ARの活用でスマホにホームステージングされた部屋を再現

ARについては、2017年11月、ARを用いて、仲介物件やリノベーション済み物件の空室に家具や小物でインテリアコーディネートを行い、モデルルームのようにより良い印象を与える「ホームステージング」を行う「ARホームステージングサービス」の提供を開始した。

同サービスでは、GoogleのAR技術「Tango」に対応したレノボ製スマートフォン「Phab 2 Pro」の画面を通して、何もない実際の室内で家具や小物でコーディネートした状態を好きな場所・角度から見ることができる。

  • 「Phab 2 Pro」の画面イメージ

  • 「ARホームステージングサービス」の実施例。左から、実際の室内(リビングダイニング)、「Phab 2 Pro」の画面で見た室内

同サービスでは、リビングスタイルのホームステージング用スマホアプリ「RoomCo ARホームステージング」を利用する。同アプリは、スマートフォンのカメラを使い、画面に映し出された現実の空間に、21社30万点以上の家具の3Dデータを自由に配置して試すことができるもの。同アプリを使えば、部屋の採寸を行わなくても、家具の"試し置き"が行える。

室内に家具を実際に配置するとなると、その搬入やセッティングに時間がとられるうえ、1戸当たり20万円から40万円のコストが発生する。そのため、ホームステージングが行える物件には限りがある。

しかし、「ARホームステージングサービス」を利用すれば、これまでよりも多くの物件にホームステージングを行うことが可能になる。VRを用いたサービスと同様、同サービスにより、買う側も購入後の生活をイメージしやすくなるため、売る側と買う側の双方がメリットを享受できる。

VRだけでは片手落ち、ARとの併用でビジネスに変革を

大京グループはグループ全体のIT利用を統括する部門を擁しており、大京穴吹不動産のARやVRの導入に関しては、菅原氏が属している事業統括部が統括している。ARやVRの開発やサービスを手掛けるベンダーと協力して、サービスを開発している。

サービスの開発にあたっては、既存のサービスだけでなく、同社が提供可能なサービスまで視野に入れて、検討を行っているそうだ。「ARやVRに関わるベンダーの中には、個人利用を対象に完成したサービスとして提供しているところも多いです。企業側としては、そうしたサービスの中から必要な技術を活用して新たなソリューションをつくることで、ビジネスを変えていくことが可能であるかを十分に検討する必要があるでしょう」と、菅原氏は語る。

また、ARやVRを利用する上での課題について、菅原氏は「もっと普及させたいと考えていますが、例えば、『バーチャルリフォームルーム』では事前の採寸が必要など、手間がかかるのも事実です」と指摘する。加えて、技術の進歩が速いことを挙げる。「導入を検討してから数カ月後に導入すると、既に技術が進化していることがあります。常に最新の情報を求めるアンテナを張り巡らせていないと、サービスが陳腐化するおそれがあるのです」

そして、現場のスタッフや顧客にARやVRを利用してもらうための課題も感じているという。同社のAR/VRサービスではスマートフォンを利用するが、当然ながら、人によってリテラシーが異なる。そこで同社は、現場や顧客に負担をかけることなく、サービスを利用してもらうかということにも重きを置いている。

さらに、業務への導入効果を測定するため、スモールスタートで始めている場合も多いという。その対象店舗は、比較的ITリテラシーが高いスタッフがいるそうだ。

菅原氏に、ARとVRの使い分けについて聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

「ARは拡張現実であり、実際の部屋にイメージを被せることができます。VRは仮想現実であり、どこでも新たな空間を作り出します。例えば、リフォーム後のイメージをVRで確認したあと、ベッドなどの家具がその部屋のサイズに合うかどうかは、ARによって確認することができます」

VRとARの長所をうまく生かす形で業務に活用している大京穴吹不動産。同社のサービスは、住居を探す人々に対しても、これまでとは違う「住まい探し」を提供していると言えよう。