コンパクトデジカメは小型軽量で手軽に使えるが、連写やオートフォーカス性能はミラーレスや一眼レフにかなわない――。こんな常識を根こそぎ覆してしまう存在として話題になっているのが、ソニーが2018年に発売した高画質モデル「Cyber-shot DSC-RX100M6」。カメラの撮影性能にこだわる落合カメラマンも「日々、一番シャッターを切っているカメラ」と諸手を挙げて評価していました。

求める要素が漏らさず詰まっているカメラ

結構ヤバイ状況だと思っている。安閑としていてはマズイ感じなのだ。ナニが?って、私とソニー「RX100M6」との関係が、である。

  • ソニー「Cyber-shot DSC-RX100M6」

    ソニーが2018年6月に発売した高級コンパクトデジカメ「Cyber-shot DSC-RX100M6」。シリーズの特徴である小型軽量ボディーを継承しつつ、35mm判換算で24~200mm相当の光学8倍ズームレンズを搭載したのが特徴。実売価格は税込み12万円前後

そもそも、初代「RX100」と「RX100M3」を大のお気に入りとして使ってきた履歴を持つ私だ。RX100M6の発表を知った瞬間に購入を決意し発売日に入手、常時携行機として位置づけ今に至る……という一途なラインに不確定、不審、不倫、不毛、脱毛などといった不穏な文字列がつけいる隙はナイものと自覚しているところではあるのだが、傍目にどう見えているのかはよーわからん。でも、自分ではRX100M6とは無垢な気持ちで接しているし使い続けてきているつもりだ。

  • 2012年6月に登場した初代「RX100」。発売から7年が経とうとしているが、いまだに現行モデルとして販売している超ロングセラー機。実売価格は税込み3万9000円前後と手ごろだ

  • ポップアップ式の電子ビューファインダーを初めて搭載した「RX100M3」。2014年5月発売だが、こちらも販売を継続している。実売価格は税込み7万5000円前後

だ・か・ら・こ・そ、マ・ズ・イ。

RX100M6を使っていることの影響が思ったよりもデカいんである。周囲に迷惑をかけているワケではなく、あくまでも「私の中のハナシ」なのだが、ナニはトモアレRX100M6は、思った以上にインパクトのあるコンデジだったのだ。

紛うことなきコンデジサイズのボディに、「1型センサーとUSB充電とテレ端200mm相当」の三大熱々要素が詰まっている。しかも、使ってビックリ、AFは一眼レフ並みの動体追従性をも発揮可能なコンデジ随一の仕上がりだ。このAFについて私は、かねてから愛用していた「RX10M4」に近い能力を持つものであろうと密かに期待していたのだが、まさしく思った通りのAF性能にブッ飛んだ。

AF-C+測距点自動選択時に、315点の像面位相差測距点表示がチラチラ有機的に動きながら被写体を捉えて離さない様子がいざなうのは、少々オーバーな表現を持ち出すならば「α9にも似た使い心地」。ジツはこの表現、RX10M4のレビューで用いたことのあるものなのだけど、この際そのまんまRX100M6にも被せちゃうことにした。“血統”は明確。ここまで動体を苦もなくちゃんと撮れるコンデジサイズのコンデジって、他にはないからね。

というワケで、RX100M6を入手して以降、一番シャッターを切っているのは同機だったりする。依頼仕事(私の場合は取材モノがほとんど)はオリンパス「OM-D E-M1 MarkII」を中心に、撮影条件や内容によってソニー「α7R III」「α7 III」のコンビを持ち出すというのがここ最近のスタイルなのだけど、それでもショット数はたぶんRX100M6がいちばん多い。常時携帯し、ちょっとしたメモ撮りから作品を意識した撮影まで、それこそ何でもやらせているからだ。逆の見方をすると、それだけ何でもできちゃうコンデジということでもある。

  • 日陰と日向が混在する部分の描写に見られるナチュラルな再現に脱帽。高い解像描写を含め、コンデジレベルを超える写りが得られていることが明白だ(ISO125、1/400秒、F4.0、24mm相当)

  • このサイズのコンデジで、遠景がこれだけしっかり撮れれば文句はない。これぞ1型センサーの底力(ISO125、1/100秒、F4.5、40mm相当)

  • 時に、周辺画質にチョイとした甘さを感じることはある。でも、このサイズの高倍率ズーム機であることを考えれば完全に許容範囲内(ISO125、1/800秒、F4.0、24mm相当)

  • いたずらにハイコントラストだったりシャープネス過大だったりすることなく、質感描写はとことんリアル。でも、どちらかというと、基本は人工物にお似合いの画作りであるようにも思う(ISO125、1/640秒、F4.0、-0.7補正、98mm相当)

  • ワイド端の最短距離8cmギリギリまで寄ると、周辺のボケ描写に少なからぬクセを見せることがあるけれど、ほどほどにとどめておけば、このように画角内全般の安定を崩さぬ仕上がりが得られる(ISO125、1/320秒、F4.0、24mm相当)

  • ハイライトとの境界部分、色転びせずよく踏ん張ってます。葉の丁寧な再現を見ても、本機の優れた描写力は一目瞭然だ(ISO125、1/640秒、F4.0、24mm相当)

