”は、このシステムを代表するカメラであるとともに、各社のミラーレスのなかでも人気の高いシリーズとなっています。今回ピックアップする「X-T4」はその4世代目で、センサーシフト方式の手ブレ補正機構をX-Tヒトケタ機としては初めて備えたのが一番の注目点といえます。

まずは、いつものとおり外観を見ていきましょう。これまでとちょっと異なるのがボディシェイプです。初号機「X-T1」から先代「X-T3」まではほぼ同じシェイプでしたが、X-T4は一般にペンタ部と呼ばれるトップカバー凸部とその周辺の形状が異なります。横幅が拡大するとともに、見た目に低く感じるシェイプのため、重厚な印象を受けます。個人的な主観では、X-T3以前のほうがタイトに締まったボディシェイプでカメラ全体のバランスもよいように思えます。

  • X-T3(上)と正面を見比べると、いわゆるペンタ部が横に広がりシェイプが異なることが分かります。メーカーロゴもX-T4のほうがわずかに大きくなっています。ちなみに、ボディ幅はX-T4が2.1mm広い134.6mm、ボディ高はどちらも92.8mmです

グリップの張り出しもこれまでより大きくなり、カメラがホールドしやすくなったように感じます。ちなみに、ボディサイズはX-T3のW132.5×H92.8×D58.5mm(最薄部35.4mm)に対し、X-T4はW134.6×H92.8×D63.8mm(最薄部37.9mm)とわずかに大柄になったことが数字的に見て取れます。質量は、X-T3が539g(バッテリー、SDカード含む)なのに対し、68g重い607g(同)となり、Xシリーズのハイエンドモデル「X-H1」の質量673g(同)に対するアドバンテージは薄れてしまいました。手ブレ補正機構の搭載と、以下で触れるバリアングルタイプとなった液晶モニターが大きく影響しているものと思われます。

  • これまでに比べて大きく前面に張り出したグリップ。指に馴染みやすい形状で、しっかりとカメラを構えられます

  • フォーカスモード切り替えレバーはこれまでどおり。素早くAF-S/AF-C/M(マニュアル)を切り替えられ、とても便利に思える部分です

バリアングル液晶モニターですが、これは映像(動画撮影)関係での使われ方を考慮した改良といえます。静止画撮影に限っていえば、自撮りする機会のある人には便利ですが、通常のハイアングル撮影やローアングル撮影など液晶モニターを上下方向に動かして撮影する場合は、液晶モニターが光軸からずれた位置となるため、正直使い勝手がよいとはいいがたいと感じます。従来のチルトタイプは、液晶モニターを上下方向に向けたときでも光軸とほぼ同じ位置となるほか、右方向にも振ることが可能で、縦位置撮影の場合も便利だっただけに、写真撮影を楽しむ者から見ればこのバリアングルタイプ化は重量増となることも含めて意見の分かれるところでしょう。なお、パネルはタッチパネル付きの3インチ162万ドットと、X-T3から変更はありません。

  • 液晶モニターはチルトタイプからバリアングルタイプに一新。静止画撮影でも自撮りのときは便利ですが、ローアングルやハイアングル撮影時では、チルトタイプに比べ光軸から大きく離れるため、アングルが調整しにくく感じることも少なくありません

コマンドダイヤルは伝統のプッシュ機能をなくしてほしい

操作部材に関しての注目点は、静止画/動画の切り替えダイヤルとリアコマンドダイヤルです。

前者はシャッタースピードダイヤルと同軸にあり、先代モデルまでは測光モードを選択する測光ダイヤルでした。X-T4では、その名のとおり静止画(STILL)と動画(MOVIE)の切り替えを行うダイヤルとなり、追い出されることとなった測光モードの選択は撮影メニューの中に入ってしまい、瞬時に選択できなくなりました。こちらもバリアングルタイプの液晶モニターと同様、動画撮影に重きを置いた結果といえます。なお、MOVIEにセットするとメニュー画面とクイック(Q)メニューが動画専用の内容に切り変わるようになり、動画撮影では便利に思えました。

