アプリ開発者とデータサイエンティストにも価値提供を
続いて、ネットアップ 常務執行役員CTOの近藤正孝氏が同社が考える今後のデータ戦略について説明した。同氏は「これまではハイブリッドマルチクラウド環境においてデータ環境のデプロイ、運用を統一化するなど、インフラ管理者へ価値を提供していた。しかし、今後はインフラ管理者に加え、アプリ開発者にアプリリリースサイクル迅速化のための価値を、データサイエンティストにデータ分析高速化のための価値を、それぞれ提供していく」と述べた。
インフラ管理者に対しては、ハイブリッドマルチクラウド環境管理の最適化を提供し、買収した企業の技術を融合することで、同社のクラウドサービスメニューであるCloud Centralを拡充している。
7月に買収したSpotのクラウドにおけるコンピューティング最適化技術と、ネットアップのストレージとデータの最適化技術を組み合わせた「Spot by NetApp」をアプリケーション駆動インフラストラクチャ(ADI)として提供する。近藤氏は「ADIとは具体的にアプリケーションごとの多様なワークロードに応じて、さまざまなインスタンスのタイプがあるため、それを最適に組み替えることでコスト最適化を図るというものだ」と説明する。
アプリ開発者には「TRIDENT」と「Project Astra」で価値を提供する。今後、Kubernetesをはじめとしたコンテナオーケストレイターがアプリケーション開発のデファクトスタンダードになることから、コンテナオーケストレイターの環境でも堅牢なストレージを活用できるTRIDENTで堅牢なデータ管理を実現するという。
Project Astraについて同氏は「わたしは勝手にアプリケーションどこでもドア化プロジェクトと呼んでいる。4月にアナウンスしており、現在はプレビュー段階で一般提供の開始は10月後半~年末を予定している」と話す。現状ではKubernetesでアプリの移植性が向上したが、コンピューティングの移植性のみでデータとデータ管理の移植性がなく、課題となっていることから同プロジェクトにより、真のアプリ移植性を実現するとしている。
データサイエンティストには、同社のAIコントロールプレーンを提供する。現状の機械学習の課題としては、AIモデルのバージョン管理方法が必要なほか、オリジナルデータセットを壊さずに大規模データセットを変更しながら実験を繰り返せることや、学習済みモデルがどのデータセットを使い学習したかを管理できること、AIコンピューティングサイロの集約・統合できるリーズナブルな仕掛けの確立、異種データソースを統合AIデータパイプラインに統合することなどがある。
そのため、AIコントロールプレーンではフルスタックのAIデータ・ワークロード管理を可能としている。KubeflowとKubernetes、TRIDENTの3つのコンポーネントがあり、JupyterワークスペースにAI研究者などが試行錯誤した記録が管理され、データプレップ、学習、デプロイワークフローの自動化が図れる。また、同社のストレージシステムを柔軟に利用でき、場所を選ばずに分析できるほか、モデルを実際に稼働させることもできるという。
日本における取り組み
一方、日本における取り組みでは、ネットアップハイブリッドマルチクラウドラボとネットアップデジタルトランスフォーメーションラボ(NDX Lab)により、実際に体験できる環境を用意している。
ハイブリッドマルチクラウドラボはエクイニクスとの共同検証センターとなり、ネットアップのストレージやインターネット回線、クラウド接続回線を同社が準備し、ほぼすべてのハイブリッドマルチクラウドソリューションに対応を可能としている。ラボは同社の京橋オフィスとエクイニクスのデータセンターに設け、ソリューションアーキテクトのワークショップの実施や顧客ニーズの明確化とPoCを含めたプロジェクトスケジュールの立案などを実施。
NDX Labは、Optimize ITとThrive ITを有し、Optimize ITは仮想化の次のステップとして自動化したサービスとして提供されるITを実際に見て、触れ、体験する場を提供する。
また、Thrive ITはアプリケーションコンテナとデータをハイブリッドマルチ蔵浮かんで自由に移動可能でフレキシブルなITインフラを体験する場を提供する。最後に近藤氏は「われわれはハイブリッド時代の主要5社(Microsoft、Google、AWS、VMware、ネットアップ)のうちの1社であり、共有データストレージプラットフォームでナンバー1になる」と力を込めていた。