今回同社が行った設備投資は、生産効率の向上を図るものであるのと同時に、「製品の質」をさらに向上させるためのものでもある。特に今回の投資で力を入れているのは、基板のアスペクト比を高くするための装置の導入だという。

具体的には、基板に各層をつなぐためのビア(孔)を開けることを目的としたカメラ付きNC(数値制御)穴あけ加工機、開いた穴を清掃するためのクリーニング装置、クリーニングを終えた穴にめっきをつける装置などを新たに導入する。

上越工場は大雑把に言うと2つの区画に分けることができる。1つ目はプリント基板を積層し、パターンを形成していく工程を担当する区画。もう1つは基板の各層をつなぐためのビア(孔)を開ける工程の区画だ。

ビア形成工程は当初、積層・パターン形成などの工程と同じ区画であったが、それらの工程が2階で行われていたこともあり、床の強度の問題から現在では別区画で行われるようになった。取材をした2018年1月の時点ではまだ導入が済んでいない装置もあるとのことであったが、実際に中を見学させてもらうと、複数の装置が同時に動き、基板にドリルで穴を開けている様子を見ることガできた。

  • OKIプリンテッドサーキット
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  • 穴あけ加工は、装置に数値を設定することで、装置が自動で処理することで行われる。しかし、少量多品種生産であるため、1つのロットが終わると別ロットの設定に変換する必要があり、そのような作業は人の手で行っている

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    穴あけに使用されるドリル。先端がどこかわからないほどに細い。髪の毛ど同程度の細さのドリルも使用されるという

なお2018年現在でOPCは、板厚2.4mmの基板に0.1mmのビアをあける技術を有しており、その板厚をより厚くしていくための研究も進められているという。そのほか、ピッチ(ビア同士の間隔)をより狭くするための技術開発も同時に進行中だ。

穴あけ技術の高度化に伴い、同時に技術の高度化が求められるものがある。その穴を通電させるための「めっき」だ。OPCは今回、そのめっき工程、さらにはその前段の工程として、プラズマエッチングによって穴に存在する不純物を取り除くための装置も導入する予定だという。

このように、現時点でもすでに高付加価値製品を生み出している同社が、より高度な技術を研究・開発し、さらに生産できるようにしようと取り組む姿勢を見せる背景には、半導体技術の進化がある。プリント基板上に搭載されるさまざまな機器の性能に合わせて、プリント基板もそのパフォーマンスを最大に発揮させることが求められるためだ。

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    完成した基板の通電性をチェックする装置。こちらも今回新たに導入された装置だという

しかし、それは単純に「高性能のものが作れれば良い」という訳ではなく、それが「安全に使用できること」も同時に求められる。OPCの顧客が同社にプリント基板を注文するのは、その高い技術と同時に「高い信頼」を寄せているからだろう。

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  • 機械でのチェックを終えた後には、人の目で最終確認がなされる

例えば、iPhoneが使い始めて数年で壊れたとき、どう思うだろうか。多くの人は、「壊れてしまったから、新しいものを買おう」と思うかもしれない。しかし、故障が許されない機器においては、そういうわけにもいかない。医療分野や航空業界に提供したプリント基板が不具合を起こせば場合によっては人命に関わる事故を起こしかねない。またあまり人命とは関係のない通信分野であっても、20年のうちに3秒でも不具合がでれば、何万人もの人に迷惑をかけてしまうこととなる。特に現代の金融の世界で時間のずれは、多少であっても即座に大きな損害を生み出す可能性がある。

同社の現在の立ち位置は、そのような環境の中で、品質向上のための微調整を重ね続けることで確立されてきたものだ。こうして得た高いシェア率は、長年にわたるそうした真摯な姿勢が培った「信頼の証」ともいえるだろう。新たな投資により、今後は今まで以上の生産能力の効率化・商品の高性能化が実現される。それに加え、現状に甘んじず、技術力の向上に注力をし続けるOPCの快進撃は、今後も続いていくことだろう。

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  • 工場内の様子。工場にはほとんどの工程に作業員がおり、次の工程への移動やプログラムの変更、細かな力加減が必要な作業などの「機械には代替できない」工程を担っている。そこには、同社が培ってきた長年のノウハウが活きている様子を見てとることができた