ソニーは、高音質技術を結集した「Signature Series」の新製品として、ニアフィールド向けのパワードスピーカーシステム「SA-Z1」を6月20日に発売する。価格は税別78万円。IFA 2019で海外発表された製品で、日本での発売日や価格が決定した。

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    ニアフィールドパワードスピーカー「SA-Z1」

机の上などのパーソナルスペース向けに作られたパワードスピーカーシステムで、広大なサウンドステージの表現や、高い解像度での音楽再生を追求。アンプとデジタル回路を内蔵しており、ハイレゾ音源はDSDが最高22.4MHzまで、PCMは768kHz/32bitまで再生できる。

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    正面

主にパソコンやウォークマン、Signature Seriesのオーディオプレーヤーなどとの組み合わせを想定しており、ヘッドホンのような高解像度再生と、スピーカーならではの空間表現を両立するニアフィールドリスニングを追求。これまでにない音楽体験が楽しめるという。

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SA-Z1の音を実際に短時間試聴したところ、どんな高級オーディオスピーカーでのリスニング体験とも異なり、“全方位にピントの合った音”が頭の中に流れ込んでくる印象。目隠しされて「アーティストや楽器が目の前にあって、今まさに自分のために演奏してくれている」と言われたら、そのまま信じてしまいそう……と書くとオーバーな表現に読めるかもしれないが、こればかりはソニーストアなどで体験してもらわないと伝わらないだろう。それくらい音が生々しく、スゴい。

「オーディオメーカーとしてのソニーの本気」をまざまざと見せつけてくるSA-Z1は、誰もが手に入れられる製品とは言い難い。しかし100万円を超すオーディオシステムも珍しくはない中、手持ちのPCやウォークマンに、80万円台のスピーカーシステムを足すだけでこの音が手に入るのなら……と取材しながら考え込んでしまったほどだ。

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理想的な点音源を突き詰めた、究極の小型パワードスピーカー

SA-Z1のサウンドの凄みは、「理想的な点音源」という音響設計コンセプトに基づき、自社のハイエンドオーディオなどで採用している高音質技術を結集して実現している。

スピーカーの正面を見ると、中央にメインツイーター、その上下にアシストツイーターを組み合わせた部位が見える。この3基のツイーターを1つのツイーターのように機能させる「I-ARRAYシステム」は、口径が大きく音圧の高いメインツイーターと、指向性が広いアシストツイーターを合わせることで、高域まで自然で広い音の指向性と広帯域化を実現し、広大なステージ感と実在感のある音像を再現する。

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    3基のツイーターを1つのツイーターのように機能させる「I-ARRAYシステム」

メインウーファーと背中合わせに対向配置したアシストウーファーで互いの振動を打ち消して不要振動を抑えつつ、サイドダクトを介して同心円状に低音を拡げる仕組みも採用した。このユニークなウーファーの対向配置の形を、ソニーでは日本の打楽器である「鼓」になぞらえて「鼓構造」と呼んでいる。

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    対向配置のウーファー。まるで古来の打楽器「鼓」のようだ

ツイーターとウーファーを同軸上に配置することに加え、合計16ch分の独立駆動制御を行うマルチアンプシステムとFPGAプロセッサを採用。それぞれのドライバーユニットから出る音を物理的にひとつの軸上で合成するだけでなく、各スピーカーの出力タイミングをFPGAによってコントロールすることで、音波の波面を揃えた高精度な点音源化を実現。マルチウェイスピーカーでありながら「音像に触れることができそうなほどの高い解像度」を実現する。

アンプ部は、フルデジタルアンプ「S-Master HX」にアナログ回路を組み合わせ、大出力時の歪みやスイッチングノイズを低減する「D.A.ハイブリッドアンプ」を搭載。その出力素子にGaN(ガリウムナイトライド)-FETを採用することで、100kHz再生を可能にした。

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    スピーカー後部のアンプ基板

ユーザーの好みに合わせた音で聴けるよう、SA-Z1の基本の音質は維持したまま、信号劣化なく音の質感を微調整できる4つのダイヤルを搭載。ウォークマンやXperiaで採用している、圧縮音源を高品位にアップコンバートして再生するDSEE HX(384kHz/32bit)も装備している。

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    電源ボタンや入力切り替え、DSEE HXのボタンを上面に備える

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    4つのダイヤルで音質を微調整できる

デジタル入力には、USB-Bと光デジタル、ウォークマン/Xperia用のmicroUSBを搭載。アナログ入力にはバランスXLRとアンバランスのRCA、ステレオミニを備える。左右のスピーカー間は独自端子の専用ケーブルで接続する。

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    側面

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    背面のアナログ入力部。左右のスピーカーをつなぐ専用ケーブル用の独自端子(右下)も見える

スピーカー部のエンクロージャー(本体)は6枚のアルミニウム板でできており、日本の伝統的な木工技術である木組みから着想を得た方法で接合。強度を保ちつつ、エンクロージャーの振動から生じる付帯音を大幅に軽減し、歪みのないクリアな音を追求した。アンプ内蔵型スピーカーでありながら、スピーカーの振動をアンプに伝えない構造も採用。ボトムプレートには、5mm厚の高強度の鋼板を使用。強固な土台により、デスクの強度や素材の音質的影響を受けにくくなっているという。

本体サイズはスピーカーAが199×326×207mm(幅×奥行き×高さ)、スピーカーBが199×326×205mm(同)。重さは各10.5kg。リモコンなどが付属する。

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    付属のリモコン