  • シャッタースピードダイヤルと同軸にあるダイヤルは、測光モードを選択する測光ダイヤルから静止画/動画切換ダイヤルに変わりました。リアコマンドダイヤルはボディから飛び出した部分が大きくなり操作感は向上していますが、プッシュ式のためフニャフニャと節度に欠けた感じはこれまでと同じです

  • 瞳AFは先代モデル同様、ピントを合わせる目を右目と左目から選ぶことができます。瞳の捕捉性能や精度も高いので、人物撮影では積極的に活用したい機能です

  • 測光モードは撮影設定メニューから選択するようになりました。このモードを頻繁に切り換えることの多いユーザーはちょっと不便になりました

  • AF-C選択時に被写体の動きや状況に応じてピントの追従動作を細かく設定できるAF-Cカスタム設定も搭載されています。あらかじめ搭載されている設定は5つで、好みなどに応じてパラメーターを調整することも可能としています

リアコマンドダイヤルは、これまでよりもダイヤル部分がボディから出ており、右手親指で回しやすくなりました。ただし、このダイヤルは従来と同様のプッシュ式で、フニャッとした節度のない操作感もこれまで通り。メーカーの開発担当者は、ライブビュー画像の拡大縮小について、一度リアコマンドダイヤルをプッシュさせて操作させるのがベストと話しますが、むしろプッシュ機能を廃止してリアコマンドダイヤルをダイレクトに動かすだけで拡大縮小させるほうが直感的ですし、何よりあのフニャッとした感じがなくなってほしいと思います。同様のことは、同じプッシュ式のフロントコマンドダイヤルにも当てはまるので、メーカーには一考をお願いしたいところです。

  • 動体撮影などでは便利なAF-ONボタンが新たに備わるなど、カメラ背面の操作部材の機能は一部変更されています。フォーカスレバーの指の当たる部分はもう少し広いと操作しやすく感じられました

  • カメラを構えた右手親指だけでは操作しにくい露出補正ボタン。メーカー担当者曰く、あえて動かしにくいようにしているとのことでしたが、X-Pro3やX100Vのように右手親指だけでも操作できるようにしてほしく思えます

撮影の要となるイメージセンサーは、有効2610万画素の裏面照射型「X-Trans CMOS 4センサー」、同じく画像処理エンジンは「X-Processor 4」なります。いずれも、先般レビュー記事で紹介したレンズ一体型モデル「X100V」をはじめ、「X-Pro3」やX-T3などと同じ仕様で、第4世代デバイスと同社が謳うものです。変更がなかったのは、性能的に現時点で行き着くとこまで行き着いたものと考えてよいでしょう。

実際、APS-Cサイズながら階調再現性や高感度特性に不足を感じることはなく、さらに独自のカラーフィルター配列によりローパスフィルターレスでもモアレや偽色の発生を徹底的に抑えるなど、写りは評価できます。もちろん、富士フイルム独自のフィルムライクな絵づくりが楽しめるフィルムシミュレーションや、粒状感が得られるグレイン・エフェクトなども搭載されており、写りにスキはありません。

  • フィルムシミュレーションに新しい仕上がりの追加はありませんでした。しかしながら、それでも多彩な仕上がりが搭載されており、どれを選択すればよいか悩んでしまいそうです

  • カラークロームエフェクトは原色系の色に対し深みを与えるものです。飽和しそうな色に対し、階調を保持することができます。一見色が濃くなったように見えますが、彩度は上がってないのがミソ。X-T3でも搭載されています

  • カラークローム ブルーは青色のみ濃度を上げる機能です。PLフィルターでは空の青のほか、他の部分も強調されますが、本機能を使えば青い部分のみ効果が施せ、より印象的に仕上げることが可能です。X-Pro3などに搭載されています

AFは基本的に機能自体に変更ありませんが、アルゴリズムは一新されています。なかでも、コンティニュアスAFの合焦率や被写体追従性は向上しているとのことです。先代X-T3でもコンティニュアスAFの被写体捕捉性能が飛躍的にアップして注目を集めましたが、それをさらに押し進めたものといえます。実際に撮影した限りにおいてもAFに関するストレスは皆無で、合焦率も極めて高く感じられました。スポーツイベントや鉄道など、動体撮影でもミラーレスだからとためらう必要はまったくないでしょう。なお、フォーカスエリアの選択は、これまでと同じカメラ背面のフォーカスレバーで直感的に素早く行うことができます。

