格安通信サービスを提供するMVNOに異変が起きている。成長の鈍化が指摘され始めているのだ。MM総研が15日に発表した「2017年度上期国内携帯電話端末出荷概況」も同様の傾向を示した。

2017年上期に起きた異変

MM総研の調査結果によると、2017年上期におけるSIMフリースマートフォンの出荷台数は前年同期比20.4%増の144.6万台だった。数値上は好調に見えるが、上期実績は想定していた成長率を下回る結果になり、SIMフリー市場の成長ペースの鈍化をMM総研は指摘している。

そのことが指摘されたのは今回が初めてではない。今夏に公表されたIDC Japanの調査結果も同様の傾向を示しているのだ。一年ほど前まで、契約者急増でイケイケの状態だったMVNO。しかし一年後の今、成長は鈍化が指摘されている。一体何が起きているのか。

MVNO成長鈍化の理由

MM総研によると、大手通信キャリア、傘下のサブブランド(ワイモバイル、UQ mobile)が打ち出した施策の影響が大きいという。

大手通信キャリアのうち、ドコモは今夏から対象端末の購入を前提に永年月額1500円を割り引く「docomo with」を開始。KDDIも新料金プランを公表し、各種割引サービスとの組み合わでMVNO並みの料金を実現できるとアピールした。端末も48カ月分割払いにより、機種代金をお得にできるプログラムをKDDIとソフトバンクが発表している。

docomo withは70万契約を突破。好調のプランのようだ

ソフトバンクは最新iPhoneがより手軽に利用できるプログラムを発表。48カ月分割払いが前提だ

サブブランドの動向についても見てみよう。ワイモバイル、UQモバイルはMVNOに比べ資金が潤沢。多数のCMを放映できるほか、そのCMの好感度調査でも上位を占めており、影響は多大だ。大手通信キャリアよりも「安さ」を感じられ、大手傘下で「安心」も得られる。これら2つの材料を武器に、多くの契約者を獲得しているのだ。大手キャリアとサブブランドの一連の施策が功を奏した結果、MVNOの成長は想定よりも鈍化しているのだ。

KDDI田中社長の所感

こうしたトレンドは数値上のことばかりではない。先月末のNTTドコモの決算においても、MVNOの増加が想定を下回ったと指摘され、今月初頭の決算説明会においてもKDDIの田中孝司社長が所感を語っている。田中社長は「MVNOへの流出数は緩やかになり、以前ほど減らなくなった」「MNPによる流出もグループ全体で止まった」などと語っており、一連の施策の効果について深く言及したほどだ。

では、この先はどうだろう。MM総研では出荷台数は伸びるものの、2017年度の予測値を下方修正している。大手通信キャリアの囲い込み、サブブランドの影響は続き、2017年度は20万台、2018年度から2020年度は50~70万台の下方修正するとコメントしている。大手通信キャリアが今後どのような施策を打ち出すかに注目しながら、MVNO市場の成長についてみていくべきだろう。