ネットアップは7月29日、オンラインで2021年度の事業戦略発表会を開催した。発表会にはネットアップ 代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏らが出席した。

企業内データファブリックの構築が戦略のカギ

まず、中島氏は「いまやデータはビジネスの要となっている。企業の最も重要な資産の1つとなっており、データの活用戦略を重要視するべきだ。今後は企業内データファブリックの構築が戦略のカギになる」と強調する。

  • ネットアップ 代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏

    ネットアップ 代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏

同社では顧客のデータファブリック構築を支援することで、データがオンプレミス、クラウド、ハイブリッドクラウドをはじめ、どのような環境にあるかにかかわらずデータを最大限に活用し、ビジネスの成長を実現できるという。

そのための戦略として「戦略的な組織構造」「パートナーエコシステム」「デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速するエンドツーエンドのソリューションポートフォリオ」「業界をリードするベストな技術と営業/エンジニアのチーム」の4つを掲げている。

特に、同氏はDXを加速するエンドツーエンドのソリューションポートフォリオについて、次のように話す。

「われわれが提唱するデータファブリックは『ソリューション』『データサービス』『基盤』の3つのレイヤで構成されている。ソリューションは、アプリケーションの開発者などに成果を最大化し、アジリティを向上させることが求められる。データサービスは企業内のデータファブリックを構築し、リスクの低減とアジリティの向上が要求される。そして、ストレージファブリックとも形容できる基盤ではコストとリスクの低減が必要となるため、ストレージのパフォーマンス、暗号化、階層化、マルチクラウドとのシームレスな接続機能が必須だ」(中島氏)。

  • ネットアップが提唱するデータファブリックの3つのレイヤ

    ネットアップが提唱するデータファブリックの3つのレイヤ

同社ではデータサービスのレイヤにおいて、従来から市場に先駆けてクラウド関連のソリューションや機能を重点的に開発しており、現在では企業内データファブリックの構築に必要なものになっているという。そして、これらを支える基盤のレイヤとしてオールフラッシュSAN/NAS、HCI(ハイパーコンバージドストラクチャ)、オブジェクトストレージ、SDS(ソフトウェアデファインドストレージ)などの製品を揃え、Microsoft Azure、Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)と連携したクラウドデータサービスを提供している。

一方で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、企業の優先事項に大きな変化が起きていると指摘。中島氏は「これから、どのように働き、変革していくのかを考える必要がある。われわれは、新型コロナウイルスへの対応として、Response(今すぐに求められる対応)、Optimaize(今後に向けた最適化)、Thrive(さらなる成長戦略)の3つのフェーズに分けて考えている」と話す。

Responseの段階では柔軟なワークスタイル(リモートワーク、VDI、デジタル化)、事業継続(BCP)、セキュリティ、投資・支払の見直しに取り組む。

Optimiseではコストやキャッシュフローを最適化する同社の柔軟なコンサンプションモデル「Keystone」、クラウド環境の最適化を図る「Cloud Insight」を提供し、Thriveについてはビジネストランスフォーメーション、バリューチェーンの変革、スケールの拡大と迅速化、AIや自動化技術による革新、コンテナ技術、マイクロサービスの有効活用となる。

  • 新型コロナウイルスへの対応

    新型コロナウイルスへの対応

そして、同氏は顧客の最適化フェーズに役立つソリューションとして、KeystoneとCloud Insightを紹介した。Keystoneは昨年10月に米ラスベガスで開催した「NetApp INSIGHT 2019」において発表された新しいクラウド型の消費モデル。

今回、Keystoneの国内における本格展開を開始する。同社のソリューションをクラウド感覚のサブスクリションモデルで運用を可能としており、パフォーマンスレベルを決定し、ストレージサービスの内容を選定した上で顧客の自社管理またはパートナー管理の選択と流れで、3ステップで使えるサブスクリプションサービスだ。

また、万が一に契約した容量が不足しても標準で20%のバーストキャパシティが付属しており、パブリッククラウドとの親和性が高く、柔軟性を有し、1年からの契約が可能なため容量は最低限必要とする15TBから利用できるという。同氏は「必要な時に必要な分だけの支払いでハイブリッドクラウド環境の構築を促進する」と力を込めた。

  • Keystoneの概要

    Keystoneの概要

Cloud Insightは、パブリッククラウドやプライベートデータセンターなど、あらゆるリソースを一元的に見える化し、トラブルシューティングや最適化が図れ、クラウドインフラストラクチャのコストを平均33%の削減が可能だという。障害発生時に解決までの時間を短縮し、AIエンジンによる管理者サポート機能を備え、現在は14日間の無償トライアルを実施している。

  • Cloud Insightの概要

    Cloud Insightの概要