Appleの現在の売り上げは、6割が米国外での業績となっており、EU、中国が最も大きな市場である。2018年第3四半期決算では、米国の20%成長に続き、低迷が続いてきた中国市場で19%増、EUでも14%増と、主要市場が好調だった。
その中で注目されているのが、インドだ。インドは中国に次いで人口の多い市場で、しかも急成長中である。
シリコンバレーではMicrosoft、Google(Alphabet傘下)、Adobeなどの主要企業のトップをインド人が務めている。彼らには、経営における優秀なエンジニアリング能力を重視する傾向、謙虚で冷静、穏やかな人柄などが共通項としてある。シリコンバレーのスタートアップの15%は、インド系の人々によって起業されていて、2位英国、3位中国、4位台湾、5位日本のグループを束ねても、1位のインド系の数には及ばない。
インド市場に対して、Appleは2016年にA9プロセッサを搭載したiPhone SEを戦略モデルとして投入した。しかし、この戦略は失敗だったと結論づけられた。
インドは現在最も急成長しているスマートフォン市場だ。しかしそのインドでiPhoneの影は薄く、2018年第2四半期のシェアはわずか1%だ。
また、2017年まで300万台を上回る販売台数を確保してきたが、2018年は上半期に100万台に満たないセールスしか獲得できておらず、通年でも200万台を下回るとの予測すら出されている。ちなみにトップメーカーとなったXiaomiは、半年で1,900万台を販売した。
iPhone不振の最大の原因は、販売価格の高さだ。一般的に、インドのスマートフォン市場における一般的な価格は150ドルくらいと言われている。これは、iPhone SEの半分以下の金額だ。
この価格帯に照準を合わせているのはSamsungのミドルレンジモデルに加え、Xiaomi、HuaweiやOPPOなどの、より大きな画面と大容量バッテリーを備えたモデルを取り揃える中国メーカーだ。対するiPhone SEは高価なだけでなく、画面サイズは4インチのままで、モバイル決済などへの対応も弱い。
iPhone Xは999ドルで5.8インチの大画面と有機ELディスプレイ、そして顔認証を実現するTrueDepthカメラを備え、AppleのiPhoneの成長に貢献してきた。しかしこの価格では、インドで戦えない。Appleがこれまで追求してきた性能と価格のバランスでは、全くシェアがとれない市場、それがインドだった、というわけだ。