こうしたファナックの考えを反映したシステムが、10月2日より運用が始まった製造業向けIoTオープンプラットフォーム「FIELD system」だ。工場内にメインのシステムを配置し、工作機械やロボットなどをネットワークでつなげることで、各種データの収集と解析、制御が行なえる。

オープンプラットフォームでメーカーなどの垣根を越えて使用できるFIELD system

ネットワークスイッチを使い各工場やインターネットと連携するFIELD systemの構築例

接続可能な工作機械やロボットは最新モデルである必要がないのも「FIELD system」の特徴だ。「イーサポートがあればカンタンだが、20~30年前のRS-232CやI/Oポートしかない機械でも接続可能。FIELD systemを使えば、スペック的限界はあるものの、最新機械と同じようなコントロールも可能になる」(稲葉氏)。

システムはインターネットにも繋がっており、各種クラウドと連携できるほか、工場外からの遠隔操作にも対応する。稲葉氏は「工作機械やロボットがつながることの最大のメリットは『見える化』である」とし、「現地に行かなくても情報が取れ、見えたものを考えて分析し、よりよい機能を開発していくことができる」とアピールした。

FIELD systemで接続した機械やロボットをコントロール

ポートの種類などメーカーの壁を越えてまとめて接続可能

また、収集したデータをAIで解析すれば、さまざまな工作機械やロボットがいつ、どのように壊れるかということまで判断できるようになるという。これによって突発的な修理が発生せず、保守点検のタイミングで対応できるため、ファナックのスローガンにある「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」を実践できるようになる。

稲葉氏は、FIELD systemが「メーカーのえり好みをせず、世代とメーカーの壁を越えてつながる」(稲葉氏)オープンプラットフォームであることも大きなポイントであると強調する。ファナック以外の工作機械やロボットに対応する上、デバイスパートナーやサードパーティー、アプリ開発などもフィールドシステムパートナーズとして広く募集する。

アプリをインストールするだけで、既存の工作機械やロボットが最新モデルのように使える

深層学習自体の実証実験はすでにスタートしている

生産性の向上は日本の産業界でもっとも問題視されている分野であり、少子化による生産年齢人口の減少といった問題も、日本の主要産業である製造業の担い手を助けるこのシステムが大きく寄与できるはずだ。未来予想図だけでなく、どこまで現場の奥底までサポートできるのか、ファナックの新たな挑戦に注目だろう。