Appleの直営店は、米国で最も急速に成長し、また成功している小売店だ。床面積あたりの売上高は高級ブランドを凌ぎ、Amazonなどによる小売業破壊の影響を受けないモデルとして確立したビジネスモデルとなった。

最近米国の専業小売業から聞かれるのは、むしろ脅威はAmazonよりも、製品を作るブランドがオンラインや小売店で直接顧客とつながることだという。AppleはBestBuyなどの電器店の、NikeはFoot-lockerなどの靴やスポーツ用品店の、取引先であり脅威なのだ。

シカゴの中心部、川の畔のスペースに2017年10月にオープンしたApple Michigan Avenueを訪れると、なぜAppleが脅威だと思われているかが分かる。

  • Apple Michigan Avenue

Appleはシカゴの中心的な通りであるMichigan Avenueとシカゴ川の交差する橋のたもとの土地を買い上げ、河岸に階段を整備し、その階段を建物の中に延長させる形で3階構造の店舗を建設した。ストリートレベルに入口があり、店舗の両端には、1階部分となる河岸まで降りられる階段が続いている。

  • 建物の階段と外の階段が続いているような構造

2階部分には、巨大なスクリーンを備えるスペース「フォーラム」を見下ろせる階段状の客席があり、電源プラグやUSBポートが備わっている。購入したての製品をセットアップする際にも利用可能だそうだ。巨大スクリーンの背後には、船のタクシーが行き交うシカゴ川が広がる。

建物の外の階段スペースはWi-Fiが利用できるオープンスペースの「プラザ」。建物内から屋外スペースまで、床には川の水を利用する温水式の暖房が備わっており、降雪や凍結時でも滑らないよう工夫されている。雨が降っていなかったイベント前日に訪れて座ってみると、じんわり暖かく、寒空の下、実に居心地が良かった。