みずほ銀行は、ビザ・ワールドワイド・ジャパンと連携し、中小企業や個人事業主を対象としたビジネスデビットカード「みずほビジネスデビット」を、2018年初旬から提供開始すると発表した。

みずほビジネスデビットは、みずほ銀行に普通預金口座を有する法人、個人事業主、任意団体向けに提供されるデビットカードで、同行によれば「大手銀行として初の法人向けデビットカード」だという。国内外のVISA加盟店で利用でき、決済は紐付けられた預金口座からの即時決済となる。

また、カードにはNFCチップも内蔵し、VISA payWaveでの非接触決済にも対応している。年会費は無料で、カードの発行可能枚数は1法人あたり最大10枚。カード発行手数料は1,000円程度だが、期間限定で1枚目のカード発行手数料が無料となるキャンペーンも行う予定。従業員が20~30名ほどの中小企業や個人事業主をメインターゲットにしているという。

中小企業や個人事業主のキャッシュレス化促進に向けて協力する姿勢を示す、ビザ・ワールドワイド・ジャパンの安渕氏(左)、みずほ銀行の板橋氏(中)、VISAのSimon氏(右)

キャッシュレス決済増加の一助目指す

中小企業や個人事業主の決済では、現金取引や請求書払い、社員個人による経費の立て替えなどが多い。現金取引には盗難や紛失のリスクや、精算業務の煩雑さもあり、業務効率化を阻む頭の痛い存在といえよう。

ビザ・ワールドワイド・ジャパン 代表取締役社長の安渕 聖司氏によると、中小企業や個人事業主の支払いは、口座振替が金額ベースでおよそ半数を占めるものの、件数では現金決済が約1/3を占めトップになるという。日本の「現金主義文化」が根強く残る象徴的なデータだろう。

日本政府は6月に発表した「未来投資戦略」の中で、キャッシュレス決済の比率を今後10年で40%に高めるという戦略を発表している。目標を達成するためには、中小企業や個人事業主でのキャッシュレス化促進が不可欠であり、安渕氏は今回の新カードが「キャッシュレス化の流れをさらに加速していく、大きなマイルストーンになる」と胸を張る。

一方で「法人向けクレジットカードではダメなのか?」という疑問も湧く。日本の中小企業や個人事業主で法人向けクレジットカードを利用しているのは全体の1/4ほどに過ぎず、この数字は他の先進諸国に比べてもかなり低い。法人向けクレジットカードであっても、与信審査によって目的の決済枠が得られない場合があるため、中小企業や個人事業主にとって使いづらい場面があるからとみられる。

しかし、みずほビジネスデビットでは、法人が決済用に利用している銀行口座に結びつけることで、与信審査が不要となり、口座残高を上限とした電子決済が可能となる。高額の決済でも口座に必要な現金を入れておけば決済が可能になるため、現金を持ち歩く際のリスクが大幅に低減できる。

与信審査などの関係で法人向けクレジットカードの導入に踏み切れなかった中小企業や個人事業主でも、みずほビジネスデビットならば前向きに導入を検討できる存在になると考えられる。