EVFもX-T3から変更はありません。といっても、369万ドットと高精細なものですので、不足を感じることはないでしょう。彩度をはじめ、明るさや色合いの調整ができるのもこれまで通りで、より仕上がりに近い色調や好みの色調にファインダーの表示が追い込めるのはうれしい部分です。さらに、カメラを横位置に構えたときと縦位置に構えたとき、表示がそれぞれに対応して変化するのも便利に思えます。Xシリーズは伝統的に、電子水準器機能は画面の中央部分を横切る線で表示するものですが、本モデルも例外ではありません。瞬間的にカメラの水平を確認できて分かりやすいため、風景やスナップなどの撮影では重宝すること請け合いです。

  • EVFはX-T3と同じ0.5型369万ドットとなります。アイカップはこれまでよりもわずかながら大きくなっています。アイピースに接眼した際、目の周囲から外光が入ってくる可能性も少なくなっています

動画性能やバッテリー撮影枚数は着実に進化

最後に、動画機能とバッテリーを見てみましょう。

動画記録はDCI4K60pおよび4K60pで、ビットレートも400Mbpsとしています。これはX-T3と同じですが、記録画質としては十分すぎるもので、高画質の動画撮影を楽しめます。さらにX-T4では、F-Logによる動画記録も可能としており、カラーグレーディングを伴う本格的な撮影を行うことも可能。また、フルHD240pのハイスピード動画撮影や電子式手ブレ補正機能の搭載などに加え、前述したバリアングル液晶や速やかに静止画モードと動画モードを切り替えられるダイヤルなど、動画撮影に関する機能はこれまでになく強化されています。

バッテリーは、これまでの「NP-W126S」から大型化した「NP-W235」となりました。容量も当然増しており、フル充電からの撮影可能枚数はX-T3が約390枚(CIPA基準での測定)であるのに対し、X-T4では約500枚(同)に、エコノミーモードと呼ぶ省電力モードでは約600枚(同)となりました。これまで、X-T3に限らずXシステムのカメラはバッテリーの持ちがお世辞にもよいとはいえませんでしたので、大いに嬉しい進化です。

  • バッテリーはNP-W235となり容量が拡大。それに合わせてフル充電からの持ちも向上しています。なお、ボディ内充電が可能なため、バッテリーチャージャーは付属していません

  • 使用メモリーカードはSD/SDHC/SDXCで、UHS-II対応としています。カードスロットはダブルスロットですが、下側がスロット1、上側がスロット2としています。間違えるユーザーもいそうです

  • 上からマイク端子、リモート端子、HDMIマイクロ端子(Type D)、USB端子(Type-C)となります

  • 従来と同じくストラップリングカバーが備わるストラップ取り付け部。X-T4ではストラップリング(三角環)に、ストラップを固定するためのプラスチックのリングが備わりました

先代X-T3の発売は2018年9月。本機は2020年4月発売ですので、モデルチェンジのタイミングは比較的早い部類に入ります(X-T3は今後も継続販売の予定)。その理由については、メーカーから直接教えてもらえませんでしたが、私感としては動画に関する機能の充実が大きいのではと思っています。おそらく、動画に軸足を置いたパナソニックのマイクロフォーサーズ機「LUMIX GH5」と同様の立ち位置に少しでも早く持っていきたい、という意図が強く働いたのではないでしょうか。

もちろん、センサーシフト方式の手ブレ補正機構は静止画撮影でも恩恵が受けられますし、写真愛好家のなかにはバリアングルモニターの好きな人や、動画撮影も楽しむ人がいるのも事実です。しかしながら、多くの写真愛好家にとって好ましく感じていたり、静止画撮影に適していると思える部分を変え、そして急いでリニューアルを行ったことは、写真を撮ることを楽しむ者として少々寂しく思えてしまいます。映像関係のユーザー比率がどの程度なのかは分かりませんが、ユーザー層の多くを占めると思われる写真愛好家にもう少し寄り添うカメラであってほしかったと思わずにはいられません。

次回の後編は実写編として、画質チェックや電子ビューファインダーのフィーリングなどを紹介します。