WWDC18でお披露目となったApple Watchの新しいOS「watchOS 5」。この2年くらいはApple Watchが「パーソナルなデバイス」であることをアピールすべく、watchOSの進化もそのコンセプトに沿ったものになっていたが、今回のアップデートでは、それとは違ったカラーを打ち出すことになったようだ。果たして、新OSに込められた想いとはどんなものなのか、早速、チェックしていこう。

  • watchOS 5のアップデートの柱は二本

watchOS 5の強化ポイントは「アクティビティ」と「コミュニケーション」

今回のアップデートの柱は二本。一つ目は「アクティビティ」関連の強化だ。

これまでの「アクティビティ」アプリでも、共有機能が搭載されていた。この機能では、家族や友人とアクティビティの進行状況を確認しあえた。健康に不安のある家族の「見守り」機能としても使える面があったが、それがこの秋、共有している相手と7日間の競争を挑めるようになる。

  • アクティビティを共有している友人と一対一の競争を挑める

この「競争」では、完成させたアクティビティのリングの割合をもとにポイントが加算されるという仕組みになっており、アクティビティを続けて1週間やり遂げるため、相手に勝利するためのコーチング通知を受け取れるといった機能も追加される。勝負は一対一となるが、ダイエットに励んでいる者同士で戦ってみると大いに盛り上がれるのではないだろうか。

  • 「ワークアウト」アプリに自動検出機能が登場

「アクティビティ」のリングを完成させるのに「ワークアウト」アプリの利用は欠かせない。その「ワークアウト」アプリにはワークアウトの自動検出機能が搭載される。例えば、走り始めると、Apple Watchが、あ、走り始めた、ということは「ランニング」をスタートさせたのだなと判断し、ワークアウトの開始を示すアラートを発したのち、開始時点に遡って成果を算出してくれる。筆者もたまーに、あああああああ! 20分も走ったのに、「ワークアウト」アプリ起動するの忘れたああああ!! となって、いつもより長くエクササイズを続けてしまったりするが、秋からそういうことがなくなるはずだ。

  • 屋外ランニング用のペースアラーム

  • 直近のラップタイムが確認できる「Rolling last mile」

「ランニング」の話をもう少し続けよう。普段のエクササイズがランニング中心という人には嬉しい機能がいくつも加わる。まずは、指定した目標ペースに対して、現在の走る速度が遅くなってる、あるいは速くなってるのを教えてくれる「ペースアラーム」だ。これにプラスして、直近のラップタイムが確認できるようになる(この機能、現時点では「Rolling last mile:直前のマイルのスプリットタイム」という名称となっているが、日本向けに単位が「メートル」あるいは「キロメートル」に変更されるかもしれない)。さらに1分あたりの歩数を計測する「ケイデンス」機能も採用された。これらの機能は、一定のペースを守って走るのをサポートしてくれ、運動効率を向上させる。また、そのサポートが、ランニング中の怪我を減少させるのに一役買ってくれる。走っている人なら経験あると思うが、急にピッチを上げたりすると転倒しやすくなる。そういったことがないようにApple Watchのほうが注意喚起するというわけだ。

  • ワークアウトに、新規で「ヨガ」と「ハイキング」が追加

「ワークアウト」アプリでは、これまでの12種類のワークアウトに、新規で「ヨガ」と「ハイキング」が追加される。「ヨガ」では、ホットヨガであろうと、瞑想的なものであろうと消費カロリーなどを正確に測定できるという。「ハイキング」は、Apple Watch Series 3に搭載された高度計により、リアルタイムで標高を記録可能なほか、勾配をトラッキングしながら消費カロリーを計算、表示するといったこともしてくれる。

二つ目の柱は「コミュニケーション」に関連した機能の強化だ。

  • 音声による新しいコミュニケーションのスタイルを提案する「トランシーバー」

Apple Watch Series 1以降に対応する(初代Apple Watchは非対応)「トランシーバー」機能では、音声による新しいコミュニケーションのスタイルを提案する。一覧表示される家族や友人の中から「トランシーバー」で会話したい人を選ぶと、相手を招待できる。その後、「TALK」ボタンを押せば、話ができて、指を離すと相手の話が聞ける。これはセルラー機能を持っていないApple Watchでも、Wi-Fi環境があれば利用可能だ。急いでいるのに待ち合わせの場所が分からないという場合などで重宝しそう。「メッセージ」アプリでチマチマとテキスト打つより、こっちのほうがサッと連絡とれるに決まってる。

  • 「通知」は纏まった形(スタック)で表示される

  • 「通知」上でウェブサイトのコンテンツを表示する機能も追加

その「メッセージ」アプリでも利用される「通知」の機能も変わる。今までは「通知」が届くと、メッセージの内容が画面に流れ続けるようになっていたのだが、同じアプリからものはひとまとまりになって表示されるようになる。デジタルクラウンを延々と回し続けなくても済むようになり、円滑なコミュニケーションが図れるようになるはずだ。「通知」ではほかに、ウェブサイトのコンテンツを表示する機能や、届いた通知から、そのアプリを開かずとも利用できる「インタラクティブ通知」が追加される。「インタラクティブ通知」では、例えば、「Yelp」の予約通知が届いたとして、そこから直接、予約の時刻や人数を変更するといったことが行えるようになる。

  • 「Siri文字盤」の機能も大幅に強化

コミュニケーションを円滑に、ということで言うと、「Siri」のアップデートも見逃せない。機械学習を利用した「Siri文字盤」はユーザーの習慣から、一日の行動の中で、適切な提案をしてくれる。試してみないとなんともところがあるにせよ、例えば、勤務時間が終わると必ず家族に帰宅時間を伝える、という行動が習慣化していれば、然るべきショートカットが起動するという風になると思われる。連絡するの忘れた、といった失敗で友人との関係性を悪くすることが多い筆者は、「Siri文字盤」に助けられることが多くなりそうだ。ショートカット表示は、日課、位置情報、ワークアウト後の心拍数、マップに基づく通勤時間、お気に入りのスポーツチームの試合結果などをベースに構築されるとのことだ。また、「Hey Siri」と言わなくても、手首を上げるだけで音声アシスタントしての「Siri」が利用できるようになる。

特筆すべきこととして、もう一つ。 Podcastの対応を挙げておこう。

  • 標準アプリとして「Podcast」が加わる

標準アプリとして「Podcast」が仲間入りする。音楽を中心としたストリーミングサービス「Apple Music」と同様に、外出先でApple Watchを使ってPodcastを聴けるのだ。セルラーモデルのApple Watch Series 3なら、ストリーミング再生もOK。Podcastの各エピソードは自動的にApple Watchに同期されるのだが、それらを別のデバイスで聴き終えていた場合には、アプリ側で自動的に最新のエピソードにリフレッシュする。これは、地味に便利と感じた。いちいちエピソード探してって作業から解放される。