パナソニックといえば世界有数の大手家電メーカー。そんなパナソニックが、若者に人気の音楽ユニット「CHAI」と新楽曲『GREAT JOB』をコラボレーションしました。とはいえ、そこはパナソニック。なんと新しい楽曲は「家事がはかどる音楽」がコンセプト。一体、家事がはかどる音楽とはなんなの?

  • 「家事がはかどる音楽」をコンセプトにした楽曲、『GREAT JOB』を歌う人気ガールズバンド「CHAI」の4人

家電メーカーが音楽を作る理由

近年、パナソニックは「家事シェア」を提唱しています。家事シェアとは「家電と家事を分担」すること。面倒な家事を家電にまかせることで、時間にゆとりができて家族との時間が作りやすくなるというわけです。

とくに、最近は共働き世帯が増加して「女性だけが家事をする」という時代ではなくなってきました。このため、男性の家事疲れも増えています。パナソニックの調査によると、ほぼ7割の調査世帯が「家事が原因でケンカする」などのトラブルがあるそう。つまり家事の負担を減らすことは、仲良しの家庭を維持するためにも大きなポイントなのです。

  • 家事ストレスが家庭内の不仲に発展するかも? なんと約7割の家庭で「家事」が原因のトラブルがあるそう

  • パナソニックが家事シェアでおすすめしている家電は、洗剤や柔軟剤の投入まで自動で行う「ななめドラム洗濯乾燥機」や、汚れた食器を溜めても臭わない「食器洗い乾燥機」。そして、部屋の隅までキレイに掃除する「ロボット掃除機」の3製品

ところが、30代~40代の既婚男女を対象に調査したところ、「家事の悩み」第一位は「家事をやろうという気分になれない(気分がのらない)」こと……。たしかに、家事に手をつけるのが面倒で、なかなか腰があがらないという悩みはよく聞きます。反面、なんとか家事を始めたら、思ったより簡単に終わったという経験がある人も多いのではないでしょうか。

  • 家事の悩み第一位は「家事をやろうという気分になれない」こと。家事にとりかかるまでのヤル気が問題になっているようです

そこで、パナソニックは「家電」以外でも「家事に関する困りごと」をサポートすることに挑戦。聴くだけで家事活動をポジティブにする音楽を作ることにしたそうです。

注目の「CHAI」がパナソニックとコラボ

今回、パナソニックとコラボレーションしたのが、若者に人気のニュー・エキサイト・オンナバンド「CHAI」の4人です。CHAIが提唱するのは「ネガティブをポジティブにかえる」こと。とくに、女の子のコンプレックスを肯定し、ポジティブに歌い上げる歌詞に定評があります。そんなCHAIが「家事」という面倒で手間がかかるネガティブな仕事を、楽しい活動として歌い上げたのが、パナソニックと作り上げた『GREAT JOB』です。

発表会では、『GREAT JOB』のミュージックビデオも公開。気分を盛り上げてくれるリズミカルでポップな楽曲と、CHAIの魅力あふれるパフォーマンスに会場では拍手が湧き上がりました。また、パナソニックとのコラボということで、ミュージックビデオ内では昭和のレトロ家電から、最新の家電まで登場している点も見どころ所です。

【動画】今回発表されたミュージックビデオ、『GREAT JOB』-家事がはかどる音楽Panasonic ver.-
※音声が流れます。ご注意ください。

CHAIのベースコーラスを担当し、楽曲の歌詞ほとんどを手がけるユウキ氏によると、今回の楽曲タイトル『GREAT JOB』は、「家事は仕事の終わりとか仕事の後にするもの、でも家事自体もすごい仕事だから『すごいね』『偉いね』という気持ちを込めた」と語りました。

  • 新曲MVのお披露目で登場したCHAIの4人。今回のMVでは昭和世代の家電が数多く登場。平成生まれの4人は「昭和のレトロ家電は色とデザインがすごくかわいかった!」とコメント

「家事がはかどる」楽曲を科学的にアプローチ

ところで、『GREAT JOB』の作曲には、環境音楽家であり、作曲家、音育家、工学博士でもある小松正史氏のアドバイスがあったといいます。発表会に登壇した小松氏によると「最初は家電メーカーのパナソニックから音楽の依頼がきたことに驚いた」としつつ、心理的な部分から家事促進のアプローチするという点に共感し、依頼をうけたといいます。

  • 『GREAT JOB』の心理的効果について説明する小松氏

小松氏によると、『GREAT JOB』を聴いて「家事がはかどる」ポイントは具体的に4つあるといいます。1つは「頭に残るメロディ」。とくに、サビの歌詞やメロディが何度も繰り返されるため、誰もが口ずさみやすいこともポイントだそうです。

2つ目が「リズムのはやさ」。小松氏によると、身体が動きやすい140~160bpmのリズムは躍動感があり、このリズムの楽曲は脳の扁桃体に作用して快感や充足感を与えるそうです。『GREAT JOB』はまさにこの150bpm前後のリズム。さらに、バックで流れる低音のうねうねとした音が、身体が自然に動きたくなる衝動を与えるといいます。

3つ目が「イントロの耳ひき」。曲が始まるイントロ部分は、高い音で違和感を覚えさせて聴く人の注意をひき、さらにテンションをアゲる曲調に続きます。また、楽曲中に子どもの声や一瞬の笑い声を挿入することで、注目を集める効果があります。

最後が「エンディング」。ここでは「家事が終わった」というイメージを出すために、ドラの音が入ります。このドラム音は、授業の終わりにチャイムが鳴るように「終わり」を演出することで、承認欲求を満たす効果が期待できるそうです。

実際に音楽を使った実験結果は「効果アリ」

パナソニックは『GREAT JOB』を使い、実際に家事をするテストを行ったそうです。テスト場所はパナソニックの「プロダクト解析センター」。このあたりは、「作った家電を実際に使用・検証する」家電メーカーならではの取り組みだといえるでしょう。

実験方法は、「つまらない - 楽しい」といった“対”になる8種類の項目を7段階で評価した、SD法と呼ばれるものを採用。「食器洗い」「拭き掃除」という2つの家事をするとき、「音楽あり」「音楽なし」で実験したところ、いずれも音楽があったほうがポジティブな審理結果になったそうです。

  • パナソニックのプロダクト解析センターでの実験結果。食器洗いと拭き掃除、どちらも音楽をかけて行ったほうがポジティブな心理になっているのがわかります

小松氏によると「こういった実験でSD法を採用すると、『音楽あり』『音楽なし』の両方で結果が同じということが多い。実験結果できちんと『音楽ありのほうが家事がポジティブに行える』という結果がでたことは素晴らしい」と、今回の実験結果を高く評価しました。