北海道の夕張市が財政破綻してから10年。国への借金返済のためにと、高い市民税や、ままならない公共サービスなどが住民の生活に影響を与えている。止まらぬ人口流出。危機感は“ゆうばりの再生”の象徴である映画祭にも。次世代にどう繋いでいくか。夕張市と映画祭の挑戦を追った。

監督としての初長編作品を上映した俳優の斎藤工©ゆうばり国際ファンタスティック映画祭実行委員会

世界で一番、楽しい映画祭

2017年3月2日から6日まで、北海道・夕張市で行われたゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017。

人気俳優、斎藤工の監督作品『blank13』や國村隼主演の韓国映画『哭声/コクソン』(ナ・ホンジン監督)といった招待作品の上映。自主制作映画の中からグランプリを決定し、次回作支援をするオフシアター・コンペティションなどが行われた。授賞式終了時に発表された今年の観客動員数は、1万1718人となった。(最終動員数1万2516人)

2016年からメイン会場は「合宿の宿ひまわり」の体育館に

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の魅力は映画上映だけにはとどまらない。黄色いハンカチを持った地元市民がゲストをお出迎えする歓迎セレモニーに始まり、いくら飲み食いしてもお代は“気持ち”でOKなストーブパーティ、監督や俳優、観客が一緒に卓を囲む屋台村での映画談義———そこで生まれた関係性が、新作制作へとつながるのも本映画祭でよく見る光景だ。ゲストと市民の距離が近く、気軽に交流できるアットホームな雰囲気が多くのリピーターたちを生んでいる。

様々な交流が生まれるストーブパーティ

同映画祭のコンセプトは、「世界で一番、楽しい映画祭」。だがそこに至るまでには道のりがあった。