タクシー配車サービス「DiDi」が東京と京都でのサービス開始を発表した。日本法人はソフトバンクが50%を出資しており、ヤフーのアプリやPayPayとの連携など、グループの強みを活かした施策も打ち出してきた。

DiDiが東京や京都でサービス開始、PayPay連携も

スマホでタクシーを呼べる配車アプリが続々と登場し、盛り上がりを見せている。これから全国展開を目指すDiDiはどこに勝算を見出したのか。

大阪では実車率が上昇、若年層の開拓も

2018年9月に大阪でサービスを開始したDiDiは、東京と京都でのサービスを正式に開始した。日本法人のDiDiモビリティジャパンは、中国DiDi(滴滴出行)とソフトバンクが50%ずつ出資する合弁会社で、両社の強みを持ち寄る。

スマホでタクシーを呼ぶメリットは多い。急いでいるときでも確実につかまえることができ、土地勘のない場所でもアプリの地図で容易に指定できる。運賃はアプリ内でカード決済できるので支払い手段に悩むこともない。

また、すでに大阪では「Googleマップ」と連携したサービスを提供しており、ルート検索をするとDiDiの選択肢が現れるようになっている。筆者も大阪を訪れた際にこの方法でDiDiを使うことを思い立ち、実際に呼んでみた経験があるが、地図画面には呼んだタクシーが近づいてくる様子やナンバー、車種が表示されるなど、使い勝手も良好だった。

DiDiのアプリを利用してタクシーを呼んでみた様子

同社は、他のタクシー配車とは違う強みとして、「AIの活用」を挙げる。システムの裏側で人を介することなく、AIが自動的にマッチングするという仕組みだ。海外では需要と供給を示すヒートマップを提供しているが、国内にも導入していくという。

同サービスを使うことによるタクシー会社にとってのメリットは、客を乗せて走った走行距離をあらわす「実車率」の向上だ。実際、DiDiを入れることで大阪では実車率が5%、営業収入が10%増加する一方、走行距離に変化はなく、同じ距離で効率良く稼げるとのデータが得られたそう。そうした評判が広まり、大阪でDiDiと契約したタクシー会社は6カ月で42社に増加している。

走行距離は変わらないまま、実車率や営業収入が増加した

利用者の属性はというと、中国本土でDiDiを利用する中国人観光客の需要に応えているのはもちろん、20~30代の利用者が伸びたという。これまでのタクシー客は中高年が中心だったが、スマホアプリによって新たな層にリーチできたというわけだ。

スマホアプリで20~30代の顧客層を開拓

「事前確定運賃」の導入に注目

DiDiは今後の展開として、東京、京都に続き、2019年度内に北海道や兵庫県、福岡県など全国10都市に拡大することを発表した。「Yahoo!乗換案内」アプリとの連携や、利用に応じてポイント還元率が上がる会員プログラムも導入する。

東京・京都に続き、2019年度内に10都市に展開する

さらに、ドライバー向け機能も拡充する。たとえば、1日の営業を終えたタクシーが帰庫するルートを活用したり、乗客を降ろす時間を予測して次の配車を先回りで手配したりといった高度なマッチング機能を導入していく考えだ。

国土交通省による動きにも注目だ。海外のライドシェアでは行き先を指定した時点で料金が分かるサービスがある中で、DiDiは料金メーターを利用する。これに対して、タクシーに乗る前に料金が確定する「事前確定運賃」の導入に向けた検討が進んでおり、DiDiとしても対応していく構えだという。

DiDiの仕組みでは、ドライバーと乗客が同じ地図を共有しており、どういった道順で走行するかについての透明性は高い印象を持つ。だが、タクシーを呼んだ時点で運賃が確定していれば、遠回りや渋滞によって運賃が上がる心配もいらなくなる。

現時点では、迎車料金の扱いがタクシー会社によって異なるのが気になる点だ。東京では「迎車料金無料」のキャンペーンにより、当面は精算時に迎車料金が無償になる。これも乗客にとってみれば分かりにくい仕組みであり、事前確定運賃の導入による統一を期待したい。

東京では「迎車料金無料」のキャンペーンを実施する

PayPayとの連携で相乗効果なるか

DiDiとPayPayの連携にも注目だ。5月末よりDiDiの利用時にPayPayによる支払いが可能になる。しかもQRコード決済ではなく、導入が遅れていた「アプリ内決済」にいよいよ対応する。

DiDiとPayPayが連携し、アプリ内決済に対応する

PayPayの100億円還元は5月で終わる見込みだが、買い物時の最大3%還元や懸賞、業種を絞った20%還元といった次の施策も発表されている。こうした大盤振る舞いによりPayPayはキャッシュレスを盛り上げてきた実績があるだけに、タクシー配車でも起爆剤としての役割を期待したい。

(山口健太)