First Flightには、wena wristのほかに、電子ペーパーを時計化した「FES Watch U」やスマートロック「Qrio Smart Lock」など、一部で話題となった製品がすでに販売されている。ただ、いずれも自由闊達なアイデアにせよ、すぐに「100億円規模の事業」にスケールするとは言いがたい。

また、そもそも日本企業における課題でもあるが、對馬氏の話す「大企業におけるスペシャリスト」は、米シリコンバレーであればシリアルアントレプレナーとなって自身で新たな企業を立ち上げ、次々と新しい価値を提供しようと模索している。より有機的に企業が絡み合い、「シリコンバレー株式会社」のような形で世界を席巻している現実もある。

もちろん、米シリコンバレーのやり方がすべてではなく、1980年代に「日本株式会社」が世界をリードしたように、企業内でこうしたマイクロ事業を生み出す土壌があるのであれば、近年盛り上がりを見せつつあるオープン・イノベーションの流れも合わせて結果に結びつく可能性はある。

皆が求める「ソニー像」にたどり着けるかは未知数だが、少なくともwena wristがその第一歩と言える製品であることは確かだ。