富士フイルムが、APS-Cミラーレスの新製品「FUJIFILM X-T4」を発表。Xシリーズのなかでは売れ筋のX-Tシリーズの最新モデルで、待望のボディ内手ブレ補正機構を搭載しつつ、動画まわりの機能を強化したのがおもなポイントです。歴代のX-Tシリーズを愛用している大浦カメラマンに、X-T4を手にした印象を語ってもらいました。

  • 歴代シリーズのなかでも最大級の改良を施してきたといえる、富士フイルムのAPS-Cミラーレス「X-T4」。4月の販売開始を前に、大浦カメラマンに印象を語ってもらった

待望のボディ内手ブレ補正、補正効果も期待以上

富士フイルムのAPS-Cミラーレス「FUJIFILM Xシリーズ」を代表する“X-Tヒト桁機”。その4世代目となる「X-T4」を発表早々触れる機会をいただいた。これまで、私は「X-T2」「X-T3」と愛用しており、しかも仕事でのメイン機として愛用しているので、この日が来るのを実に楽しみにしていたのである。ここでは、X-T4を触って感じたファーストインプレッションを思いつくままお届けする。

  • ブラックとシルバーの2色を用意するX-T4。予想実売価格は、ボディ単体モデルが税込み22万5000円前後、16-80mmの標準ズームレンズが付属するレンズキットが税込み29万円前後(ともにポイント10%)

まず、なんといっても嬉しく思えたのが、センサーシフト方式の手ブレ補正機構を内蔵したこと。トップエンドモデル「X-H1」にはすでに搭載されているが、このクラスもようやく夢が叶ったといえる。

驚かされたのは補正段数だ。使用するレンズによって異なるが、シャッター速度に換算して最高6.5段(!)もの補正効果が得られる。29本のXマウントレンズのうち18本でこの6.5段分の補正効果を実現しており、しかも単焦点レンズがその多くを占める。Xマウントレンズの魅力は単焦点レンズにあると思い込んでいる私のような写真愛好家にとって、たいへん心強く感じられる改良だ。

  • X-Tシリーズ初のボディ内手ブレ補正機構を搭載。補正効果も最大6.5段分相当と高い

  • X-T4の手ブレ補正ユニット(左)は、X-H1のユニット(右)と比べて大幅な小型軽量化がなされている

ただし、その分ボディはちょっと大型化している。手ブレ補正機構のユニット自体はX-H1のものよりもだいぶ小型化されているが、さすがに手ブレ補正を追加してもボディサイズは従来モデルと同じ、というわけにはいかなかったのだろう。ボディの幅および厚みは増し、重量も68g重くなっている。特に、ペンタ部はボディサイズが大きくなったことが一番よく分かる部分で、初号モデル「X-T1」からの適度なタイト感でバランスの取れたボディシェイプが崩れてしまったように思える。残念。

  • X-T3(奥)とX-T4(手前)。全体的なフォルムは従来モデルを受け継いでいるものの、サイズはX-T4がわずかに大きくなっている

シャッター機構関連の改良も見逃せない部分である。スピードモデルらしく連写は最高15コマ/秒と高速で、さらにファインダー画像の消失時間も短い。スポーツなどの動体撮影は当然だが、AEB(AEブラケット)撮影でも速やかに3コマの撮影が終了するため、風景やスナップ撮影でも便利に思えるはずだ。

さらに、個人的にはシャッター音にも注目したい。X-H1には及ばないものの、ノイズは小さめなのにキレがあり、撮影がとても心地よい。インタビューや対談、コンサートなど、シャッター音に気を使う必要のある撮影ではX-H1の代わりに使える仕上がりである。

キーデバイスは、有効2610万画素のX-Trans CMOS 4センサーと、画像処理エンジン「X-Processor 4」を採用。同社のいうところの“第4世代”で、X-T3や「X-Pro3」などの現行モデルと同じだ。X-T4のポイントはオートホワイトバランス。従来からのオートに加え、「ホワイト優先」と「雰囲気優先」から選べるようになった。特に「ホワイト優先」は、夜景撮影で濁りのないクリアな写りが期待できそうに思える。実写できるカメラが届いたら、いち早くトライアルしてみたい部分だ。

