ヴイエムウェア チーフストラテジスト(SDDC/Cloud)高橋洋介氏

米VMwareは今年8月、米国ラスベガスで年次テクニカルコンファレンス「VMworld 2018」を開催した。小誌でも、その基調講演の様子は既にお届けしている。

今回、ヴイエムウェアがVMworld 2018での発表に関する説明会を開催したので、その際の説明をもとに、同コンファレンスで行われた発表のポイントを紹介する。

クラウド分野については、チーフストラテジスト(SDDC/Cloud)の高橋洋介氏が説明を行った。同社はこれまで「Any Cloud, Any Application, Any Device」というビジョンの「Any Cloud」について、と「プライベートクラウド」と「パブリッククラウド」に分けて考えていたが、今年から「ハイブリッドクラウド」と「パブリッククラウド」に分けることに変わったという。

「ハイブリッドクラウド」はさらに「プライベートクラウド」「パブリッククラウド」「エッジ」に分類される。これには、データセンターからクラウド、クラウドからエッジに対し、一貫性のあるインフラと運用を提供するという同社の戦略が込められている。

  • 上がこれまでのVMwareのビジョン、下が今年「Any Cloud」に変更が加えられたビジョン

「プライベートクラウド」については、セキュリティソリューション「AppDefense」が統合されたサーバ仮想化ソフト「VMware vSphere」のパッケージ「VMware vSphere Platinum」が発表された。同パッケージでは、vSphereのカーネルにセキュリティ機能が組み込まれ、アプリケーションの正常な状態を把握したうえで監視を行い、正常な状態を逸脱した時に対策を自動で行う。

また、メンテナンスリリースになるvSphereおよびストレージ仮想化ソフト「VMware vSAN」 6.7 Updateでは、HTML5クライアントにおいてすべての機能がサポートされるようになったほか、NVDIA vGPUを搭載するマシンに対するvMotionのサポートが追加された。

「パブリッククラウド」については、既報の通り、「VMware Cloud on AWS」(以下、VMC on AWS)に関するアップデートが発表された。同サービスは、vSphereをはじめとする同社製品をAmazon Web Services(AWS)のクラウド上で利用できるサービスだ。

2016年に発表された同サービスは四半期ごとにアップデートが行われており、今回で5回目のアップデートになる。高橋氏は、今回のアップデート「VMware Cloud on AWS M5」のハイライトとして、「利用可能なリージョンの拡大」「コストを最適化するオプション提供」「移行機能の強化」「セキュアなネットワークへの対応」を挙げた。

リージョンについては、2019年末までにすべてのAWSリージョンでの提供が発表された。東京は次のアップデートが行われる2018年第4四半期での提供、大阪は2019年第2四半期での提供が予定されている。

  • VMware Cloud on AWSの提供スケジュール

ライセンスを最適化する機能としては、「カスタムCPUコアアカウント」と「仮想マシン アフィニティルール」が利用可能になった。前者は物理CPUコア数を制御することで、後者は仮想マシンを特定のホストグループに固定することで、CPUコア数で課金されるアプリケーションのライセンスコストを抑えることを可能にするものだ。

これらの機能は、CPUコアでライセンスが決まる、データベースのコストの最適化に有効であり、高橋氏は「これでVMware Cloud on AWSでデータベースが使いやすくなった」と語っていた。加えて、これまで本番環境の最小構成は4ホストとしていたが、今回、プレビュー版とはなるが3ホストに変更された。

移行機能については、vSphere Replicationを活用したCloud Motionで1000台規模の仮想マシンの移行をオンラインで実行可能な「VMware Cloud Motion by VMware Hybrid Cloud Extension」が発表された。これもプレビュー版だ。データセンターの統廃合や拡張といった大規模環境での移行をサポートする。

セキュアなネットワークへの対応としては、すべての通信に専用線接続サービス「AWS Direct Connect」が利用可能になった(プレビュー版)。これにより、ネットワーク仮想化製品「VMware NSX」とAWS Direct Connectによるハイブリッドなネットワークの構築が可能になる。これまでは、管理ネットワークのみAWS Direct Connectが利用できたが、今回、ユーザーネットワークでも同サービスが利用できるようになった。

また、NSXのセキュリティ機能をVMC on AWSにビルトインできるようになった(プレビュー版)。これにより、仮想マシン単位の分散型のファイアウォールが提供され、VMC on AWS内のEast-Westトラフィックを制御可能になる。

そのほか、AWSに関する大きな発表としては、新サービス「Amazon RDS on VMware」もある。これは、AWSの分散リレーショナルデータベースサービスである「Amazon RDS」を、VMware vSphere上で提供するものだ。同サービスを利用すると、オンプレミスと同一の操作でAmazon RDSを管理することが可能になる。