2014年にiPhone 6では、中国市場の開拓に成功した。フラッグシップモデルを中心に投入する戦略によって、米国や日本と同じ製品を中国市場で販売し、プレミアムブランドとしての地位を確立できた。

といった流れを汲んで、インド市場においても世界同一の製品が着実に売れていく環境を作り上げていくことをゴールに据えていた。しかし、インドで999ドルのスマートフォンがトップセールスとなるには、その条件が揃っておらず、時期尚早といわざるを得ない。

その状況がいつ訪れるか分からない上、高価格のスマートフォンが一番という価値観がインドにもたらされるかどうかも不明瞭だ。となれば、Appleは、インド市場攻略のための新たな戦略を立てる必要に迫られる。

これまでAppleはインドに対しては、アプリ開発サポート拠点の設立や、首相とのトップ会談を通じて、インドへの投資をアピールし、プレゼンスを高めようと努めてきた。しかし、肝心の製品価格の高さに加えて、iOSの機能でも地図アプリのナビゲーションや音声アシスタントSiriなど、インド市場で提供できないサービスがいくつもあるという展開になっている。

インドでの販売台数を獲得してプレゼンスを高めたければ、Appleがすべきことは明白だ。インド市場向けのiPhoneを開発することに尽きる。そうしなければ、普及期のスマートフォン市場を取りこぼすだけでなく、iPhone以外の別の価値観でもって、新しいスマートフォン市場が構築され、Appleが入る間がなくなってしまう。