住居を借りたり、買ったりする際、事前にリフォームや自分好みのインテリアに仕立てたイメージを見ることができたらいいのに……と思ったことはないだろうか。

大京穴吹不動産は、ARやVRを活用して、これまでとは異なる形態で中古物件の販売を開始した。ARやVRを用いることで、今までは見ることができなかったリフォーム後の中古物件を顧客に見せることを可能にしたのだ。

そこで、大京穴吹不動産 事業統括部 担当部長 兼 営業推進課長 菅原仁氏に、同社におけるAR/VR活用の取り組みについて聞いた。

  • 大京穴吹不動産 事業統括部 担当部長 兼 営業推進課長 菅原仁氏

VRで現地に行かなくても部屋見学が可能に

同社は2016年5月に、スマートフォンサイトでの売買・賃貸物件紹介において、360度パノラマ画像を閲覧できるサービス「ぐるっとネットDeオープンルーム」を開始した。同サービスを開始した背景について、菅原氏は次のように語る。

「住居の売買や賃貸を扱うWebサイトでは、お客さまの判断材料となる視覚的情報を増やして満足度を上げるため、写真の枚数が20枚、30枚とどんどん増えていく傾向がありました。そこで、より多くの情報を伝える手段として、情報量が多い動画やVRの利用が始まりました。われわれは、シータカメラで撮影した360度パノラマ画像を閲覧できるサービスを提供することにしました」

そして同年9月には、VRを用いて部屋の見学を疑似体験できるサービス「ぐるっとネットDeオープンルームVR」の提供を開始。同サービスは、スマートフォンサイトで売買・賃貸物件を閲覧する際、VRゴーグルにスマートフォンをセットして上下左右に動かすことで、左右を向けば左右の方向、上を向けば天井や室内全体を見ることができるというもの。

利用者は部屋の中で見学しているような臨場感の下、自分の見たい場所を自由に見ることができる。

同社はVRゴーグルを営業拠点74店舗に導入したほか、顧客への郵送も行っている。というのも、VRゴーグルは、購入を検討している人が利用する場合に加えて、両親に資金の融資を受ける場合、海外の顧客が投資目的で購入を検討する場合にも有効だという。

「ぐるっとネットDeオープンルームVRでは、駅から現地までの導線を確認する機能も検討しています。現地に足を運ばなくても、駅前にどんな施設があるか、物件の近くに何があるのかなどを把握することが可能になります。VRゴーグルを使えば、情報提供者が見せたい情報だけではなく、お客さまが見たい情報を見ることができるのです」(菅原氏)

VRで売主が住んでいる住宅のリフォームイメージも確認可能に

続いて2017年2月には、VRゴーグルを用いて、中古住宅をリフォームした後の室内の様子を再現したCG画像で確認できるサービス「バーチャルリフォームルーム」の提供が開始された。

同サービスでは、実際の室内写真と比較して、CG画像による3種類のリフォームイメージを確認できる。リフォームイメージは360度全方向自由に閲覧できる。

中古住宅の売買は、売主が居住している状況で行われることもある。その場合、物件を隅から隅まで見せるということは難しい。また、建築してから年月が経っている場合、当然のことながら、壁などが汚れていたりして、口頭での情報伝達のみでは、購入後の生活を想像しづらい。

こうした課題は、売る側、買う側の双方にとってデメリットを生むと言える。そこで、「バーチャルリフォームルーム」で、リフォーム後のイメージを確認してもらうことで、中古住宅の売買における課題を解決することが可能になるというわけだ。

  • 「バーチャルリフォームルーム」に映し出される画像。左から、リフォーム前の写真、リフォーム後のイメージ画像例