MVNOの伸び悩みがメリットとは限らないNTTドコモ

一方NTTドコモにとって、MVNOの契約数の伸び悩みは痛しかゆしな部分がある。その理由は先にも触れた通り、9割以上のMVNOがNTTドコモから、接続料を支払ってネットワークを借り、サービスを提供しているからだ。MVNOの利用者が増えればNTTドコモにも収入が入ってくるので、契約数が伸び悩めば接続料収入の伸びも期待できなくなってしまうのである。

NTTドコモはMVNOの契約数拡大が純増数の伸び、ひいては接続料収入の伸びにもつながってくるため、MVNOに対しては難しい立場にあるといえる

もちろん、NTTドコモからMVNOにユーザーが流出してしまえば、1人当たりの売り上げ自体は落ちてしまう。そこで同社は、特定の端末を購入する代わりに通信料を毎月1500円値引く「docomo with」や、「dポイントクラブ」のリニューアルによる長期契約者優遇措置など、顧客のつなぎ止めに向けた施策を増やしてはいる。

しかしながら他の2社と比べるとサブブランドや傘下のMVNOを持たないなど、顧客でもあるMVNOへの配慮もあってか顧客流出防止に消極的な部分もいくつか見られ、同社が置かれている立場の難しさを物語っている。

そしてもう1つ、現状を最も快く思っていないのは総務省であろう。総務省は3キャリアによる携帯電話市場の寡占による料金競争の停滞を懸念しており、これまでにも3キャリアに対して、商習慣の大幅な変更を迫るなど厳しい対応をとる一方、MVNOを支援し市場競争を拡大する方針をとってきた。それだけに、キャリア側が守りを徹底的に固め、MVNOが停滞しつつある現状は、総務省にとって決して面白いものではなく、今後新たな施策検討を進める可能性が考えられる。

MVNOへの流出阻止を徹底したいKDDIとソフトバンク、消極的ながらもMVNOの広がりを期待するNTTドコモ、そしてMVNOを積極支援して強化したい総務省。MVNOの市場を巡る動向は、これら4者の思惑が大きく影響する形で、再び変化を遂げることになりそうだ。