富士通は7月27日、2017年度第1四半期(4~6月)の連結決算を発表した。四半期利益は21億円の黒字と、第1四半期では2014年以来の黒字を計上。しかし、ネットワークプロダクトの北米事業や今期好調だったユビキタスソリューションの先行きが不透明として、通期予想は据え置いた。

富士通 代表取締役副社長/CFO 塚野 英博氏

この日行われた決算説明会で富士通 代表取締役副社長/CFOの塚野 英博氏は、第1四半期の業績について「普通」と表現。デジタルサービスへの注力など、構造改革の進捗がほぼ計画通りに推移していることから「計画した通りの意味で"普通"だ」(塚野氏)とした。

セグメント別では、テクノロジーソリューションがニフティの切り離しや金融業界向けソリューションの減収などが一部響いたものの、その他業界向けソリューションや、ネットワークプロダクトの国内向け携帯電話基地局の需要が伸びたため、前年同期比で1億円減となる6726億円となった。なお、特殊事項である海外の法的紛争案件の損失により、営業利益は前年同期比18億減の52億円となっている。

一方で好調だったのがPCや携帯電話のユビキタスソリューション。デスクトップ/ノートPCがともに特徴ある製品戦略で市場に受け入れられ、個人向け、法人向けの双方で売上が伸びた。また、携帯電話ではドコモ向け「arrows Be F-05J」と、同「らくらくスマートフォン4 F-04J」が好調で、前年同期比215億円増の1540億円となった(営業利益は同34億円増の55億円)。

また、残るデバイスソリューションでも前年同期比で53億円増となる1353億円の売上を計上(営業利益は同46億円増の34億円)。スマートフォン向けLSIが好調で、部材価格も上昇傾向にあり、「各社の投資動向なども見る限り、少なくとも今年いっぱい、私見も交えて言えば来年の上期までは部材のショートが続くのでは」(塚野氏)とした。

なお、連結対象外となったニフティのコンシューマー事業の影響を除けば、全セグメントで増収となった。

海外事業は構造改革の途上、下半期に改善見込む

全体的に好調だった連結業績だが、質疑応答ではテクノロジーソリューションの売上収益が7四半期連続でマイナスとなった点について質問が及んだ。これに対して塚野氏は「今は仕掛けを作っている段階で、花が開くまで時間は必要。ファンダメンタルで言えば国内市場は2022、23年までは右肩上がり、天変地異さえなければ伸びていくと考えている」と回答した。

22、23年までの収益拡大については、2020年のオリンピックに向けたICTインフラへの投資が堅調なことや、同社がキーテクノロジーと定める、クラウド・IoT・AI・セキュリティの各種テクノロジーへの関心が大きく寄せられているといい、「オリンピック後も大阪万博の誘致やIR法などの話もある。それらを根拠とした拡大予想だ」(塚野氏)とした。

同事業は通期予想でも2016年度の3兆1266億円から3兆700億円とマイナス成長で、現在は構造改革の途上。塚野氏が「懸案は海外事業」と語るように、これまでマネージドインフラサービス(MIS)に頼っていた海外事業は利益率が低く「MISの分野はレッドオーシャン」(塚野氏)。海外売上比率がおよそ3割を占めており、この改善なくして連結業績が改善しないという認識だ。

テクノロジーソリューションは通期でもマイナス予想。海外事業は黒字予想だが、塚野氏は「懸案」と表現する

方策としては、国内と同様にSI・ソリューションなどのビジネスアプリケーションシステム(BAS)を主軸とすることで、利益率の改善を見込む。

「MISからBASへと言っても、デリバリーリソースがないからまだ途上にある。もちろん、セールス部門についても揃えている最中。改組は規模が相当あるので時間がかかっているものの、下半期には効果が見えてくるはず。BASはアプリケーションの積み上げなどコスト構造を改善できる領域であり、デジタルサービスへの注力によって、表に出てクライアントと一緒にプレーする方向へと変えていきたい」(塚野氏)