スマートフォンとBluetooth対応オーディオ機器の普及により、ワイヤレスで音楽や映像作品を楽しむ人を見かけることが珍しくなくなりました。Bluetoothヘッドホンというカテゴリーの中で、最近特に多く市場投入されているのが、ノイズキャンセリング(NC)性能を売りにした製品です。

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    ノイズキャンセリング対応のワイヤレスヘッドフォン「PXC 550-II Wireless」

ヘッドホンには音質重視のオーディオ向けから、通勤・通学など気軽に着け外しできるデイリーユースのポータブル製品までさまざまな機種がありますが、特にNCヘッドホンは後者の方向性を採った製品が多く見られます。ゼンハイザーが11月21日に発売したワイヤレスヘッドホン「PXC 550-II Wireless」(以下、PXC 550-II)もその中のひとつです。

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    イヤーカップを折りたたんだところ

PXC 550-IIは、従来の「PXC 550」(2016年発売)の後継モデルにあたり、新たにSiriやGoogleアシスタント、Amazon Alexaといった音声アシスタントに対応したほか、対応コーデックにAACとaptX Low Latencyが追加され、バッテリー持続時間も改善されています。仕様など詳細は発表時のニュース記事を読んでいただくとして、ここではPXC 550-IIの日常シーンにおける使用感を中心にお伝えします。

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    PXC 550-IIを装着したところ

騒音を抑え、聞きたい音が聞ける

ヘッドホンのノイズキャンセリング(NC)機能の仕組みとして一般的なのは、内蔵マイクで外の音を拾い、拾った音とは逆位相の音を発生させて打ち消す「アクティブノイズキャンセル」方式です。ゼンハイザーがPXC 550-IIで使っている技術「NoiseGard」でも、同様の仕組みでノイズを減らしています。PXC 550-IIではさらに、周囲の騒音レベルに合わせてNCの効き方を自動で調整する「アダプティブノイズキャンセリング機能」にも対応しています。

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    PXC 550-IIの各種設定はスマートフォンアプリ「Smart Control」から行える

もちろん雑音を完全に消すことはできませんが、実際に使ってみると、その効果ははっきり実感できます。具体的には、屋内ならPCや換気扇といったファンの回転音や、電車で移動するときの騒音、飛行機のエンジンが発する騒音などが抑えられました。屋外ならば高速道路で車が出す通過音や、ビル街で聞こえる反響音、人の足音など、傾向として低い音域の雑音を減らしてくれます。

一方、人の声に相当する高さの音はカットされにくくなっているようで、駅構内のアナウンスや、電車のドアが開閉するときのブザーなどは比較的はっきりと聞き取れます。

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    PXC 550-IIの右イヤーカップをひねることで電源がオンになる。平らにするとオフになる

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    左右のイヤーカップの穴(写真上)にマイクが内蔵されている

個人的にはNCヘッドホンのおかげで、海外出張時に飛行機の轟音にさらされずに済んでありがたかった記憶があります。旅客機の飛行中は音に慣れてしまっていますが、実際はかなりの騒音が常に鳴っているはずで、そんな中では眠ろうにも眠れず、眠れたとしても安眠できません。耳栓を使うという手もありますが、音楽やオーディオブックを聴きたいこともあるので、NCヘッドホンがあると飛行機に乗るときの快適度が明確に上がります。

特に「密閉型」と呼ばれる構造のヘッドホンは、装着すれば多少なりとも外の音を遮断するものですが、NC機能を持つ製品の聞こえ方はここから一歩進んで「遮断したい音のボリュームが下がり、聞きたい音だけがそのまま聞こえる」という感覚です。

PXC 550-IIには、周囲の騒音の状態に応じてNCの効き具合を自動調整する「アダプティブノイズキャンセル機能」が搭載されています。今回は主に自宅や取材先への移動中、カフェなどの飲食店、オフィスで試用しましたが、使用感はおおむね快適でした。NCの効き具合がはっきりと切り替わったように感じられたタイミングはありませんでしたが、一般的な都市の使用シーンにおいては、NCの効きを調整する必要のあるシーンは限定的ではないか、というのが筆者の実感です。

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    Amazon Alexaなどボイスアシスタントへの呼びかけが行える(左) デバイス設定のページにAlexaの設定項目がある(中央) PXC 550-IIでAlexaを使うには、Smart ControlアプリのほかにAmazon Alexaのアプリも導入する必要があり、それぞれのアプリでマイク使用許可などの設定を行う(右)

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    イヤーカップの側面にノイズキャンセリングの効き調整を行なうスライドスイッチ(左側)、音声アシスタント用のボタン(右側)がある

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    Bluetoothのペアリング操作用スイッチ

ジェスチャー操作が便利!

ヘッドホンを長く使うには、操作性や装着感も気になるポイント。PXC 550-IIには、指先の動きで音楽再生や電話着信時の操作ができる、ジェスチャー機能があります。これは右イヤーカップ表面の平らになっている部分に指先を当てて、特定のなぞり方をすると、その動きに対応した操作ができる機能。たとえばシングルタップで再生と停止、水平スワイプで曲戻しと曲送り、垂直スワイプで音量調整、といった具合です。PXC 550-IIとペアリングしたスマホや音楽プレーヤーを取り出す必要がなく、音楽再生まわりの操作は特殊なプレーヤーアプリでない限り共通なので、筆者は便利に使っています。

通話時もPXC 550-IIでジェスチャー操作が利用できます。着信応答や通話終了、拒否や保留、リダイヤル、マイクミュート、キャッチホンなどに対応した操作が割り当てられていますが、誤操作には注意が必要です。

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    右イヤーカップを指先で触れることで様々なジェスチャー操作が行える

便利なジェスチャー操作としては、ダブルタップでオン/オフできるトークスルー機能が挙げられます。トークスルーは必要に応じて内蔵マイクで取り込んだ周囲の音を聞ける機能で、一時的に外の音を聞きたいがヘッドホンは外したくないときに重宝しています。

PXC 550-IIの装着感については、頭に装着したときの圧迫感、いわゆる側圧がやや強めです。ヘッドバンドの長さを伸ばしきることで側圧を若干緩和できますが、ヘッドホンのみで頭部に固定する都合上、側圧が強くなることは避けられないでしょう。冬場はそれほど気になりませんが、夏場は蒸れやすいので、その点は気をつけたいところです。

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    ヘッドバンドは長さを調整できる