富士フイルムが発表した「X100V」、個人的に久しぶりにワクワクしてしまうカメラだと感じている。同社の開発担当者が「シリーズ最大のモデルチェンジ」と述べるように、多くの部分のブラッシュアップが図られ、完成度の高いカメラに仕上がっている。

  • 早くも第5世代になった富士フイルムのレンズ一体型高画質デジカメ「X100V」。2月27日の販売開始を前に、大浦カメラマンに印象を語ってもらった。予想実売価格は税込み18万円前後(+ポイント10%)

ちなみに、私は初代「X100」を1年ほど、先代「X100F」を半年ほど愛用した経験があるが、初代は初号モデルらしく使いづらいところが散見され、先代も今ひとつの部分があるなど、長期的に愛用するには至らなかった。しかし、今回短時間ながら手に取って試したX100Vは、そのようなX100シリーズに対する自分の考えを改めさせられる仕上がりだと感じた。まったく個人的な理由となる部分も多いのだが、そのいくつかを述べてみたい。

ファインダーまわりが大きく進化した

まず1つ目が、OVF(光学ファインダー)とEVF(電子ビューファインダー)のハイブリッドタイプとなるファインダーに関する部分だ。

  • OVFとEVFを兼ね備える独自のファインダーは、ミラーレスのフラッグシップ機「X-Pro3」と同等になった

基本的に、ファインダーはXシリーズのフラグシップであるAPS-Cミラーレス「X-Pro3」と同じとしており、EVFの解像度は従来の236万ドットから369万ドットにアップした。これまでのX100シリーズを使った経験からいうと、自分はほぼ100%EVFを使って撮影するので、これはたいへんうれしいと感じた。

  • 大浦カメラマンは、基本的にEVFを用いて撮影するという

極端な話、イメージセンサーが十分な解像度を持つようになった現在、EVFの解像度のほうが個人的には機種選びで重要だと感じている。いうまでもなく、ピントの状態はEVFの解像度が高いほうが把握しやすく、何より画像自体の見え具合もよいからだ。輝度も、これまでの1145cdから1500cdに高まっているので、より鮮明に画像を再現してくれる。ちなみに、背面の液晶モニターも104万ドットから162万ドットに向上しており、こちらも思わずニヤリとしてしまうスペックである。

最もうれしいと感じたのが、EVF使用時の遮光板の動きだ。従来モデルでEVFを使用した場合、アイピースに接眼するたびにファインダー内の遮光板が出たり入ったりして煩わしく、しかも機械的な部分なのでトラブルを考えると不安に感じていた。しかし、X100VではEVFに設定すると遮光板が常時出た状態に固定され、そのようなことがなくなった。プレスリリースにも書かれていない小さな変更点であるが、個人的にはこのカメラを使う気にさせる最も大きい部分だと感じている。

光学系が一新されたのもオッと思わせるところ。あまりにもカリカリとした描写は好きではないものの、やはりちょっとは現代的な味付けが欲しく思えていただけに、この進化もカメラを使う気にさせる。さらに、内蔵するNDフィルターも効果が3段分から4段分になり、より絞りを開けた撮影が可能となったのも個人的には注目点だ。レンズシャッターを採用する本モデルは、機構的な理由のため絞りを開いて撮影する場合、高速側のシャッターが切れないからである。NDフィルターの効果が1段分増したことで、絞り開放でも解像感の高くなったレンズの本領がより発揮しやすくなったともいえるだろう。

  • 35mm判換算で35mm相当/F2の単焦点レンズを搭載。焦点距離や開放F値は従来と同じだが、レンズユニットは1から設計し直しており、光学性能が高まった

  • 内蔵のNDフィルターは従来の3段分から4段分に向上

ボディーの質感は明らかに高まった

エッジの効いたボディシェイプも興味を強く引きつけられる。これまでも悪くはなかったけれど、より洗練された感じがしてならないからだ。欧米のファッション誌など見ると、結構な頻度でX100シリーズが小道具として登場し、美しいモデルとともに誌面を飾ることがある。おそらく、シンプルでカメラらしいデザインが好まれているからだと個人的には思っているが、ますます小道具として使われる機会が増えることだろう。

  • X100シリーズだとひと目で分かるデザインを継承しつつ、細部をブラッシュアップして質感を高めた

ボディに関しては、シリーズで初めて防塵防滴構造としたのも買う気を起こさせる部分だ。カメラマンは、撮影する際の気象条件を選べないからである。もっとも、アダプターリングを介してフィルターを装着しないとレンズ部は防塵防滴にならないのだが、私自身は(貧乏性のため)レンズには必ずプロテクトフィルターを装着しているので、それはまったく気にならない。

  • アダプターリングとプロテクトフィルター装着の条件付きながら、防塵防滴構造のボディーとなった

そのほかには、チルト式となった液晶モニターはハイアングルやローアングル撮影ではやっぱり必要だと感じるし、十字キーが省略されシンプルになったカメラ背面は所有するX-E3などと操作感が同じになり、思わずニンマリしてしまうところだ。

  • 背面液晶は待望のチルト式に一新。液晶パネルは強度を確保しつつ、薄く仕上げられている

  • 十字ボタンを廃止し、X-Pro3など近ごろのXシリーズと同様のシンプルなボタン配置となった

  • 三脚穴がレンズの光軸上にないのを目ざとく発見。大浦カメラマン的にはマイナスポイントとのこと

何はともあれ、自分好みに仕上がったX100V。同時に開発が発表されたAPS-Cミラーレス「X-T4」は仕事で使うカメラとして注目しており、どちらを手に入れるか目下悩みどころである。ただ、アタマのなかではX100Vを首から下げてブラブラ歩く己の姿を思い浮かべている自分がいる。

著者プロフィール
大浦タケシ

大浦タケシ

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。日本写真家協会(JPS)会員。