クセがなく、バランスの良い音
ゼンハイザーはコンシューマー用だけでなく、プロ向けのヘッドホンやマイクを製造していることでも有名な企業。ホームオーディオ向けのヘッドホンは、音質に定評があります。
PXC 550-IIは、音質重視というよりは、屋外など幅広いシーンでの利用に向けた位置づけの製品です。とはいえ、さすがに専業メーカーというだけあって、Netflixなどの映像作品やAmazon Musicの楽曲、スマホアプリのゲームなどジャンルを問わず、どのソースでもそつなく鳴らしてくれる印象。低音域から高音域までバランス良く、クセのない仕上がりです。
-
32mm径のダイナミック型ユニットを搭載
たとえばAmazon MusicでAviciiの楽曲「Waiting for Love」を聞くと、力強いボーカルとトラックがはっきりと分離して聞こえてきますし、筆者が好きなNetflixのドキュメンタリー番組(『食品産業に潜む腐敗』)を見るときは、音量を上げなくても吹き替えのナレーションが聞き取りやすく感じました。特に後者は、NCの恩恵が強く感じられる部分です。
音の傾向は、iOS/Android用「Smart Control」アプリのイコライザー機能で好みのバランスに追い込めるので、よく聞くジャンルに合わせて設定しておくといいでしょう。このアプリに関しては、PXC 550で使っていたスマホアプリ「CapTune」と機能的に大きな違いはありません。
-
PXC 550-IIをスマートフォンと接続した状態で「Smart Control」を立ち上げたところ(左) AndroidのBluetooth設定画面。PXC 550-IIと接続され、aptXコーデックを使用できることが表示されている(右)
-
Smart Controlアプリのイコライザー画面。「ニュートラル」、「クラブ」、「ムービー」、「スピーチ」の4つのプリセットがある
-
ユーザーが好みの音に設定できる「ディレクター」の画面
また音質とは直接関係ありませんが、PXC 550-IIでは旧モデルから対応していたaptXに加えて、新たにaptX LLという低遅延コーデックに対応しました。映像と音のズレが抑えられ、スマホでアクションゲームを遊ぶときや、映像作品の視聴時に恩恵があります。特に「音ゲー」ジャンルのプレイ時には顕著に体感できるでしょう。
-
付属のアナログケーブル(長さ1.4m)で有線接続できる
-
付属のmicroUSBケーブルでヘッドホンの内蔵バッテリーを充電できるほか、PCにつなぐとサウンド入出力デバイスとして利用できる
-
Windows PCに接続してデジタル音声出力デバイスとして認識されたところ
NCと音のバランスの良さが魅力
筆者は従来のPXC 550を2年半ほど使っていますが、これまで不満らしい不満を抱いたことはありません。PXC 550は、便利に使えるジェスチャー機能や、クセがなく落ち着いた音質、長持ちするバッテリー、約227gという軽さ(PXC 550-IIは約232g)、そしてもちろんしっかりと効いてくれるNC性能など、日常的に使う上で重要な使い勝手が高い水準にまとまっている総合力が気に入っていました。
今回レビューしたPXC 550-IIでは、バッテリーの持続時間や対応コーデックの増加、音声アシスタント操作への対応など、機能面での進化が目立つ一方で、基本性能は据え置きという印象です。バッテリー持続時間は公称約20時間で数値は従来製品と同じですが、実際に使ってみると、充電せずに連続して使える時間が体感で数時間ほど伸びているように感じました。日常的に使う中で、それ以外で大きな違いは感じられません。それだけ従来モデルの完成度が高かったとも言えますが、PXC 550-IIではノイズキャンセルの性能を一回り強化するなど、目を引くような冒険をしてほしかったというのも率直な感想です。
-
イヤーカップを折りたたんで付属のケースに収納
-
ケースのほかに有線接続用のアナログケーブル、USBケーブル、航空機用アダプターを同梱する
PXC 550-IIのオススメポイントはいくつかありますが、「効きのよいノイズキャンセリング」と「クセのない高音質」を挙げたいと思います。Bluetoothヘッドホンは日常的に使うデバイスですし、多くの人はそう何台もヘッドホンを買いません。そして実売価格も税別42,000円前後(2019年11月27日時点)と、決して安い買い物ではありません。だからこそ、何かを秀でたものとするために、何かを犠牲にしていない、PXC 550-IIのバランスの良さを好評価しています。NC性能と音質を高い水準できちんと確立している点は、多くのNCヘッドホンの中からPXC 550-IIを選ぶ理由になるでしょう。