  • オートホワイトバランスは、新たに「ホワイト優先」と「雰囲気優先」の2種類が加わって3種類となった

新規格の大型バッテリーを採用したとなったことも忘れてはならない。単純比較となるが、従来の「NP-W126S」を使用するX-T3では、フル充電時の撮影可能枚数は約390枚(メーカー発表値)だったのに対し、X-T4では約500枚(同)、エコノミーモードと呼ばれる省電力モードの場合だと約600枚(同)まで向上している。従来のNP-W126Sを使用するXシリーズのミラーレスはバッテリーの持ちがよいとは言いがたかっただけに、こちらも大いに期待できるものである。もっとも、仕事でX-H1などの異なるカメラを一緒に持ち歩くときは、それぞれのバッテリーを持ち歩く必要はあるが…。

  • X-T4のバッテリー(左)とX-T3のバッテリー(右)。見るからに大きさが異なる

背面液晶のバリアングル化は異議あり

以上が、X-T4に関する私のおもだった注目点である。その他にもX-T4は目新しい部分が多く、なかでも動画に関する部分は改良が多岐におよぶ。それらの詳細についてはレビュー記事に譲りたいと思うが、総合的に先代モデルからの進化には驚かされるところが多かった。

一方、写真を楽しむ者にとってこれはどうなのか…と思えたのが、バリアングルタイプになった液晶モニターだ。これまでの縦位置撮影にも対応するチルトタイプと異なり、上下方向に液晶面を動かそうと思うと光軸から大きく離れ、手持ち撮影ではアングルが決めにくいことが多いのである。担当者によると、バリアングルタイプとしたのは動画撮影を意識したためとのことだが、私個人としてはあのチルトタイプが気に入っていただけに残念に思える。

  • スチル撮影メインの大浦カメラマンにとっては、動画利用を見込んでバリアングル化した背面液晶はちょっとご不満の様子…

  • Xシリーズの新たな装備となったジョイスティック(フォーカスレバー)を搭載しつつ、オーソドックスな十字ボタンを継承するのが、X-Pro3やX100VなどほかのXシリーズとは異なる特徴だ

同様に、露出補正ダイヤルの大きさと位置も気になるところ。これは、先代のX-T3からそうなったもので、カメラを構えた状態では右手親指だけの操作が難しい。せっかく直感的に調整できるダイヤル式としているのだから、大きさはともかくとして、X-Pro3や「X100V」などと同じ位置に置いてほしく思える。動画機能を充実させるだけでなく、写真を撮るカメラとして大切な部分もきっちりとやってほしかったと残念に思えてならない。

  • 大浦カメラマンが指摘するX-T4の露出補正ダイヤル。ボディのエッジからはやや内側に入った場所に設置されている

  • こちらはX100Vの露出補正ダイヤル。ボディのエッジに沿うようにダイヤルを配置している

  • X-T4のグリップの上にある電子ダイヤルは張り出しが大きくなり、回しやすくなったと大浦カメラマンは評価している

“X-Tヒト桁機”は、私自身とても好きなカメラのシリーズであり、仕事でも個人的な撮影でも持ち出す機会は多い。それゆえ、初見のX-T4の印象についてはちょっと厳しく記したところもあるが、同時に期待する部分も大きい。現在、富士フィルムでは専用ホームページでX-T4購入の予約宣言と購入後の製品登録を行うと、別売のバッテリチャージャー「BC-W235」がプレゼントされるキャンペーンを実施している。発売日はまだちょっと先だが、私はすでに予約宣言したことは言うまでもない。

  • X-T4の背面液晶や露出補正ダイヤルにはひとこと言いたいという大浦カメラマンだが、ボディ内手ブレ補正などの改良点に対する期待も大きく、すでに予約宣言をしたという

著者プロフィール
大浦タケシ

大浦タケシ

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。日本写真家協会(JPS)会員。