アメリカ・ラスベガスで世界最大のコンシューマーエレクトロニクスショー「CES 2019」が1月8日から11日まで開催されました。オーディオ・ビジュアルに関連する話題も8KやAI、新しい完全ワイヤレスイヤホンの発売など盛りだくさん。主なトピックを振り返りながら、2019年のオーディオ・ビジュアル家電のトレンドを予想してみたいと思います。
日本では既にシャープが8Kテレビを商品として発売していますが、CES 2019ではソニーとLGエレクトロニクス、サムスンが新たに8Kテレビを発表しました。ソニーのBRAVIA 8K液晶テレビ「Z9G」は98型と85型の2サイズ。LGは世界初の88型有機ELテレビのほか、液晶テレビにも8Kのラインナップを潤沢にそろえました。また、日本では発売されていませんが、サムスンも一気に5サイズの8Kテレビを発表しています。
オーディオ・ビジュアル機器の多くが搭載するHDMIインタフェース、HDMI規格のライセンスを行うHDMI Licensing Administrator, Inc.のCTOであるJeff Park氏は、現在北米では4K以上の解像度を持つテレビの販売構成比率が8割を超える勢いで伸びていると語っています。
4Kテレビが発売された当初は「4Kはコンテンツがないのでテレビも普及しないだろう」といわれていましたが、今回はソニーのほか3社ともに、8K未満の映像を高精細な8K画質にアップコンバート表示して楽しむための回路を搭載しています。これならば再び「8Kコンテンツの不在」を突かれる心配もなさそうです。
現在、一般のコンシューマー向けに8Kのネイティブコンテンツを供給できているのは、日本で2018年12月に始まったNHKの8K放送ぐらい。8Kテレビを購入しても、実際の家庭で主に楽しむのは毎日のテレビやBlu-ray、インターネット配信などのコンテンツが中心になるはずなので、現実的な楽しみ方が提案できるよい機能(アップコンバート)だと思います。
ソニーが発表したZ9Gを視聴してみても、やはりしっかりと作り込まれた8Kテレビの画質には圧倒的な迫力があります。映像への没入感がひときわ高く、まるで画面の向こう側に身を置いてしまったような感動が味わえます。紀行、スポーツ系の番組、映画もこれまで以上に楽しめるのではないでしょうか。
ただ、8Kの高解像度が生かせるのは、80インチ前後の画面サイズとされています。そうなると、多くの日本の家庭ではリビング導入がためらわれてしまいます。
ソニーの8Kテレビは発売地域や時期、価格などがまだ明らかにされていませんが、ソニーの高木一郎専務は記者からのインタビューに対して、「当初、ソニーの8Kテレビの主戦場はサイズの大きなテレビが好まれる北米・中国になるだろう」と見通しをコメントしています。BRAVIAのZ9Gも8K放送のない地域に向けて魅力を訴求できるように、アップコンバート機能を磨き上げてきたことがわかります。
8Kモニターの大画面に表示される圧倒的な情報量、その映像を生かせるプロフェッショナルの領域もあります。例えば医療の現場。8K内視鏡カメラとの連携で患部の映像を細部まで確認することで、手術の成功や医療技術の発展にも貢献できることでしょう。人の顔を鮮明にとらえられる8Kカメラとモニターは、セキュリティの分野にも歓迎されるはずです。
2015年以来、久しぶりにCES会場のメインホールに出展したシャープも、8Kモニターやカメラを展示して、BtoB領域に向けた“8Kエコシステム”の提案にも力を入れていました。今後、8Kは4Kよりも速いスピードで普及して“当たり前”のものになるかもしれません。その可能性は、コンシューマーの以外の分野で一足先に開花することも考えられます。