端末価格の安さが通信料を下げ、MVNOへの流出阻止へ

シャープが低価格のラインアップに力を入れるようになったのは、キャリアの動向と無関係ではない。シャープのスマートフォン事業は、国内の大手キャリア向けに端末を提供することがビジネスの柱となっているため、他のメーカーと比べキャリアの動向に大きく影響されやすいのだ。

実際シャープがAQUOS EVERを提供した2015年といえば、MVNOを中心とした“格安”の通信サービスが急拡大したのに加え、総務省が「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」を実施し大手キャリアへ料金の見直しを迫るなど、携帯電話の料金に対する関心が非常に高まった時期でもある。そうした影響を受け、価格重視のユーザーに向けた低価格のラインアップが求められるようになったことが、AQUOS EVERの開発に至った大きな要因といえるだろう。

そしてAQUOS EVERの後も、シャープは大手キャリア向けに低価格モデルのラインアップ拡充を進めてきた。ソフトバンクのワイモバイルブランド向けに、グーグルの低価格スマートフォン向けプログラム「Android One」を採用した端末を、日本で最初に開発したのもシャープである。

ワイモバイルが日本で初めて投入した、グーグルの低価格モデル向けプログラム「Android One」を採用したスマートフォン「507SH」を開発したのもシャープだ

だが端末の価格を下げても、キャリアの通信料が安くならなければ、通信料が非常に安いことを売りにしているMVNOへの流出は止められない。一見すると安価な端末を増やすことが、通信料を下げることにはつながらないように見えるのだが、実は密接なつながりがあるのだ。

従来大手キャリアは、高額なスマートフォンを大幅に値引いて販売し、その値引きに費やしたコストを毎月の通信料に上乗せして回収するという手法を展開してきた。2016年4月に総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出したことで、「実質0円」など極度な値引き販売は事実上姿を消したものの、端末の値引き販売自体は現在も存続している。

しかしそもそも、最初から安いスマートフォンを販売すれば、値引きの必要がないので毎月の通信料に値引き分のコストを上乗せする必要もなくなり、通信料を安くできる余地が生まれてくる。