何より望遠端200mmのズームレンズが魅力的

RX100M6の最高コマ速は、電子シャッター時に24コマ/秒。そのときに生じる動体ゆがみは、α9並みとまではいかないまでも、普通のコンデジとの比較では圧倒的に少ない。つまり、ちゃんと実用になる電子シャッターが搭載されている=実用になる24コマ/秒なのだ。コンデジとして……いや、そういうくくりを外しても、これは驚異的なスピードの持ち主であるといっていい。

でも、その設定で撮っていると、自然の成り行きとしてとんでもない枚数を撮ってしまうことになり、あとのセレクト作業が地獄の苦しみに……。そのことをRX10M4で学んでいた私は、RX100M6を24コマ/秒で使ったことはほとんどない。メカシャッターでの最高速「10コマ/秒」に抑えておくのがいつもの設定であり、RX100M6をストレスなく使いこなすコツのひとつであると考えている。

そして、電子音(シャッター音)はOFF設定がいい。そうすると、RX100M6は撮影時「チチチ……」という感じのごく小さなメカシャッター音を撮影者に感じさせつつ撮影を行うようになる。周囲に届く音量ではなく、しかし撮影者の耳には「撮ってまっせー、撮れてまっせー」のメッセージが届くという塩梅だ。そう、ここは完全な無音じゃダメなところ。絶妙である。

参考までに、RX100M6の場合は、AF追従で24コマ/秒であり10コマ/秒にもできる(最低速設定は3コマ/秒)。RX100M4は、連写時最高約5.5コマ/秒のスピードにとどまり、RX100M5AはスピードはRX100M6と同一ながらもテレ端の画角が70mm相当にとどまる。“速さ”と卓越したAFの能力を完全に引き出すことのできるバランスにおいて、現時点最も優れているのは、望遠に強いRX100M6……自然にそういう判断になった。RX100M4やRX100M5には見向きもしなかった私がRX100M6にソッコーで飛びついた理由は、まさにそこにある。

  • 焦げた醤油の香りが漂ってきそうなテレ端の描写。背景に“意味”を残すことのできるボケの大きさも、そうとわかって使うのならばちょうどいい(ISO250、1/400秒、F4.5、200mm相当)

  • ISO6400での撮影。微妙に手ブレしている可能性を排除できず、等倍時のカッチリ感に欠ける印象はそのためであるとも思われるのだけど、NR設定デフォルトにおける粒状感(ノイズ残存)はこんな感じ(ISO6400、1/20秒、F4.5、200mm相当)

  • RX100M6のAFは、動体対応の観点からも優秀なAFだといえる。夜間など暗い場所でも、被写体に適切なコントラストがあるならしくじることは少ない。測距点自動選択との相性もとてもいい感じなのだ(ISO6400、1/25秒、F4.5、-0.7補正、200mm相当)

  • 画面中央部に写っているのは、青空を駆け上るラジオゾンデ。RX100M6のAFは、測距点自動選択で、このミジンコみたいな対象をしっかり認識しピントを合わせてくれる。こういう場面でピント合わせができないコンデジやミラーレス機って、たくさんあるよね。その点、ソニーのAFは小さな対象にもけっこう強いと思う(ISO125、1/1000秒、F4.5、200mm相当)

  • ISO2000レベルなら、多くの人がムリせず納得できる高感度画質だといえるのではないだろか? 暗部への階調のつながりも悪くない。ポケットサイズのコンデジで手持ちで撮っていることを考えれば、ホメ言葉しか出てこないというのが正直なところ(ISO2000、1/60秒、F2.8、24mm相当)

  • RX100M3から搭載されたEVFは、新たにワンタッチで撮影態勢が整う作りになったのがうれしい。ただ、ポンッ!と勢いよく立ち上がるEVFユニットであるがゆえ、そこに載っている視度補正機構の設定がいざ撮影をしようとしたときにズレてしまっていることがままある点は今ひとつ。そこがRX100M6を使っていて唯一、気になるところかな(ISO125、1/800秒、F4.5、200mm相当)

ってな感じで、何でもかんでもRX100M6で済まそうとしてしている最近の私がいるワケだ。RX100M6と防水系タフネスコンデジがあれば、ゆりかごから墓場まで何でも撮れちゃうんじゃないかなどという自堕落な発想は、先取りなのか破滅への第一歩なのか。

とりあえず私は、そんな自分がちょっと心配になっているので、我が写真人生に修正舵をあてるべく、リコー「GR III」を手にリハビリを始めているところだったりもする。GR IIIの変わらぬストイックさが、機能に溺れながら楽をしようとしているカラダにピリピリ沁みるんだよねぇ。そちらについての詳細は、また別の機会に。では、今日はこの辺で。

  • 小型軽量ながらズバズバ撮れるRX100M6に大満足の表情を見せる落合カメラマン。本体エッジ部分の塗装はげがハゲしく熱烈な愛用ぶりをうかがわせる

著者プロフィール
落合憲弘(おちあいのりひろ)

落合憲弘

「○○のテーマで原稿の依頼が来たんだよねぇ~」「今度○○社にインタビューにいくからさ……」「やっぱり自分で所有して使ってみないとダメっしょ!」などなどなど、新たなカメラやレンズを購入するための自分に対するイイワケを並べ続けて幾星霜。ふと、自分に騙されやすくなっている自分に気づくが、それも一興とばかりに今日も騙されたフリを続ける牡牛座のB型。2019年カメラグランプリ外部選考委員。