指一本で軽快にズーミングできる200-600mm

一方、100-400mmの使い心地を知ったうえで200-600mmを使うと、テレ端の超望遠画角はさておき、まずは撮影時の良好な操作性に多大なる羨ましさを感じることになった。これ、実際に使ってみるまでは思いもしなかった心の揺れである。正直、私はその一点のみで「200-600mmが欲しい!」と思ってしまったぐらいだ。

具体的には「ズーミング(焦点距離変更の操作)がしやすい」ところに惚れた。このレンズ、焦点距離の移動に伴う全長の変化がない。この点を機械的に評価すると、「どの焦点距離においてもホールドバランスに変化がない」なんてことを口にすることになるのだけど、私がグラッときたのは直接的にはそこじゃなかった。結果的にはインナーズーム機構に関連するところはあるのだろうけれど、とにかくまずはズームリングの操作感がきわめて軽いところにズキューン! 指一本で、苦もなく焦点距離の変更ができるのである。

で、トドメを刺したのは、同リングの回転角が「きわめて適切に“小さく”設定されている」ところ。要するに、指をズームリングの一定位置に当てたまま、その指一本で200mmと600mmの間をストレスなく素速く確実に行き来できる作りになっているところにシてヤラれてしまったのである。

ちなみに100-400mmの場合、ズームリングの重さは「スムーズ」から「タイト」の間で調整できる。このうち「タイト」設定は、まずは携帯時にレンズが自重で伸びきってしまうことを防止するためのポジションだろう。一方「スムーズ」設定では、確かにスムーズな操作が可能になるのだけど、光学系が外装もろとも移動するカタチであるがゆえ、指1本で操作するのは残念ながら現実的ではない(操作がそれなりに重い)。また、だからこそ、例えば連写しながら画角を変える場合など、水平のズレが生じてしまったり、動体のフレーム内への収まりが乱れるなど、フレーミングに係る二次的な被害みたいなものが生じがちでもある。200-600mmにはそれらがないということだ。大きくて重いけど、本当に扱いやすい。そういう見方をすると、100-400mmを所有しているからこそ欲しくなる200-600mmなのかも? いやはや、困ったもんだね……。

手持ちで動体に対峙するなど、機動力優先の撮影現場では、200-600mmの方が圧倒的に使いやすい。これは断言できる。でも、機動力を優先すべき現場では、短焦点側200mmの「望遠画角」が狭すぎると感じられることも少なくはなく……。100mmと200mmじゃ「画角の広さ(ここではあえて「狭さ」ではなく「広さ」といいます)」が段違いなんだよねぇ。

  • 注意! デカい蛇が写ってるので苦手な人は等倍表示しないよーに!! というワケで、これは600mmでよかったーの場面だといえましょう。だって、これ以上、近寄らなくて済んだから(けっこう切実)。引けば(画角を拡げれば)別の画作りもできるわけで、やっぱりズームレンズは便利だと実感した場面でもある(600mm、ISO5000、1/2000秒、F6.3)

  • 風景写真的な撮り方でも重宝するレンズなのだけど、そういうときはさすがに短焦点側が狭すぎ!!ってことになりがちでもある。やはりここは70-200mmクラスとの併用が望ましいのか……。でも、大きく重いレンズなので、フィールドでのレンズ交換はちょっと大変だし、けっこう気を遣う(362mm、ISO8000、1/800秒、F6.3、-2補正)

  • 超望遠レンズの楽しみはドアップで撮ることのみに非ず。例えば、遠方の被写体を絵画を描くように"切り撮る"のもなかなか面白かったりする。大切なのは構図をしっかり意識すること。ただ撮るだけでは絵になりづらいところがちょっとだけ難しい(600mm、ISO200、1/1000秒、F6.3)

  • ズームリングの操作感がきわめて軽快なので、まず200mm側で被写体を大ざっぱに捉え、それから600mm側にグーンとズーミングしてシャッターレリーズ!!なんていう効率的な撮り方が何の苦もなくできちゃう。微妙な画角調整を加えながら撮るというズームレンズならではの使い方がストレスなくできる点においては、100-400mmよりも200-600mmの方が適応力ははるかに上だ(600mm、ISO1600、1/1600秒、F6.3、-1補正)

  • 街中スナップだってバッチリできちゃう。傍目にはアヤシイかもしれないケド、仕上がりはご覧の通りかなり繊細。けっこうクセになります(600mm、ISO800、1/1000秒、F6.3)

  • スナップ的な使い方では、被写体を寄りの状態でワガママに切り撮る感覚が強調されることになるのだけど、これがかなり楽しい。画角の面では縛りがキツいのに、撮影者の立場としては、どこか解き放たれた気持ちになれるのだ。わかるかなぁ? わっかんねぇだろうなぁ……(600mm、ISO1600、1/1000秒、F6.3、-1.7補正)

なんだかんだと文句をいわず、素直にFE 70-200mm F2.8 GM OSSを一緒に使いなさいというコトであるような気もする。そうすりゃ、すべて丸く収まる。でも、すでに手元に100-400mmがあると気軽にそういう態勢に移行するワケにもいかず、しかもそもそも100-400mmを手放せるかというと、利便性の高さに加えスゲーよく写るレンズなんで、現実にはそれもムリ……。

ってな感じで悩みは尽きず、尽きぬ悩みを引きずったまま続きは後編でっ!!

  • お気に入りの100-400mmにはない魅力を持つ200-600mmを手に、心がグラグラと揺れ動いている落合カメラマン。100-400mmを200-600mmに買い替えるか、200-600mmはあきらめて100-400mmを使い続けるか、200-600mmをそのまま買い増すか、悩みは尽きないという