世界30カ国で蓄積したノウハウで商品開発

家庭向けの本格的な栄養補助食品を発売するのは今回が初めてというネスレ日本。だが実は、グローバル規模で見ると、栄養補助食品に関する技術やノウハウは、「メディカルニュートリション」という医薬品などを取り扱う事業において長年蓄積してきている。日本でも2008年に事業を開始し、医療機関、介護施設を中心とした約1万の顧客向けに、流動食や栄養補助食品を提供してきた。そのノウハウを使って一般向けに展開するブランドが「ブースト」である。生涯アクティブに過ごせるよう、ミドルエイジ(50~60代)からの栄養をサポートするための商品だ。

医療機関や介護施設向けのメディカルニュートリション事業で培ったノウハウを一般向け商品「ブースト」で活用する

ネスレ ヘルスサイエンスでアジア、オセアニア、アフリカを統括するポール・ブルーン氏によれば、「ブーストは北米では20年以上の歴史を持つブランドで、一般消費者だけでなく医療・介護事業者からの信頼も高い。カナダやメキシコ、中国、韓国、フィリピンなどで展開しており、ブランド名は違うが同様の商品も含めると世界30カ国で取り扱っている」という。

加齢に対する意識の変化に対応

日本の高齢化率や高齢化のスピードは世界でもトップクラス。社会保障費の増大や介護施設不足は数十年前から社会問題となっている。しかし、「健康寿命を延ばすことの重要性」や予防医療の考え方が、最近になってようやく一般に知られるようになってきた。

その理由の1つには、年齢に対する考え方の変化も挙げられる。「アンチエイジング」という言葉に象徴されるように、外見や体力の衰えを「年だから当たり前」と受け入れたくない人が増えたということだ。

ネスレ日本の中島氏

ネスレが50代以上を対象に行った調査では、「年齢でひとくくりにされるのを好まない」「年齢を理由に生活を変えたくない」「充実した人生を送りたい」というニーズが高いことが明らかになった。しかし、このような理想はあっても、実際にアクティブに過ごせている人は全体の3割という実態も浮かび上がってきた。

だからこそ、「ブースト」の日本市場上陸が今のタイミングになったということになる。「今は、日本の加齢に対する考え方が転換点にある大事な時期。一般消費者向け、ミドルエイジ以降の栄養補助商品を出すには一番いいタイミングだ」というのが、ネスレ日本 ネスレヘルスサイエンスカンパニーでカンパニープレジデントを務める中島昭広氏の考えだ。